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18話 治癒魔法

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今日は騎士団の訓練に参加させてもらっている。
治癒魔法の特訓のためだ。

誰が怪我をしたのか見極め、瞬時に治していく訓練を行いたいため、騎士団長のルーカスさんに話をしたところ、快く承諾してくれた。

「みんな聞いてくれ。今日はフランツが治癒魔法の訓練のため、俺たちの訓練に参加することになった。皆はいつも通り訓練してくれ。たまに治癒魔法が飛んでくるくらいに思っていてくれればいい。じゃ開始してくれ。」

騎士団の方々は2人1組になって本物の剣でやり合っている。
それが何十組も。これは、誰が怪我したのかを把握するだけでも難しいかも。
でも実践ではこれ以上なんだよな。よし。集中しよう。

あっあそこ!剣が頬をかすめた。治れ!よし。次!

僕はひたすら怪我している人を見つけては治すを繰り返す。

「そこまで!」
ルーカスさんが一度訓練を止める。
やっと止まった。これは思ったより大変だ。

「現状、怪我している者は挙手!」
遠くの方にいる人が数人手を挙げている。

見落としていたか……いや、あの人が怪我しているのは把握していた。
魔法が届いていなかったのか。

「結果はどうだ?」
ルーカスさんからの問いかけに対して、僕は挙手している人に治癒魔法をかけてみる。

「やっぱりあそこまで距離が遠いと治癒魔法が届かないです。」
「そっか。じゃ自分の射程範囲がわかってよかったな。」
「はい。ありがとうございます。」

その後、騎士団の訓練は続き、僕も一緒に治癒魔法をかけまくる。
でも徐々に追いつかなくなってきた。僕の集中力もそろそろ限界なのかもしれない。

やっと騎士団の訓練が終わった。
僕はその場に座り込む。戦っていたわけでもないのに、ふらふらだ。

「お疲れ。」
「今日はありがとうございました。」

「いや、こちらとしては怪我が治って万々歳だ。いつだって参加して良いぞ。」
ルーカスさんも僕の隣に座る。

「ありがとうございます。」
「大丈夫か?」
「え?あ、少し疲れました。でも大丈夫です。」

僕は目を閉じ、深呼吸をする。風が気持ちいい。
「あんまり頑張りすぎるなよ。」

「えっ?」
「いや、まだ若いんだからちゃんと遊んでるか?」

「週末は家に帰って弟と遊んでますよ。」
「そっか。なら良い。たまには俺とも遊んでくれな。」

「えっ?ルーカスさんとですか?」
「だめか?」

「いやっそういうわけではなくて、どうやって遊ぶのかなって思っただけです。」
「なんだって良いぞ。フランツは弟君と、どんな遊びしてるんだ?」

「うーん。じゃれ合ったり、近所を探検したりですかね?」

「じゃそうしよう!」
そう言うとルーカスさんは僕を抱きかかえくるくる回転する。
「うわっ!」

「こんな感じか?」
「ちょっと激しいです……。」
「あっ悪い悪い。大丈夫か?」
ルーカスさんはそのまま僕を手前に引き寄せ抱っこし、背中をさすっている。

「いつもは僕がやる側だったので、久しぶりで……。」
「まぁそうか。お父さんとはやらないのか?」

「僕ももう12なので。」
「まだ12じゃないか。12は子供だぞ。もっと子供っぽく振る舞ってみ?」
「子供っぽくですか?」

「そう!じゃ今からな!はい。開始!」

え……。これは、恥ずかしいけどやった方がいいのか?
なっ何をやれば良いんだ?ジュリアンの真似をすれば良いかな?

「ルーカスさん。あっち行きたい。」
僕は適当な方向を指さす。

「おっいいぞ!あっちには何があるかな?」
いや、ルーカスさんノリノリだな。

「みてー。お花だー。」
だ、だめだ。恥ずかしくて棒読みになってしまう。
「本当だ。きれいだね。フランツはお花好きなの?」

「うん。きれいだから好き。ふわぁー僕眠くなってきちゃった。」
「寝て良いよ。」

最初は寝るつもりはなかったけど、目を閉じてゆらゆらしていると、本当に眠くなってくる。
ルーカスさんの体温を感じながら……。
このまま寝落ちしてしまいたい……。


あれ?僕のベット?朝?
え……。
昨日あのままルーカスさんの腕の中で寝ちゃったのか?

「お父さんおはよう。」
「おはよう。フランツ。」

「お父さん昨日、僕って……。」
「あぁルーカスの腕の中で気持ちよさそうに寝てたね。」

「やっぱり?うわぁどうしよう。ルーカスさんに謝りに行かなきゃ!ルーカスさん何か言ってた?」
「うーん。今日の訓練で疲れたみたいで寝ちゃったとしか。昨日大変だった?」

「うん。やっぱり瞬時に判断して、魔法をかけるのは難しかった。」
「そっか。良い経験が出来てよかったね。」

その後、僕は日課のランニングの際にルーカスさんがいないか、騎士団の訓練所をのぞく。
見つけた!

「ルーカスさん!」
「おぉ!フランツおはよう!昨日はよく眠れたか?」
「はい。よく眠れました。昨日はすみませんでした。」
「え?なんで謝るんだ?」
「いやっだって、その……。」

「俺、子供欲しくなっちゃった。」
「はい?」

「いや、子供がいたらあんな感じなのかなって。昨日は俺が癒やされた。ありがとうな。」
「いえ、それならよかったです。」

「またやろうな!」
「か、考えておきます。」
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