上 下
17 / 48

17話 検証

しおりを挟む
今僕は、お父さん、シリルさんと一緒に王宮の地下にあるただただ広い訓練場にいる。

僕がバグ認定される基準を見極めるためだ。

この世界にない魔法を使った場合、
 ・使用しただけでバグ認定されるのか
 ・使用した規模によって異なるのか
 ・魔物が襲ってくる範囲
などを調査することになった。

魔物はシリルさんが用意してくれた。
特に害のないスライムだ。スライムなら例え攻撃されても大したことはない。

確認する手順は以下の通り。

1、スライムを比較的近くに置き、小さい花火を上げる。
ここでスライムが襲ってくれば魔法の規模は関係なく魔法を使ったことでバグ認定されたことになる。

2、スライムを離れたところに置き、小さい花火を上げる。
僕を起点にスライムまでの距離を動かすことで襲ってくる範囲を探る。

ざっとこんな感じ。

僕は所定の位置に立ち、合図を待つまでの間、スライムをツンツンして遊んでいる。
スライムはぶるんぶるんと動き、思ったより癖になる。ずっと触っていられそうだ。
いや、このまま触っていたら愛着がわいてしまう。

「じゃ始めようか。」

お父さんからの合図だ。僕は宿でやった小さい花火を上げる。
すると、さっきまですんっとしていたスライムがこちらの方に向かってきて、僕の足にまとわりつくように密着してくる。

これは襲われてるっていう判定でいいんだよね?
スライムは徐々に上の方に登ってきている。僕を窒息させようとしているのかな?

「倒していいよ。」
お父さんも事象を確認し、メモをとっている。

倒す方法は、水色のスライムの真ん中にある紺色の核を何らかの方法で壊せばいい。
僕は風魔法でスライムを身体から離し、そのまま核に圧力をかけ壊した。
するとスライムは水のようにピシャッとなった。

「じゃ次いこうか。」

今度は僕から遠いところにシリルさんがスライムを置きにいく。
距離としてはざっと30mくらいはありそうだ。

シリルさんが手をあげてこちらに合図を送っている。
お父さんの方をみると、うなずいたので僕はまた花火を上げる。

僕が魔法を使ったことを確認すると、お父さんは手をあげシリルさんに合図を送る。
スライムがどうなっているのかはよくわからない。

「変化ありません!」

シリルさんが頭の上で腕をクロスさせバツマークをつくり、スライムの様子を答える。シリルさんが大きな声出してるの初めて聞いたかも。

すると、シリルさんはスライムを僕の方に近づけ、また手をあげ合図する。

僕はまた魔法で花火を上げる。
これを繰り返し、スライムが襲ってくる距離を計る。

結論としては僕を起点に半径15mくらいで襲ってくることがわかった。

そして僕を襲おうとしているスライムから、15m以上の距離を取っても襲う姿勢は変わらなかった。
つまり、襲おうとしている魔物を倒すか、僕が倒れるかまで戦いは終わらないということだ。

また、魔法の規模で距離が変化するか調べる為に、スライムを16mほど離した状態で少し大きめの花火を打ち上げたが変化はなかったので、魔法の規模で距離が変わることもなさそうという結論に至った。

「なんとなく解ってきたね。」
「そうですね。強いて言えば、後は魔物によって変化する可能性をみておいた方がいいということくらいでしょうか。」
確かにシリルさんの言う通りで、今はスライムだけど他の魔物になると、襲ってくる距離が変わるってことも考えられる。

「そうだね。せっかくだし確かめておいた方がいいね。すぐ使えそうな魔物はいるかな?」
「少し探してきます。」
そう言うとシリルさんは部屋から出ていった。


「お父さん。スライム触っててもいい?」
「うん。良いよ。」

僕は検証で使わなかったスライムの方に駆け寄りツンツンしたり、抱きしめてみたりと、スライムと戯れる。
それにしても、枕にして寝たいくらい気持ちいいな。
はぁー癒やされる……。


「――お父さん。ありがとね。」
僕はスライムを実際に枕にして、仰向けに寝転んだ状態でお父さんに話しかける。

地下という日の光も音も入ってこないしんっとした空間がそうさせているのか、なぜか今言っておいた方がいい気がした。

「ん?急にどうした?」
「いや、何て言うか僕はさ、お父さんの息子だけど、お父さんの息子じゃない記憶もある訳で、その僕とは他人なのに、何一つ変えず接してくれて……すごく嬉しかった。あと、今まで記憶のこと黙っててごめんなさい。」

お父さんは少し不意打ちを受けた顔をしてすぐに微笑むと、僕の横に座り頭を撫でる。

「フランツはフランツだよ。お父さんが知らない人の記憶があろうが無かろうが、全部ひっくるめて今のフランツがいるんだよ。」
「お父さん……。」

「フランツも辛かったよな。自分だけ秘密を抱えて。ずいぶん葛藤したんじゃないか?」

「そんなっ。……うん。僕本当のことを話すとき、不安だったんだ。本当のこと話したら家族じゃいられなくなるんじゃないかって。今の幸せな関係が壊れてしまうんじゃないかって。でも、お父さんがお父さんで本当によかった。」

「お父さんもフランツがフランツで良かったよ。お父さんのもとに産まれてきてくれてありがとう。」

その後しばらくして、シリルさんがシルバーウルフを連れてきた。
シルバーウルフでもスライムと同じように検証をした結果、魔物によって差がないことが解った。

よって検証結果としては、この世界にない魔法を使うとバグ認定され、バグ認定された場合、術者を起点に半径15m以内にいる魔物が襲ってくる。
またバグ認定され、襲われている最中に魔物から15m以上離れても継続して襲ってくるということが判明した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

フェンリルに育てられた転生幼女は『創作魔法』で異世界を満喫したい!

荒井竜馬
ファンタジー
旧題:フェンリルに育てられた転生幼女。その幼女はフェンリル譲りの魔力と力を片手に、『創作魔法』で料理をして異世界を満喫する。  赤ちゃんの頃にフェンリルに拾われたアン。ある日、彼女は冒険者のエルドと出会って自分が人間であることを知る。  アンは自分のことを本気でフェンリルだと思い込んでいたらしく、自分がフェンリルではなかったことに強い衝撃を受けて前世の記憶を思い出した。そして、自分が異世界からの転生者であることに気づく。  その記憶を思い出したと同時に、昔はなかったはずの転生特典のようなスキルを手に入れたアンは人間として生きていくために、エルドと共に人里に降りることを決める。  そして、そこには育ての父であるフェンリルのシキも同伴することになり、アンは育ての父であるフェンリルのシキと従魔契約をすることになる。  街に下りたアンは、そこで異世界の食事がシンプル過ぎることに着眼して、『創作魔法』を使って故郷の調味料を使った料理を作ることに。  しかし、その調味料は魔法を使って作ったこともあり、アンの作った調味料を使った料理は特別な効果をもたらす料理になってしまう。  魔法の調味料を使った料理で一儲け、温かい特別な料理で人助け。  フェンリルに育てられた転生幼女が、気ままに異世界を満喫するそんなお話。  ※ツギクルなどにも掲載しております。

悪女と言われ婚約破棄されたので、自由な生活を満喫します

水空 葵
ファンタジー
 貧乏な伯爵家に生まれたレイラ・アルタイスは貴族の中でも珍しく、全部の魔法属性に適性があった。  けれども、嫉妬から悪女という噂を流され、婚約者からは「利用する価値が無くなった」と婚約破棄を告げられた。  おまけに、冤罪を着せられて王都からも追放されてしまう。  婚約者をモノとしか見ていない婚約者にも、自分の利益のためだけで動く令嬢達も関わりたくないわ。  そう決めたレイラは、公爵令息と形だけの結婚を結んで、全ての魔法属性を使えないと作ることが出来ない魔道具を作りながら気ままに過ごす。  けれども、どうやら魔道具は世界を恐怖に陥れる魔物の対策にもなるらしい。  その事を知ったレイラはみんなの助けにしようと魔道具を広めていって、領民達から聖女として崇められるように!?  魔法を神聖視する貴族のことなんて知りません! 私はたくさんの人を幸せにしたいのです! ☆8/27 ファンタジーの24hランキングで2位になりました。  読者の皆様、本当にありがとうございます! ☆10/31 第16回ファンタジー小説大賞で奨励賞を頂きました。  投票や応援、ありがとうございました!

勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~ 「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」  国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。  ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。  その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。  だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。  城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。  この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。

悪役令嬢ですが最強ですよ??

鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。 で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。 だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw 主人公最強系の話です。 苦手な方はバックで!

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

処理中です...