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5話 職場

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今日はお父さんの職場と王都を案内してもらえる日。
まずは職場見学をして、その後王都を案内してもらう流れになった。
職場見学している間はお母さんは別行動。たまには1人でゆっくり買い物とかしたいだろうし。

「フランツ。着いたよ。ここがお父さんが働いている場所だ。」
「え、お父さんって王宮で働いてたの?」

宿から歩きながら、向かう方向的に薄々分かっていたけど、まさか王宮で働いているとは思わなかった。

昨日は遠くから見ただけだったけど、こうして近くで見るとより迫力があるな。

「あれ?言ってなかったか?」
「うん。王都で働いているとしか。」

なんか今更だけど、なんで王都から遠いところに住んでいるんだろう。
王宮で働いてたら王都でも暮らしていけそうな気がするのに。
いや、王宮って言ってもあまり重要じゃない仕事とかで、給料が安いとか?

「フランツー?ぽかーんとして。びっくりしたか?」
「あっ、うん。びっくりした。」
「じゃぁ行こうか。」

「あっ勝手に入って大丈夫なの?」
「えっ。あぁ心配しなくて大丈夫だよ。みんな顔見知りだから。」

確かに門にいる守衛さんも、にっこりしてこちらに会釈してくれている。

「フレデリックさん。今日はお休みでは?」
守衛さんがお父さんに話しかける。

「あぁ。息子が王都に来ていて、職場見学したいって言うから案内しようと思ってね。」
「そうだったんですか。息子さん連れてくるの初めてじゃないですか?こんにちは。」
「こんにちは。急に来てしまってすみません。」
「いやー立派ですね。全然大丈夫。ゆっくり見ていってね。」
「ありがとうございます。」

守衛さんとの会話も終わり、とうとう王宮の中に入る。

まさか王宮の中に入れるなんて。
うわぁぁぁ。
細部まで手入れされている庭に、立派な噴水まである!

すごい!テンションが上がる!
王都でもテンション上がったけど、それ以上だ。

やっと王宮の玄関までたどり着いた。
大きな木の扉。これ、いちいち開けるの大変じゃないのだろうか。重そうだし。と思っていたら扉のなかに普通サイズの扉があった。

「普段は正面からは入らないんだけど、フランツがいるから今日は特別だ。」

中に入ると、これぞ王宮といった内装で、床は大理石、高い天井にはシャンデリア、左右には湾曲した階段があり、真ん中には高価そうな絵画が飾ってある。
こんなの前の世界でも見たことがない。すごすぎる。

「これは、別の世界みたいだね。」
「あぁ。お父さんも初めて来たときは驚いたな。」

しばらく立ち止まった後、お父さんは僕に行くよと一言声をかけ、すたすたと歩きだした。
おそらく職場がある方だろう。

廊下もひたすら続いている。部屋もたくさんあって、ここで迷子になったら大変だろうな。

感動しながら歩いていると、奥の方にある扉から勢いよく人が飛び出てきて、こちらの方向に走ってくる。

なんとなく王宮の雰囲気にはそぐわない騒々しさがある。何かあったのかな。
ふとお父さんの方を見ると普段僕には見せないような少し真剣な表情になっていた。
もしかしたらお父さんの仕事と関係あるのかも。

「あっ、フレデリックさん!?今日休みじゃ……。いや、助かった。すぐ来てもらえませんか?」

先ほど走っていた人がお父さんの顔を見るやいなや、急停止し話しかけてきた。
20歳くらいの好青年で剣士みたいに体格がいい人だ。

「何かあったのか?今息子を案内してるところで、出来ればこちらを優先したいと思っているんだけど。」
「はい。実は――今はシリルが――」

お父さんの耳元で話をしているので何を言っているかよく聞こえないけど、緊急事態でお父さんが必要みたいということは分かる。

「フランツ。ごめんな。お父さん少し仕事してきても良いかな?」
お父さんは僕と目線を合わせるように膝をつき、申し訳なさそうに聞いてきた。
やっぱり緊急みたい。でももしかしたら、お父さんが働いている所を間近で見られるいい機会かもしれない。

「うん。大丈夫だよ。僕もついて行って良い?」
「うーん。フランツは別のところで待っていてくれないか?このお兄ちゃんが案内するから。」
僕には見せられないくらい緊急ってことなのか。

「そっか。お父さんがお仕事しているところ見てみたいなって思ったけど、それは難しいってことだよね?」
あ、すごく申し訳なさそうな顔してる。

「ごめんな。今日は我慢してくれるか?今度埋め合わせするから。」
「わかった。」
「じゃぁ行ってくるな。」
「行ってらっしゃい。頑張ってね。」
お父さんは軽く僕のことを抱きしめた後、走ってきた彼が出てきた部屋の方に向かっていった。

行っちゃった……。まぁ仕方ないか。

「こんにちは。君、名前は?」
「フランツです。」
「フランツか。良い名前だな。俺はルーカス。騎士団に所属している。よろしくな。」
「よろしくお願いします。」

騎士団の人がお父さんを呼び止めたってことは、お父さんは騎士団に所属しているのかな?

「ごめんな。お父さんを奪うようなまねして。お父さんの仕事が終わるまで、俺が代わりに案内するから。」

お父さんのこと考えていてあまり見ていなかったけど、この騎士団の人の顔。なんか見たことある気がする。
ルーカスさんって言ってたよね。

もしかして……昨日思ってたゲームの攻略対象じゃないか?確かそんな名前の人がいた気がする。

「あの、ルーカスさんって騎士団長さんですか?」
「えっ?いや、俺はただの団員だよ。」

そうか。でも聖女もまだ出てきてないって事だし、まだ団長にはなってないってだけな気がする。
この整った顔に男らしさ。そして姉に何回も見せつけられた顔。
よく見ればゲームの彼に比べて、今の彼はまだあどけなさが残っている気がするし、間違いない。やっぱりここはあのゲームの世界なんだ。


「俺の顔に何か付いてるか?」
しまった。まじまじと見すぎてしまった。

「いやっ。ルーカスさんかっこいいから見とれちゃってました。」
「お世辞がうまいな。一体いくつなんだ?」
撫でる力強っ!頭とれるかと思った。

「き、昨日5歳になりました。ルーカスさんは今何歳なんですか?」
「そうだったのか!誕生日おめでとう。俺は21だ。」
「ありがとうございます。」

確か攻略対象の騎士団長は28くらいだった。
彼が21ってことは、今はゲームが始まる7年くらい前って事かな?

「ところで、王宮のどこを見に来たんだ?」
「お父さんがどんなところで働いているのか見てみたかったんです。」
「そうだったのか。それが見られないのはちょっと残念だったな。」
「はい。」
「まぁそんなに落ち込むな。俺がとっておきの場所に案内するから。」
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