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1.宙道(シノイ)(3)
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真正面に、きらきらとした正視に堪え難い真紅の瞳があった。宙道(シノイ)の暗がりの中で、吹き上がる風にばらばらと散るように乱れる淡い色の髪が、憎悪の炎に見える。
笑み綻んだギヌアの高笑いが宙道(シノイ)に響く。
「うぬっ!」
ぎりっとアシャの歯が鳴って激しい気合いが漏れ、男達がわらわらと駆け寄って剣を付き込もうとした寸前、溶けた壁が再び立ち上がり塞がる。
「はははははあっ!」
嘲るような笑い声が宙道(シノイ)にまたもや響き渡り、レスファートがびくりと体を竦めた。
「甘い、甘いぞ、アシャ。そうやっていつまで逃げ切れるものか!」
ギヌアの嘲笑は続いた。
「おまえがいくら第一正当後継者だからと言って、宙道(シノイ)で四人も抱えては身動き取れまい!」
「ちっ、言いたい放題言いやがって」
忌々しそうなイルファの舌打ちに、ユーノは唇を噛んだ。
(確かにそうだ)
そっとアシャを盗み見ると、相手の目は依然鋭さを失っていないものの、その奥に、それと思わねばわからぬほどの疲労の影がにじみ始めているのが見て取れた。
ユーノ達には考えもつかない精神の攻防戦が行われているのだろう。
ず、とまた目の前の壁が形を失って崩れ落ちる。
「きゃ!」
突き出された黒剣がレスファートの片足を掠めた。少年が悲鳴を上げて後じさりする。
「く!」「レス!」
アシャがとっさに剣で黒剣を払いながら、すぐに壁を修復する。ユーノが引き寄せたレスファートは唇を噛みながらも、全幅の信頼を置いた目で彼女を見上げた。
「痛い?」
ユーノは瞬間相手を抱き締めた後、すぐに服の裾を剣で裂き、レスファートの傷に巻きつけた。
「へっちゃらだよ、これぐらい!」
本当は痛くて泣き出しそうなのを必死に我慢した声で、レスファートが応じた。頬が上気している。プラチナブロンドが乱れるのをうるさそうに振り払って、少年は気丈にアシャを見た。
「アシャは?」
「大丈夫だ」
アシャがに、と笑って答える。だが、次第に厳しくなる目は紫水晶の深みのある色ではなく、手負いの獣のそれに似た冷酷非情なものに変わりつつあった。
(『氷のアシャ』)
ふいにユーノの頭にそのことばが浮かんできた。いつか小耳に挟んだことのある、アシャのもう一つの呼び名だ。あの時は、いくら女連中にそっけないと言っても言い過ぎだろうと思っていたが、その呼び名を抵抗なしに受け入れられるほど、今のアシャは殺気立っている。触れれば切れそうな気配だ。
「出て来い、アシャ! そろそろ限界だろう!」
「っ!」
ギヌアの声とともに、またずるりと壁の全面近くが溶け落ちた。待ちかねていたように男達が声もなく剣を構えてのしかかってくる。
「ふ!」「は!」「でええい!」
同時に三筋の光が宙道(シノイ)を切り裂いた。
一筋はユーノの細身の剣、二人の兵の急所を確実に切っている。次の金の一筋は言わずと知れたアシャの剣、突っ込んできた相手の眉間を一閃、絶叫して仰け反る兵の脾腹にとどめを刺す。残る二人は、イルファの重い、例の赤いリボンつきの両刃で胴をなぎ倒され、呻く間もなく絶命する。
「ちいっ!」
鋭いアシャの舌打ちが響く。今度は壁がなかなか戻せないのだ。
「かかれ! ここで四人を屠ってしまえ!」
邪悪な喜びに満ちた声で叫ぶギヌアに促され、次々と飛びかかって来る男達をユーノとイルファが必死に防ぐ。
「アシャ、まだか!」
宙道(シノイ)に剣戟の響きが谺する。レスファートは負傷した脚を蹴られ、呻いて座り込み丸くなっている。イルファの肩を擦った剣の持ち主は、次には胸板を狙ってきたが、イルファはとっさにそれを剣の柄近くで受け止めて、左手を相手の首に伸ばした。むんずと掴み上げ、力の限りにギヌアの方へ放り出す。だが、ギヌアはあっさりとそれを避け、邪魔だとばかりに切り捨て、三度嘲笑を響かせた。
「無駄だ! 諦めろ、アシャ!」
「そうはいかん!」
きっぱりとアシャが応じ、ユーノが一人の兵士を撃退した直後、壁が復元した。
さすがにはあはあと息を荒げてへたり込むアシャの姿には疲労が濃い。次に壁を破られれば、もたないかもしれない。
「はっはっはあ! 見事見事! だが、私の作戦がちだ、アシャぁ!」
ギヌアの挑発的なことばを聞くまでもなく、ユーノにもそれはわかっていた。このままでは、遅かれ早かれ四人とも倒れてしまう。
(四人、だから)
ぎゅっと唇を引き締めた。
そうだ、四人だからアシャの力に余裕がなくなるのだ。
「アシャ、宙道(シノイ)の出口って遠い?」
「いや」
アシャは荒い呼吸を何とか整えようとしながら首を振った。
「スォーガまでだから……もうそれほど……遠くはないはずだ……」
「この先にあるんだね?」
「そこは共通の出入り口だから…」
「入ったときの神殿のような?」
「……」
アシャは答えられない。必死に首を頷かせて肩を上下させている。
そのアシャを、ユーノは静かにじっと見つめた。
(アシャ)
禁を破って心の中で呼びかける。
(いろんなことが……あったよね)
セレドを出て、追いかけてきてくれて、魅かれて、けれど、レアナが好きだと知らされて。
幾度も無茶をしたのに、その度に怒りながらも助けてくれた。何度も命を救ってくれた。腕に抱かれたことも、口づけを受けたこともあった、けど……。
(いろんな……ことが)
ユーノは唇を一文字に結んだ。そうしないと、取り返しのつかない一言を口走ってしまいそうだった。
今からしようとすることが、今までしてきたどんな無茶より危ないことは十分にわかっている。
アシャがどんなに怒るか、レスファートがどんなに泣くか、イルファがどれほど呆れるかも、ユーノには想像がつく。
(それでも今は、こうしなくちゃ誰も生きられなくなってしまうから)
なおためらう自分の心を、ユーノは必死に叱りつけた。
(何をぐずぐずしてるんだ。アシャはあんなに苦しそうだ。それに、今生の別れというんじゃない、ラズーンへ着けば会えるんだ)
それは、どれほど儚い望みだっただろう。
(ヒストに食料も水も地図もある、やってできないことはない、もともと一人で行くはずだったじゃないか)
揺らめくように記憶が蘇る。深い夜に炎を囲んで笑った。レスファートの優しい温もりに慰められた。イルファの大胆さに励まされた。そして何より、背後を護ってくれるアシャにどれほど自分が甘えていたのか、今ユーノはしみじみと感じていた。
視野の端、壁がぼとぼとと崩れ始めている。もう、それほど時間がない。
(長い、夢だったんだ)
締めつけられる胸の痛みに繰り返す。
(幸せな、夢だったんだ)
一人で戦わなくていいという夢。仲間が居て、一人ではないという夢。
その夢が今引き千切られようとしている。
(だから、全ては夢だったと思えばいい。最初から一人だったと思えばいんだ)
そうすればきっと耐えられる。
「アシャ」
「うん?」
にっこり笑って、ユーノはいきなりアシャに両手を差し伸べた。
「ユー…?!」
うろたえて一瞬凍りつく相手の頬に軽く唇を擦らせ、すぐに離れながら笑った。
「しゃべり鳥(ライノ)のキスは返したからね!」
「ユーノ!」
アシャがはっと我に返ったときは既に遅かった。ヒストの上に吸い込まれるように乗ったユーノが、掛け声をかける間も惜しむように、崩れ始めた薄い壁を突き抜けて宙道(シノイ)の方へ走り出す。
「逃げたぞ! 追え!」
わあっと声が響き、ギヌアが叫んだ。
「ユーノ! 馬鹿な!」
なだれるように遠ざかる一群にアシャは叫んだ。壁を消すのももどかしく、もう一頭の馬を引く。
だが、ヒストのような気性の荒い馬でこそ駆け抜けられた宙道(シノイ)、並の馬の胆力では無理難題、頼りのレスファートは突然のユーノの疾走に唖然として声もない。
「くそっ、ユーノ! ユーノ! ユーノーッ!」
アシャは既に見えなくなってしまった少女、ただそのためだけに宙道(シノイ)行きに踏み切った少女の名を、空しく虚空に叫び続けていた。
笑み綻んだギヌアの高笑いが宙道(シノイ)に響く。
「うぬっ!」
ぎりっとアシャの歯が鳴って激しい気合いが漏れ、男達がわらわらと駆け寄って剣を付き込もうとした寸前、溶けた壁が再び立ち上がり塞がる。
「はははははあっ!」
嘲るような笑い声が宙道(シノイ)にまたもや響き渡り、レスファートがびくりと体を竦めた。
「甘い、甘いぞ、アシャ。そうやっていつまで逃げ切れるものか!」
ギヌアの嘲笑は続いた。
「おまえがいくら第一正当後継者だからと言って、宙道(シノイ)で四人も抱えては身動き取れまい!」
「ちっ、言いたい放題言いやがって」
忌々しそうなイルファの舌打ちに、ユーノは唇を噛んだ。
(確かにそうだ)
そっとアシャを盗み見ると、相手の目は依然鋭さを失っていないものの、その奥に、それと思わねばわからぬほどの疲労の影がにじみ始めているのが見て取れた。
ユーノ達には考えもつかない精神の攻防戦が行われているのだろう。
ず、とまた目の前の壁が形を失って崩れ落ちる。
「きゃ!」
突き出された黒剣がレスファートの片足を掠めた。少年が悲鳴を上げて後じさりする。
「く!」「レス!」
アシャがとっさに剣で黒剣を払いながら、すぐに壁を修復する。ユーノが引き寄せたレスファートは唇を噛みながらも、全幅の信頼を置いた目で彼女を見上げた。
「痛い?」
ユーノは瞬間相手を抱き締めた後、すぐに服の裾を剣で裂き、レスファートの傷に巻きつけた。
「へっちゃらだよ、これぐらい!」
本当は痛くて泣き出しそうなのを必死に我慢した声で、レスファートが応じた。頬が上気している。プラチナブロンドが乱れるのをうるさそうに振り払って、少年は気丈にアシャを見た。
「アシャは?」
「大丈夫だ」
アシャがに、と笑って答える。だが、次第に厳しくなる目は紫水晶の深みのある色ではなく、手負いの獣のそれに似た冷酷非情なものに変わりつつあった。
(『氷のアシャ』)
ふいにユーノの頭にそのことばが浮かんできた。いつか小耳に挟んだことのある、アシャのもう一つの呼び名だ。あの時は、いくら女連中にそっけないと言っても言い過ぎだろうと思っていたが、その呼び名を抵抗なしに受け入れられるほど、今のアシャは殺気立っている。触れれば切れそうな気配だ。
「出て来い、アシャ! そろそろ限界だろう!」
「っ!」
ギヌアの声とともに、またずるりと壁の全面近くが溶け落ちた。待ちかねていたように男達が声もなく剣を構えてのしかかってくる。
「ふ!」「は!」「でええい!」
同時に三筋の光が宙道(シノイ)を切り裂いた。
一筋はユーノの細身の剣、二人の兵の急所を確実に切っている。次の金の一筋は言わずと知れたアシャの剣、突っ込んできた相手の眉間を一閃、絶叫して仰け反る兵の脾腹にとどめを刺す。残る二人は、イルファの重い、例の赤いリボンつきの両刃で胴をなぎ倒され、呻く間もなく絶命する。
「ちいっ!」
鋭いアシャの舌打ちが響く。今度は壁がなかなか戻せないのだ。
「かかれ! ここで四人を屠ってしまえ!」
邪悪な喜びに満ちた声で叫ぶギヌアに促され、次々と飛びかかって来る男達をユーノとイルファが必死に防ぐ。
「アシャ、まだか!」
宙道(シノイ)に剣戟の響きが谺する。レスファートは負傷した脚を蹴られ、呻いて座り込み丸くなっている。イルファの肩を擦った剣の持ち主は、次には胸板を狙ってきたが、イルファはとっさにそれを剣の柄近くで受け止めて、左手を相手の首に伸ばした。むんずと掴み上げ、力の限りにギヌアの方へ放り出す。だが、ギヌアはあっさりとそれを避け、邪魔だとばかりに切り捨て、三度嘲笑を響かせた。
「無駄だ! 諦めろ、アシャ!」
「そうはいかん!」
きっぱりとアシャが応じ、ユーノが一人の兵士を撃退した直後、壁が復元した。
さすがにはあはあと息を荒げてへたり込むアシャの姿には疲労が濃い。次に壁を破られれば、もたないかもしれない。
「はっはっはあ! 見事見事! だが、私の作戦がちだ、アシャぁ!」
ギヌアの挑発的なことばを聞くまでもなく、ユーノにもそれはわかっていた。このままでは、遅かれ早かれ四人とも倒れてしまう。
(四人、だから)
ぎゅっと唇を引き締めた。
そうだ、四人だからアシャの力に余裕がなくなるのだ。
「アシャ、宙道(シノイ)の出口って遠い?」
「いや」
アシャは荒い呼吸を何とか整えようとしながら首を振った。
「スォーガまでだから……もうそれほど……遠くはないはずだ……」
「この先にあるんだね?」
「そこは共通の出入り口だから…」
「入ったときの神殿のような?」
「……」
アシャは答えられない。必死に首を頷かせて肩を上下させている。
そのアシャを、ユーノは静かにじっと見つめた。
(アシャ)
禁を破って心の中で呼びかける。
(いろんなことが……あったよね)
セレドを出て、追いかけてきてくれて、魅かれて、けれど、レアナが好きだと知らされて。
幾度も無茶をしたのに、その度に怒りながらも助けてくれた。何度も命を救ってくれた。腕に抱かれたことも、口づけを受けたこともあった、けど……。
(いろんな……ことが)
ユーノは唇を一文字に結んだ。そうしないと、取り返しのつかない一言を口走ってしまいそうだった。
今からしようとすることが、今までしてきたどんな無茶より危ないことは十分にわかっている。
アシャがどんなに怒るか、レスファートがどんなに泣くか、イルファがどれほど呆れるかも、ユーノには想像がつく。
(それでも今は、こうしなくちゃ誰も生きられなくなってしまうから)
なおためらう自分の心を、ユーノは必死に叱りつけた。
(何をぐずぐずしてるんだ。アシャはあんなに苦しそうだ。それに、今生の別れというんじゃない、ラズーンへ着けば会えるんだ)
それは、どれほど儚い望みだっただろう。
(ヒストに食料も水も地図もある、やってできないことはない、もともと一人で行くはずだったじゃないか)
揺らめくように記憶が蘇る。深い夜に炎を囲んで笑った。レスファートの優しい温もりに慰められた。イルファの大胆さに励まされた。そして何より、背後を護ってくれるアシャにどれほど自分が甘えていたのか、今ユーノはしみじみと感じていた。
視野の端、壁がぼとぼとと崩れ始めている。もう、それほど時間がない。
(長い、夢だったんだ)
締めつけられる胸の痛みに繰り返す。
(幸せな、夢だったんだ)
一人で戦わなくていいという夢。仲間が居て、一人ではないという夢。
その夢が今引き千切られようとしている。
(だから、全ては夢だったと思えばいい。最初から一人だったと思えばいんだ)
そうすればきっと耐えられる。
「アシャ」
「うん?」
にっこり笑って、ユーノはいきなりアシャに両手を差し伸べた。
「ユー…?!」
うろたえて一瞬凍りつく相手の頬に軽く唇を擦らせ、すぐに離れながら笑った。
「しゃべり鳥(ライノ)のキスは返したからね!」
「ユーノ!」
アシャがはっと我に返ったときは既に遅かった。ヒストの上に吸い込まれるように乗ったユーノが、掛け声をかける間も惜しむように、崩れ始めた薄い壁を突き抜けて宙道(シノイ)の方へ走り出す。
「逃げたぞ! 追え!」
わあっと声が響き、ギヌアが叫んだ。
「ユーノ! 馬鹿な!」
なだれるように遠ざかる一群にアシャは叫んだ。壁を消すのももどかしく、もう一頭の馬を引く。
だが、ヒストのような気性の荒い馬でこそ駆け抜けられた宙道(シノイ)、並の馬の胆力では無理難題、頼りのレスファートは突然のユーノの疾走に唖然として声もない。
「くそっ、ユーノ! ユーノ! ユーノーッ!」
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