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第5章
8.ウォーク・イン・ポーカー(12)
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「僕を欲しいって言って…」
未練でも欲望でも何でもいいよ。
息を弾ませながら、真崎が片手で握り締めているものを示す。
「入らせて…」
「…でも…ゴムは…」
「…要らない」
真崎が微笑む。
「この先何があろうとも……何が起ころうとも……僕は君を離さないし離れない」
「あ」
もう一度、美並に唇を寄せて、ちゅ、と吸い取った。駆け上がった波に目を閉じると、見て、と望まれる。目を開くと、
「死ぬなら君の側で」
息を荒げながらも静かな瞳で美並を見上げてきた。
「もちろん、生きるのも君の側で」
僕の命は全部君のもの。そして君の命は。
「全部……僕のものにしたい」
「………」
美並は薄紅の真崎の顔を見下ろした。
間違うのかもしれない、この先何度も。後悔するのかもしれない、この先もまた。
今ここで真崎を手放さなかったことを。
けれど。
腰を支える真崎の片手を押さえた。
「美並?」
「支えてて」
「……うん」
目を見開いた真崎が、自分のものからもう片方の手を離し、顔を歪めながら美並の腰を掴んだ。美並も真崎の肩に手を戻す。
「ゆっくりで、いいから」
そう言いつつ、真崎の濡れた手が震えている。限界をもう越えているのだろう。頷き腰を下ろしていく。
「…ん…っ」
触れた瞬間、熱と硬さに震えが走った。指で開いてもらった部分へ、突き刺さり進んでいく塊が、予想を超えて奥へ届く。
一瞬、まるで自分が真崎になって暴かれたような、今すぐ拒んで立ち上がりたいような不安が広がった。それ以上進まれないうちに早く、そう声が聞こえた気がして止まる、次の瞬間。
「あああっ」
「…っは」
大きく震えた真崎が美並をなお引き下ろし抱き込んだ。痛みに似た鋭い感覚、けれど真崎がそのまましっかり抱え込んでくれたから、全てを委ねて崩れ込む。
「んぁっ」
堪えかねたように声を上げた真崎がいきなり強く揺さぶってくる。
「み…なみ…っ」
低い叫びが耳に響いて、美並は思わずほっとした。
たぶん、失わずに済む、きっとこの先も。
美並が踏み込めなければ、今みたいに真崎が踏み込んできてくれるだろう。
思っているより自分は弱くて脆いのだ。
けれどもう、それを隠して生きる必要はなくなった。
真崎の背中は美並が守る。
けれど美並の傷みもまた、真崎が近づき暴いて吸い取ってくれるのだろう。
許されている。
視界が煙った。揺さぶられる体の熱だけでなく、ようやく帰る場所に辿り着いた迷子の子どもの安心で。
戻っていい、怪我をしたり傷ついたり、闘うことができなくなったら、この人の元に戻っていい。
一人で頑張らなくていい。
一人で堪えなくていい。
一人で竦まなくていい。
怖がっていい。
怯んでいい。
逃げていい。
次にもう一度闘えるようになるまで、この熱に抱かれて甘えていい。
そんな相手はきっともう二度と見つからない、伊吹美並という人間には。
人の傷みが見え、隠された現実に気づき、真実の姿を見立ててしまう娘には。
だから願おう。
「京介……あなたが……」
唯一無二の、番。
「欲しいです……っ」
これほどはっきり望んだものを口にしたことなどない。
涙が溢れる、息を引いてしゃくりあげながら、ままよと繰り返し訴える。
「欲しいです、京介…っ」
どこかへ行かないで。
誰かと一緒にならないで。
「ずっとここに居て」
私の側に。
「離れないで」
首を抱いて縋りつき、訴える声は消えそうだ。それでも必死に声を張る、二度と伝えられないかもしれないから。
「あなたが欲しい…っ」
ぞくんと大きく真崎が震えた。
「あ…ああ…」
思わず溢れた、そんな響きの声に驚いて顔を上げると、真崎が凍りついている。
「…京介…?」
「反則だ……」
ゆらりと視線が動く。
美並を見据える瞳は深く、きらきら光っている。
「…っ」
理由は内側から届いた。圧力が高まる、まるで今までのが前哨戦だったとでも言うように。張り詰めてくる、美並の中を押し広げるように。
「そんなこと……聞かされたら…」
どさりと押し倒された。投げ出されたのかと思ったほどの勢い、けれど腰を引き上げ抱え込まれ、表情をなくした真崎が、美並の両手を掴んでベッドに押し付ける。
「もう、無理…っ」
唇を覆われ舌を押し込まれる。立て続けに休む間もなく、強く激しく押し入れられる感覚に呻く。その声さえも飲み込まれて響かない。目を開いていられなくなって瞼を閉じると、
「…僕のだ…っ」
一旦離した口で真崎は唸った。
「美並は、もう、僕の、だから…っ!」
「あっ」
きつく強く吸いつかれ、背けた首に痛みが走った。
未練でも欲望でも何でもいいよ。
息を弾ませながら、真崎が片手で握り締めているものを示す。
「入らせて…」
「…でも…ゴムは…」
「…要らない」
真崎が微笑む。
「この先何があろうとも……何が起ころうとも……僕は君を離さないし離れない」
「あ」
もう一度、美並に唇を寄せて、ちゅ、と吸い取った。駆け上がった波に目を閉じると、見て、と望まれる。目を開くと、
「死ぬなら君の側で」
息を荒げながらも静かな瞳で美並を見上げてきた。
「もちろん、生きるのも君の側で」
僕の命は全部君のもの。そして君の命は。
「全部……僕のものにしたい」
「………」
美並は薄紅の真崎の顔を見下ろした。
間違うのかもしれない、この先何度も。後悔するのかもしれない、この先もまた。
今ここで真崎を手放さなかったことを。
けれど。
腰を支える真崎の片手を押さえた。
「美並?」
「支えてて」
「……うん」
目を見開いた真崎が、自分のものからもう片方の手を離し、顔を歪めながら美並の腰を掴んだ。美並も真崎の肩に手を戻す。
「ゆっくりで、いいから」
そう言いつつ、真崎の濡れた手が震えている。限界をもう越えているのだろう。頷き腰を下ろしていく。
「…ん…っ」
触れた瞬間、熱と硬さに震えが走った。指で開いてもらった部分へ、突き刺さり進んでいく塊が、予想を超えて奥へ届く。
一瞬、まるで自分が真崎になって暴かれたような、今すぐ拒んで立ち上がりたいような不安が広がった。それ以上進まれないうちに早く、そう声が聞こえた気がして止まる、次の瞬間。
「あああっ」
「…っは」
大きく震えた真崎が美並をなお引き下ろし抱き込んだ。痛みに似た鋭い感覚、けれど真崎がそのまましっかり抱え込んでくれたから、全てを委ねて崩れ込む。
「んぁっ」
堪えかねたように声を上げた真崎がいきなり強く揺さぶってくる。
「み…なみ…っ」
低い叫びが耳に響いて、美並は思わずほっとした。
たぶん、失わずに済む、きっとこの先も。
美並が踏み込めなければ、今みたいに真崎が踏み込んできてくれるだろう。
思っているより自分は弱くて脆いのだ。
けれどもう、それを隠して生きる必要はなくなった。
真崎の背中は美並が守る。
けれど美並の傷みもまた、真崎が近づき暴いて吸い取ってくれるのだろう。
許されている。
視界が煙った。揺さぶられる体の熱だけでなく、ようやく帰る場所に辿り着いた迷子の子どもの安心で。
戻っていい、怪我をしたり傷ついたり、闘うことができなくなったら、この人の元に戻っていい。
一人で頑張らなくていい。
一人で堪えなくていい。
一人で竦まなくていい。
怖がっていい。
怯んでいい。
逃げていい。
次にもう一度闘えるようになるまで、この熱に抱かれて甘えていい。
そんな相手はきっともう二度と見つからない、伊吹美並という人間には。
人の傷みが見え、隠された現実に気づき、真実の姿を見立ててしまう娘には。
だから願おう。
「京介……あなたが……」
唯一無二の、番。
「欲しいです……っ」
これほどはっきり望んだものを口にしたことなどない。
涙が溢れる、息を引いてしゃくりあげながら、ままよと繰り返し訴える。
「欲しいです、京介…っ」
どこかへ行かないで。
誰かと一緒にならないで。
「ずっとここに居て」
私の側に。
「離れないで」
首を抱いて縋りつき、訴える声は消えそうだ。それでも必死に声を張る、二度と伝えられないかもしれないから。
「あなたが欲しい…っ」
ぞくんと大きく真崎が震えた。
「あ…ああ…」
思わず溢れた、そんな響きの声に驚いて顔を上げると、真崎が凍りついている。
「…京介…?」
「反則だ……」
ゆらりと視線が動く。
美並を見据える瞳は深く、きらきら光っている。
「…っ」
理由は内側から届いた。圧力が高まる、まるで今までのが前哨戦だったとでも言うように。張り詰めてくる、美並の中を押し広げるように。
「そんなこと……聞かされたら…」
どさりと押し倒された。投げ出されたのかと思ったほどの勢い、けれど腰を引き上げ抱え込まれ、表情をなくした真崎が、美並の両手を掴んでベッドに押し付ける。
「もう、無理…っ」
唇を覆われ舌を押し込まれる。立て続けに休む間もなく、強く激しく押し入れられる感覚に呻く。その声さえも飲み込まれて響かない。目を開いていられなくなって瞼を閉じると、
「…僕のだ…っ」
一旦離した口で真崎は唸った。
「美並は、もう、僕の、だから…っ!」
「あっ」
きつく強く吸いつかれ、背けた首に痛みが走った。
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