『闇を闇から』

segakiyui

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第4章

12.トゥ・ゴゥ(11)

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 まるで、お互いの体を確かめているようだ。
 真崎に胸を含まれながら、美並は弾んでくる呼吸に思う。
 ここは気持ちいい? ここは好き? これは好き? いつまで続けているのがいい? もうちょっと?
 真崎を跨ぐ手足が震える。体の奥がじんわりと熱で痺れていく。
「京介…」
 乱れる呼吸に相手の名前を呼ぶ。そうして、誰と今繋がっているのかを確認して、体に刻み込んでいく。
 正直に、隠し立てなく、格好付けもしないで。
 日常生活で身につけて使い慣れた『ほどほどの距離』を少しずつ切り捨て近づけて行く。
 胸を舐められるのは気持ちいい、じれったくて遠い愛撫になるほど、体が追いかけて捕まえようとするのがわかる。時折吸われて感覚が鋭くなり、痛みが走って涙が出る。だからそれほどきつくされてはついていけない。
 放り出されたのが不満だったのだろう、下腹に真崎がすり寄せてくるから、体を下ろして腰を抱き締めて引き寄せ、体の間で包み込む。満足したように胸の頂きで真崎が唸り、あまりにもあまりにも子どもっぽい声に微笑んでしまう。
 二つの胸を同時に欲しいとでも思っているように、真崎は顔をすり寄せながら動いた。気持ちい、と甘えた声が響いてくすぐったくて、汗で濡れた真崎の体にのしかかる自分が与えているのだと感じる。
「みなみ…もう入りたい」
 頼りない声で望まれて頷いた。体を支えているつもりはなかったけれど、真崎の唇に自由に胸を愛して欲しくて体を反らせ無意識に緊張していたから、頷いて場所を入れ替わる。
 熱く湿った布団に押し付けられてほっとした。
 寒かったんだと改めて気づく、そんな風には感じていなかったのに。
 真崎がゴムをつけて戻ってくると、静かにキスをしながら、今度は真崎が美並の中へ指を押し当てた。自分でも思っていなかったほど濡れていたせいか、すぐに静かに押し込まれる。感覚に震えて目を閉じる。
 同じ動きではないはずなのに、真崎を犯した自分の指と、真崎に押し込まれている指が重なり合って、切なくて激しい揺れが駆け上がりかけて息を逃がした。
「……濡れてるね」
「……京介が、色っぽくて」
 気をそらせようと笑いかける。体が勝手に動きそうになる。もっと深くへもっと気持ちのいい場所はそこではないからと、指を呑み込み引きずっていきそうになる。
「襲いそうで困ります」
「もう襲ったくせに…」
 低く掠れた真崎の声がまずかった。背筋を走る感覚に耐えながら、早く、と呼びそうになった。
「でも、お待ちどうさま……、…いや…?」
 切っ先が指と交代して入り込もうとし、真崎が止まった。
 確かにサイズが違うし、形も違うし、入りにくいし、多少濡れているだけではその。
「…拒まれているみたいで、うまく入れない…」
 困惑して呟く真崎が、周囲をくすぐりながら突いてきて、その度ごとに感覚が中央に集められて鋭くなる。これは意図的な焦らしかと思うほど、もう少し、と思う場所を掠めては離れて突かれ、苦しい。
「…さっきの私のまねでもして?…」
 懇願に聞こえただろうか、と痺れる頭で考えた。痛みが走らなくて少し逃げる場所は快感に近い。押し付けたくなるまで詰められたら、あとは容赦なく来て欲しい、強く願うそのままに。
「じゃあ……こう、かな」
「っっあ」
 腰を掴まれ引き寄せられ、一旦閉じられた境界をじわりと広げて押し入られる。溢れた声は切なげで、自分で聞いても危ういぐらい、真崎は確実にそれを拾った。
「ああ…」
「…っ」
 吐息を漏らした真崎が、まるでいきなり真理を得たように、美並の中を探って行く。それほど広いはずはない空間、まるでコンマ数ミリ単位で削るように擦られて、いろいろな感覚が溢れた。痛い、遠い、熱い、苦しい、近い、鋭い…。
「あ、あ、あ…」
 開いた口から声が押し出される。一度通り過ぎるごとに地図を記入していくように、真崎が美並を確かめているのがわかる。指よりたどたどしい、けれど指より深く細やかな部分まで辿り着かれて、思ってみなかった場所があることを知らされて、体が揺れる。
 締め上げて、ぞうぞうとする感覚に駆け上がろうとしてぎりぎりを掠め引き剥がされる。
「い…や…っ」
 違う、そこじゃない、いや、そこだけど、そうじゃない、いや違う、それでいい、たぶん、けれど、そんな方向へ美並の意識は飛ばされたことはなく。
 全く見も知らぬ制御できない広がりが背後にあって、体が震えた。
 本能が嫌がる、突き飛ばされたら戻ってこれない。
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