『DRAGON NET』

segakiyui

文字の大きさ
上 下
117 / 213

69.『惑いに戻るなかれ』

しおりを挟む
「く、ふっ」
「オウライカさんっ?」
 呻いて汗びっしょりで目を開けると、すぐ側に居たカザルがはっとしたように覗き込んできて、オウライカは硬直した。
「どうしたの? 苦しいの?」
「カザル…」
 揺らめく視界にあたりを見回せば、ほのかな行灯の光のみの部屋は暗がりに沈んでいる。
 疼いたのは下半身、張り詰めたものは現実の解放を許されなかったらしく、ぎりぎりと緊張を増してきていて痛いほどになっている。
「まだ夜中だよ?」
 カザルは微かに笑った。
「怖い夢でも見た?」
「いつ…戻ってきた…」
「え?」
「ルワン…のところから…」
「……知ってたの」
 カザルは顔を強ばらせて俯いた。
「夕べ……オウライカさんが寝てる間に」
「……龍を彫った、と聞いた」
「…うん…」
 どうしても、彫りたかったんだ、ごめんね。
「それから……」
 俯いたままのカザルが滲んだ声で続ける。
「センサー……外してもらえた……オウライカさんが頼んでくれてたんだね…?」
「……ルワンが…?」
「うん、教えてくれた」
 カザルに因果を含める言い訳にでも使ったのかと思ったが、今はそんなことはもうどうでもいいような気がした。左半身が燃え上がるように熱い。股間のきつさは、すぐ側に居るカザルの匂いにますます煽られてくる。
「……俺……そんなに……邪魔…なんだ」
 掠れた声でカザルが呟き、縮こまるように身を竦めた。弛んだ襟元がはだけて、視界にカザルの胸が晒される。滑らかなその肌の先、右の乳首の近くに薄赤くまだ光りながら刻まれているものに、ごく、と思わず喉が鳴った。
「オウライカ…さん?」
「見せて、くれないか」
「え…?」
「どんな出来なのか、見せてくれ」
 自分の声がひび割れているのがわかった。飢えている、と気付いて唇を引き締める。竜が戻したものが何か、オウライカに知る術はないが、それでもこの激しい飢えを満たすものが何かわからないほど子どもでもない。
「うん…」
 戸惑った顔でカザルが座り直した。オウライカも汗に濡れた前髪をかきあげながら体を起こす。そのオウライカに刺激されたように、カザルが微かに赤くなって、そろりと帯を解いた。
「…っ……」
 声にならなかった。
 浅黒い肌に細かな筆致で描かれた龍は、カザルの左脚に絡み付いて腰から腹へ手を這わせている。右胸に向かって開いた口は衣を剥がれてみるみる尖った乳首を今にも喰いそうだ。だが、その下に黒蝶一頭、龍の愛撫を妨げるように飛ぶそれに、オウライカの腹の奥がじりと焼かれた。
「っ、オウライカ、さんっ」
 転生など待てるものか。
 戸惑うカザルの手を引き寄せ、一気に布団に引きずり込む。龍の身体がカザルの動きにうねって、今にもオウライカより先にカザルを喰らって啼かせそうで、微かに散った白い花弁の閃きに焦る。
「あ、ん…っ」
 唇を覆った。顔を引き寄せ、思うがままに薄く開いていたそれにむしゃぶりつく。のしかかったオウライカに、カザルがひくりと身体を揺らせたのは、張り詰めた股間がまともに擦り寄せられたせいだろう。
「っ、ぁ、あっ」
 それでもカザルもまた拒まなかった。オウライカを気遣うように一瞬だけ引いた身体を、容赦なく引き寄せると、ほっとしたように自分で脚を開いてオウライカを抱える。挟み込まれた部分に指を滑らせると、合わせた口の中で呻き声があがって、すぐに腰が揺れ出した。指が増えるに従って濡れてきたのは勃ち上がった部分、けれどその滴りを注がれて、背後もすぐにオウライカの指を濡らし始める。
「…来て……来て…っ、オウライカさん……っ」
 懇願するような声にオウライカはためらいなく応じた。弱いところは知っている、感じることを止められなくなる場所も、そこを集中して撫で擦りながら、あっという間に深くまで迎え入れられたそこで激しく動く。
「あっ、あっ、ああっ…」
 甘い声を上げてカザルが弾けた。萎える暇を与えずに濡れたそれを扱き立てて、またすぐ高みに追いやっていく。
「ん、っんっ、んっっ」
 ん、ふ、うっ。
 喘ぎながら、カザルが声もなく反り返ってまた濡れた。貪欲なオウライカにためらうことなく感じ続けるその目が、開かれては閉じられて、涙を零し始める。それを舐め取って、口付けて、次第に自分がカザルの中に取り込まれていくような気がした。
 まるで、あの竜に注がれた時のようだ。
 そう思った瞬間に、自分がまた大きく張り詰めるのがわかる。
「ああああっ」
 カザルが目を見開いて震えた。
「い…やあ……っ」
 そんなところまで、入らない。
 掠れた悲鳴で叫ばれて、その瞬間に腰を掴んで逃げかけたのをなお貫く。
 次の瞬間、どこからか入った風に行灯が消えた。真っ暗な中に身体を震わせながら達したカザルが、腹に散らせたそれを見守るオウライカの視界に、淡く輝く光点が飛び込む。
「っ、っ、うう」
 それはカザルの身体に彫られた龍の手に掴まれたもう一頭の蝶だった。龍の体に散っている花弁と見えたのは、この構図ではその引きちぎられた蝶の羽根のように見える。ルワン得意の闇に光る特殊な染料を使った『闇飾り』、巨大な龍がカザルの体に宿り、今オウライカという蝶をその手で握り潰していく。
 ぎちり、とカザルを犯したものが急に強く深く包まれて、オウライカは息を呑んだ。
「は、ぅ」
 ふっと一瞬カザルがこちらを見返して笑う。潤んだ黄金の瞳が闇の中で明るく濡れて光っている。妖艶な笑みと握り潰された蝶が重なる。
「く、う、う、、っあ、あああっ」
 容赦なく締め付けられて呑み込まれる、その衝撃にオウライカは思わず声を放って崩れ落ちた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

鬼に成る者

なぁ恋
BL
赤鬼と青鬼、 二人は生まれ落ちたその時からずっと共に居た。 青鬼は無念のうちに死ぬ。 赤鬼に残酷な願いを遺し、来世で再び出逢う約束をして、 数千年、赤鬼は青鬼を待ち続け、再会を果たす。 そこから始まる二人を取り巻く優しくも残酷な鬼退治の物語―――― 基本がBLです。 はじめは精神的なあれやこれです。 鬼退治故の残酷な描写があります。 Eエブリスタにて、2008/11/10から始まり2015/3/11完結した作品です。 加筆したり、直したりしながらの投稿になります。

処理中です...