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69.『惑いに戻るなかれ』
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「く、ふっ」
「オウライカさんっ?」
呻いて汗びっしょりで目を開けると、すぐ側に居たカザルがはっとしたように覗き込んできて、オウライカは硬直した。
「どうしたの? 苦しいの?」
「カザル…」
揺らめく視界にあたりを見回せば、ほのかな行灯の光のみの部屋は暗がりに沈んでいる。
疼いたのは下半身、張り詰めたものは現実の解放を許されなかったらしく、ぎりぎりと緊張を増してきていて痛いほどになっている。
「まだ夜中だよ?」
カザルは微かに笑った。
「怖い夢でも見た?」
「いつ…戻ってきた…」
「え?」
「ルワン…のところから…」
「……知ってたの」
カザルは顔を強ばらせて俯いた。
「夕べ……オウライカさんが寝てる間に」
「……龍を彫った、と聞いた」
「…うん…」
どうしても、彫りたかったんだ、ごめんね。
「それから……」
俯いたままのカザルが滲んだ声で続ける。
「センサー……外してもらえた……オウライカさんが頼んでくれてたんだね…?」
「……ルワンが…?」
「うん、教えてくれた」
カザルに因果を含める言い訳にでも使ったのかと思ったが、今はそんなことはもうどうでもいいような気がした。左半身が燃え上がるように熱い。股間のきつさは、すぐ側に居るカザルの匂いにますます煽られてくる。
「……俺……そんなに……邪魔…なんだ」
掠れた声でカザルが呟き、縮こまるように身を竦めた。弛んだ襟元がはだけて、視界にカザルの胸が晒される。滑らかなその肌の先、右の乳首の近くに薄赤くまだ光りながら刻まれているものに、ごく、と思わず喉が鳴った。
「オウライカ…さん?」
「見せて、くれないか」
「え…?」
「どんな出来なのか、見せてくれ」
自分の声がひび割れているのがわかった。飢えている、と気付いて唇を引き締める。竜が戻したものが何か、オウライカに知る術はないが、それでもこの激しい飢えを満たすものが何かわからないほど子どもでもない。
「うん…」
戸惑った顔でカザルが座り直した。オウライカも汗に濡れた前髪をかきあげながら体を起こす。そのオウライカに刺激されたように、カザルが微かに赤くなって、そろりと帯を解いた。
「…っ……」
声にならなかった。
浅黒い肌に細かな筆致で描かれた龍は、カザルの左脚に絡み付いて腰から腹へ手を這わせている。右胸に向かって開いた口は衣を剥がれてみるみる尖った乳首を今にも喰いそうだ。だが、その下に黒蝶一頭、龍の愛撫を妨げるように飛ぶそれに、オウライカの腹の奥がじりと焼かれた。
「っ、オウライカ、さんっ」
転生など待てるものか。
戸惑うカザルの手を引き寄せ、一気に布団に引きずり込む。龍の身体がカザルの動きにうねって、今にもオウライカより先にカザルを喰らって啼かせそうで、微かに散った白い花弁の閃きに焦る。
「あ、ん…っ」
唇を覆った。顔を引き寄せ、思うがままに薄く開いていたそれにむしゃぶりつく。のしかかったオウライカに、カザルがひくりと身体を揺らせたのは、張り詰めた股間がまともに擦り寄せられたせいだろう。
「っ、ぁ、あっ」
それでもカザルもまた拒まなかった。オウライカを気遣うように一瞬だけ引いた身体を、容赦なく引き寄せると、ほっとしたように自分で脚を開いてオウライカを抱える。挟み込まれた部分に指を滑らせると、合わせた口の中で呻き声があがって、すぐに腰が揺れ出した。指が増えるに従って濡れてきたのは勃ち上がった部分、けれどその滴りを注がれて、背後もすぐにオウライカの指を濡らし始める。
「…来て……来て…っ、オウライカさん……っ」
懇願するような声にオウライカはためらいなく応じた。弱いところは知っている、感じることを止められなくなる場所も、そこを集中して撫で擦りながら、あっという間に深くまで迎え入れられたそこで激しく動く。
「あっ、あっ、ああっ…」
甘い声を上げてカザルが弾けた。萎える暇を与えずに濡れたそれを扱き立てて、またすぐ高みに追いやっていく。
「ん、っんっ、んっっ」
ん、ふ、うっ。
喘ぎながら、カザルが声もなく反り返ってまた濡れた。貪欲なオウライカにためらうことなく感じ続けるその目が、開かれては閉じられて、涙を零し始める。それを舐め取って、口付けて、次第に自分がカザルの中に取り込まれていくような気がした。
まるで、あの竜に注がれた時のようだ。
そう思った瞬間に、自分がまた大きく張り詰めるのがわかる。
「ああああっ」
カザルが目を見開いて震えた。
「い…やあ……っ」
そんなところまで、入らない。
掠れた悲鳴で叫ばれて、その瞬間に腰を掴んで逃げかけたのをなお貫く。
次の瞬間、どこからか入った風に行灯が消えた。真っ暗な中に身体を震わせながら達したカザルが、腹に散らせたそれを見守るオウライカの視界に、淡く輝く光点が飛び込む。
「っ、っ、うう」
それはカザルの身体に彫られた龍の手に掴まれたもう一頭の蝶だった。龍の体に散っている花弁と見えたのは、この構図ではその引きちぎられた蝶の羽根のように見える。ルワン得意の闇に光る特殊な染料を使った『闇飾り』、巨大な龍がカザルの体に宿り、今オウライカという蝶をその手で握り潰していく。
ぎちり、とカザルを犯したものが急に強く深く包まれて、オウライカは息を呑んだ。
「は、ぅ」
ふっと一瞬カザルがこちらを見返して笑う。潤んだ黄金の瞳が闇の中で明るく濡れて光っている。妖艶な笑みと握り潰された蝶が重なる。
「く、う、う、、っあ、あああっ」
容赦なく締め付けられて呑み込まれる、その衝撃にオウライカは思わず声を放って崩れ落ちた。
「オウライカさんっ?」
呻いて汗びっしょりで目を開けると、すぐ側に居たカザルがはっとしたように覗き込んできて、オウライカは硬直した。
「どうしたの? 苦しいの?」
「カザル…」
揺らめく視界にあたりを見回せば、ほのかな行灯の光のみの部屋は暗がりに沈んでいる。
疼いたのは下半身、張り詰めたものは現実の解放を許されなかったらしく、ぎりぎりと緊張を増してきていて痛いほどになっている。
「まだ夜中だよ?」
カザルは微かに笑った。
「怖い夢でも見た?」
「いつ…戻ってきた…」
「え?」
「ルワン…のところから…」
「……知ってたの」
カザルは顔を強ばらせて俯いた。
「夕べ……オウライカさんが寝てる間に」
「……龍を彫った、と聞いた」
「…うん…」
どうしても、彫りたかったんだ、ごめんね。
「それから……」
俯いたままのカザルが滲んだ声で続ける。
「センサー……外してもらえた……オウライカさんが頼んでくれてたんだね…?」
「……ルワンが…?」
「うん、教えてくれた」
カザルに因果を含める言い訳にでも使ったのかと思ったが、今はそんなことはもうどうでもいいような気がした。左半身が燃え上がるように熱い。股間のきつさは、すぐ側に居るカザルの匂いにますます煽られてくる。
「……俺……そんなに……邪魔…なんだ」
掠れた声でカザルが呟き、縮こまるように身を竦めた。弛んだ襟元がはだけて、視界にカザルの胸が晒される。滑らかなその肌の先、右の乳首の近くに薄赤くまだ光りながら刻まれているものに、ごく、と思わず喉が鳴った。
「オウライカ…さん?」
「見せて、くれないか」
「え…?」
「どんな出来なのか、見せてくれ」
自分の声がひび割れているのがわかった。飢えている、と気付いて唇を引き締める。竜が戻したものが何か、オウライカに知る術はないが、それでもこの激しい飢えを満たすものが何かわからないほど子どもでもない。
「うん…」
戸惑った顔でカザルが座り直した。オウライカも汗に濡れた前髪をかきあげながら体を起こす。そのオウライカに刺激されたように、カザルが微かに赤くなって、そろりと帯を解いた。
「…っ……」
声にならなかった。
浅黒い肌に細かな筆致で描かれた龍は、カザルの左脚に絡み付いて腰から腹へ手を這わせている。右胸に向かって開いた口は衣を剥がれてみるみる尖った乳首を今にも喰いそうだ。だが、その下に黒蝶一頭、龍の愛撫を妨げるように飛ぶそれに、オウライカの腹の奥がじりと焼かれた。
「っ、オウライカ、さんっ」
転生など待てるものか。
戸惑うカザルの手を引き寄せ、一気に布団に引きずり込む。龍の身体がカザルの動きにうねって、今にもオウライカより先にカザルを喰らって啼かせそうで、微かに散った白い花弁の閃きに焦る。
「あ、ん…っ」
唇を覆った。顔を引き寄せ、思うがままに薄く開いていたそれにむしゃぶりつく。のしかかったオウライカに、カザルがひくりと身体を揺らせたのは、張り詰めた股間がまともに擦り寄せられたせいだろう。
「っ、ぁ、あっ」
それでもカザルもまた拒まなかった。オウライカを気遣うように一瞬だけ引いた身体を、容赦なく引き寄せると、ほっとしたように自分で脚を開いてオウライカを抱える。挟み込まれた部分に指を滑らせると、合わせた口の中で呻き声があがって、すぐに腰が揺れ出した。指が増えるに従って濡れてきたのは勃ち上がった部分、けれどその滴りを注がれて、背後もすぐにオウライカの指を濡らし始める。
「…来て……来て…っ、オウライカさん……っ」
懇願するような声にオウライカはためらいなく応じた。弱いところは知っている、感じることを止められなくなる場所も、そこを集中して撫で擦りながら、あっという間に深くまで迎え入れられたそこで激しく動く。
「あっ、あっ、ああっ…」
甘い声を上げてカザルが弾けた。萎える暇を与えずに濡れたそれを扱き立てて、またすぐ高みに追いやっていく。
「ん、っんっ、んっっ」
ん、ふ、うっ。
喘ぎながら、カザルが声もなく反り返ってまた濡れた。貪欲なオウライカにためらうことなく感じ続けるその目が、開かれては閉じられて、涙を零し始める。それを舐め取って、口付けて、次第に自分がカザルの中に取り込まれていくような気がした。
まるで、あの竜に注がれた時のようだ。
そう思った瞬間に、自分がまた大きく張り詰めるのがわかる。
「ああああっ」
カザルが目を見開いて震えた。
「い…やあ……っ」
そんなところまで、入らない。
掠れた悲鳴で叫ばれて、その瞬間に腰を掴んで逃げかけたのをなお貫く。
次の瞬間、どこからか入った風に行灯が消えた。真っ暗な中に身体を震わせながら達したカザルが、腹に散らせたそれを見守るオウライカの視界に、淡く輝く光点が飛び込む。
「っ、っ、うう」
それはカザルの身体に彫られた龍の手に掴まれたもう一頭の蝶だった。龍の体に散っている花弁と見えたのは、この構図ではその引きちぎられた蝶の羽根のように見える。ルワン得意の闇に光る特殊な染料を使った『闇飾り』、巨大な龍がカザルの体に宿り、今オウライカという蝶をその手で握り潰していく。
ぎちり、とカザルを犯したものが急に強く深く包まれて、オウライカは息を呑んだ。
「は、ぅ」
ふっと一瞬カザルがこちらを見返して笑う。潤んだ黄金の瞳が闇の中で明るく濡れて光っている。妖艶な笑みと握り潰された蝶が重なる。
「く、う、う、、っあ、あああっ」
容赦なく締め付けられて呑み込まれる、その衝撃にオウライカは思わず声を放って崩れ落ちた。
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