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SSS65『あなたになりたい』
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「こうして抱き合ってると安心するわ」
「うん?」
「あなたが確かに私のものだって思えるもの……独りで居ると時々ひどく不安になるの。あなたがどこかへ言ってしまいそうで」
「馬鹿だな」
男は軽く笑って、しがみついている女の柔らかな肌を撫でた。吸い付くような手触りが、指先に絡んでくるような錯覚さえ起こさせる。
「ほんとよ。恋人を食べてしまった人の気持ちが良くわかるわ。私もあなたを食べてしまいたい。ううん、あなたの全てに溶け込んで、あなたと一緒になりたい」
女の声と共に長い髪が男の体を包み込む。
「じゃあ、そうしろよ」
男は女の体を探りながら呟いた。
「さっきみたいに、俺を食べてみろよ」
「あん…」
翌朝、女は満ち足りた気持ちで目を覚ました。顔を洗い服を着る。気がついて、壁際に吊ってあった男の背広をくるくる丸め、ごみ袋に入れた。
胸の中で微かに疼くものに、そっと小さな声で言い聞かせる。
「ごめんなさいね、もう要らないものでしょう? それに、女の暮らしもいいものよ。すぐになれるわ、あなただって」
終わり
「うん?」
「あなたが確かに私のものだって思えるもの……独りで居ると時々ひどく不安になるの。あなたがどこかへ言ってしまいそうで」
「馬鹿だな」
男は軽く笑って、しがみついている女の柔らかな肌を撫でた。吸い付くような手触りが、指先に絡んでくるような錯覚さえ起こさせる。
「ほんとよ。恋人を食べてしまった人の気持ちが良くわかるわ。私もあなたを食べてしまいたい。ううん、あなたの全てに溶け込んで、あなたと一緒になりたい」
女の声と共に長い髪が男の体を包み込む。
「じゃあ、そうしろよ」
男は女の体を探りながら呟いた。
「さっきみたいに、俺を食べてみろよ」
「あん…」
翌朝、女は満ち足りた気持ちで目を覚ました。顔を洗い服を着る。気がついて、壁際に吊ってあった男の背広をくるくる丸め、ごみ袋に入れた。
胸の中で微かに疼くものに、そっと小さな声で言い聞かせる。
「ごめんなさいね、もう要らないものでしょう? それに、女の暮らしもいいものよ。すぐになれるわ、あなただって」
終わり
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