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『落ちてきたものは』
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「あ、雪」
美並が掌を開くと、舞い落ちてきた白いものがふわりと着地した。
「すぐ溶けちゃうね」
覗き込んだ京介が微笑む。
「まさかあそこで泣くとは思いませんでした」
美並のつぶやきに京介が赤くなる。
「だって」
悲しかったんだよ本当に。
「だから慰めて?」
キスをねだる甘えん坊の瞳。
「人が来ますよ」
ホールを振り返るとそこはもう夕闇に包まれて。
「ん…」
重なる唇の向こう、窓から漏れる仄かな灯。
「なんだかほっとするな」
ユーノは声を潜めてつぶやく。
「家々に灯があると、みんな無事だと思うから」
「やばい灯もあるぞ」
イルファが笑う。
「いつかの山賊どものともした灯」
「でも」
レスファートがユーノにすり寄りながら、
「おかしをやくかまどの火はすき」
アシャは?
尋ねられてユーノの髪についた木の葉を払い落とす。
ついでにそっと額に触れて、
「俺を温める女性、だな」
かさりと足下で鳴った木の葉をスープは見下ろす。
「シーン」
「ん?」
「なぜ木の葉は色づくんでしょう」
「……哲学的だな」
そりゃそうか、張り込んで5時間動きがなけりゃ。
苦笑しながら空を見上げる。
冷たく澄んだ青空だ。
「誰かに見て欲しいからだろ」
「俺も色づいてます?」
「は?」
「あなたに見て欲しいって」
「う」
生真面目な問いに一瞬詰まり、深々と吐息を漏らす。
「ああ……色づきすぎて時々困る」
スープは微笑む。
「あのね、護王」
漏らした吐息に相手がむくれた顔になる。
「そんな顔しないの」
「なんでこいつが俺とあんたの間におるん」
洋子に向かって唇を尖らせる。
指し示したのは二人の間に生まれた赤ん坊。
「だって一人じゃ冷えるでしょ?」
並べた布団に川の字はここのところのお決まりだが。
「今夜ぐらいええやんか」
護王はすねる。
「今夜ぐらいあんたを抱きしめててもええやんか」
クリスマスやぞ?
「いっつもそいつばっかり抱いててもろて」
不公平やんか。
「俺かて一人で寂しかった……んっ」
「これは護王だけよ?」
「………まあ……許したろ」
ぱたりと抱かれた赤子の手が落ちる。
滑り落ちた手を思わずしっかり握ってしまって、
ぽかりと開いた瞳にスライはうろたえる。
漆黒の視線。
睫毛に縁取られて、柔らかでまろい微笑に見惚れる。
「なに…?」
「ああ、その、つまりだ、手が」
「手が」
「寒そう、だったから」
「……」
サヨコがくすりと笑って顔が熱くなる。
愚かないい訳だ。
だって二人とも暖炉の前で体を寄せあって座っている。
「寒かったかも」
「違う俺が」
二人のことばが重なった。
「俺が?」
「寒かった?」
顔を見合わせ苦笑する。
窓の外は雪。
落ちてきたものはなあに。
落ちてきたものは。
雪。
窓の灯。
木の葉。
吐息。
手。
優しいあなたの、愛しい君の、大切なこのひととき。
メリークリスマス。
全ての人に幸いあれ。
美並が掌を開くと、舞い落ちてきた白いものがふわりと着地した。
「すぐ溶けちゃうね」
覗き込んだ京介が微笑む。
「まさかあそこで泣くとは思いませんでした」
美並のつぶやきに京介が赤くなる。
「だって」
悲しかったんだよ本当に。
「だから慰めて?」
キスをねだる甘えん坊の瞳。
「人が来ますよ」
ホールを振り返るとそこはもう夕闇に包まれて。
「ん…」
重なる唇の向こう、窓から漏れる仄かな灯。
「なんだかほっとするな」
ユーノは声を潜めてつぶやく。
「家々に灯があると、みんな無事だと思うから」
「やばい灯もあるぞ」
イルファが笑う。
「いつかの山賊どものともした灯」
「でも」
レスファートがユーノにすり寄りながら、
「おかしをやくかまどの火はすき」
アシャは?
尋ねられてユーノの髪についた木の葉を払い落とす。
ついでにそっと額に触れて、
「俺を温める女性、だな」
かさりと足下で鳴った木の葉をスープは見下ろす。
「シーン」
「ん?」
「なぜ木の葉は色づくんでしょう」
「……哲学的だな」
そりゃそうか、張り込んで5時間動きがなけりゃ。
苦笑しながら空を見上げる。
冷たく澄んだ青空だ。
「誰かに見て欲しいからだろ」
「俺も色づいてます?」
「は?」
「あなたに見て欲しいって」
「う」
生真面目な問いに一瞬詰まり、深々と吐息を漏らす。
「ああ……色づきすぎて時々困る」
スープは微笑む。
「あのね、護王」
漏らした吐息に相手がむくれた顔になる。
「そんな顔しないの」
「なんでこいつが俺とあんたの間におるん」
洋子に向かって唇を尖らせる。
指し示したのは二人の間に生まれた赤ん坊。
「だって一人じゃ冷えるでしょ?」
並べた布団に川の字はここのところのお決まりだが。
「今夜ぐらいええやんか」
護王はすねる。
「今夜ぐらいあんたを抱きしめててもええやんか」
クリスマスやぞ?
「いっつもそいつばっかり抱いててもろて」
不公平やんか。
「俺かて一人で寂しかった……んっ」
「これは護王だけよ?」
「………まあ……許したろ」
ぱたりと抱かれた赤子の手が落ちる。
滑り落ちた手を思わずしっかり握ってしまって、
ぽかりと開いた瞳にスライはうろたえる。
漆黒の視線。
睫毛に縁取られて、柔らかでまろい微笑に見惚れる。
「なに…?」
「ああ、その、つまりだ、手が」
「手が」
「寒そう、だったから」
「……」
サヨコがくすりと笑って顔が熱くなる。
愚かないい訳だ。
だって二人とも暖炉の前で体を寄せあって座っている。
「寒かったかも」
「違う俺が」
二人のことばが重なった。
「俺が?」
「寒かった?」
顔を見合わせ苦笑する。
窓の外は雪。
落ちてきたものはなあに。
落ちてきたものは。
雪。
窓の灯。
木の葉。
吐息。
手。
優しいあなたの、愛しい君の、大切なこのひととき。
メリークリスマス。
全ての人に幸いあれ。
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