上 下
79 / 122
過去にも色々ありました

第79話[シェルシェーレ過去編]シュバルツの悪魔③

しおりを挟む
「ただいまお母様!」

家に戻ると、お母様が玄関でむかえてくれた。

「良かった、帰りが遅いから心配したのですよ?…おや、その少女は?それにハンネスはどうしたのですか?」

お母様が聞く。

「えーっと…後で話すね!とりあえずこの子をお風呂に入れたいの!」
「…分かりました、準備しましょう。」

――――――

「うーん」

あれから少し経ち、私はダイニングで悩んでいた。

金髪の少女はお母様がお風呂に入れてくれた。

お母様によれば、そこまで体は汚れていなかったらしいし、血色も良いから病気などの心配も無いそうだ。

ちなみに、シュバルツ家の人は自分の身の回りの事は自分でやる。

だから侍女やメイド、執事達の仕事はだだっ広い屋敷の管理や料理、外出の付き添いなどが中心だ。

…で、そんなことはどうでも良くて、今はお風呂からあがった後、与えた食事を目の前でむさぼるように食べているこの少女をどうにかしなきゃいけない。

「…美味しい?」

コクコク

少女は頷きながら、無心で食べ続ける。よっぽどお腹が空いていたんだろう。


…さて、まず考えるべきは、この少女がどこから来たのかだ。

状況から言って、あのときに声を聞いた不審な男達が関わっている可能性は高い。

というのも、あの不審者達は多分人攫いとか人身売買とかである可能性が高いからだ。

詳しくは街に情報収集のために残してきたハンネスさんの報告が来るまではなんとも言えないけど、男たちは何かを探している様子だったのと、"逃がしたら承知しねえ"みたいなことを言っていたので、彼らが探していたのは逃げるようなもの、つまりは動物だ。

そして、前も見ずに走ってぶつかってきたボロボロの服の少女がいたとなっては、やっぱり彼らはこの少女を探していたと考えるのが妥当だ。

まさかこの子の親や親戚では無いだろうし、仮にそうだとしてもあんな服を着せていたなら虐待だよね…

という訳で、これはこの子を元の場所に帰して解決する問題じゃないってことだけは確かだ。

あと今できることはこの子から事情を聞くくらいだけど…

モグモグ…

この子が食べ終わってからでいいか。

――――

「……」

少女はご飯を食べ終え、居心地が悪そうにそわそわし始めた。

「あなた、名前は?」
「…リナ」

お、返事してくれた。

「どこから来たの?」
「…おうち」

おうちということは、元から天涯孤独だった訳じゃなく、家族と暮らしていたってことかな…?こんな小さい子が一人暮らしできるとは考えづらいし。

「どんなおうち?」
「…おっきいおうち」
「今いる私のおうちとあなたのおうち、どっちが大きい?」
「えっと…おなじくらい」

同じくらい…?

「おうちでは誰と暮らしてたの?」
「おかあさまと、おとうさまと、シロ」
「シロって?」
「ワンちゃんのなまえ…」

………

これは思ったより話がややこしそうだ。

「ここまで…というか、私とぶつかったあの場所まで、どうやってきたの?」
「おうちからこわい人たちにばしゃにのせられて、しばらくそのままでいたけど、だんだんこわくなってきてにげてきた…」
「…そっか、教えてくれてありがとう。じゃあ食事も済んだし、今日はもう寝ちゃいなよ。寝室はお客さん用のがあるから。」
「え…」
「ちゃんとあなたの居場所は私が探すから、それまではうちにいていいからね。」
「…ありがとう、おねえさま」

少女はニコッと笑う。出会ってから初めての笑顔だ。

「…うん」

こうして少女…いや、リナは侍女に連れられ、眠りについた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

別れた婚約者が「俺のこと、まだ好きなんだろう?」と復縁せまってきて気持ち悪いんですが

リオール
恋愛
婚約破棄して別れたはずなのに、なぜか元婚約者に復縁迫られてるんですけど!? ※ご都合主義展開 ※全7話  

冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました! 小説家になろうにて先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n5925iz/ 残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。 だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。 そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。 実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく! ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう! 彼女はむしろ喜んだ。

彼は婚約破棄をしましたが、どうやら王家を敵に回してしまったようですよ?

マルローネ
恋愛
侯爵令嬢のネフィラは、公爵令息のスタインと婚約をしていた。 突然、スタインの浮気により婚約破棄をされてしまうのだが…… ネフィラの幼馴染に王太子であるセシルが居たことが運の尽きだった。 公爵令息のスタインは王家を敵に回すことになり……。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

本物の恋、見つけましたⅡ ~今の私は地味だけど素敵な彼に夢中です~

日之影ソラ
恋愛
本物の恋を見つけたエミリアは、ゆっくり時間をかけユートと心を通わていく。 そうして念願が叶い、ユートと相思相愛になることが出来た。 ユートからプロポーズされ浮かれるエミリアだったが、二人にはまだまだ超えなくてはならない壁がたくさんある。 身分の違い、生きてきた環境の違い、価値観の違い。 様々な違いを抱えながら、一歩ずつ幸せに向かって前進していく。 何があっても関係ありません! 私とユートの恋は本物だってことを証明してみせます! 『本物の恋、見つけました』の続編です。 二章から読んでも楽しめるようになっています。

あなたは推しません~浮気殿下と縁を切って【推し】に会いに行きたいのに!なぜお兄様が溺愛してくるんですか!?

越智屋ノマ@甘トカ【書籍】大人気御礼!
恋愛
――あぁ、これ、詰むやつ。 月明りに濡れる庭園で見つめ合う、王太子とピンク髪の男爵令嬢。 ふたりを目撃した瞬間、悪役令嬢ミレーユ・ガスタークは前世の記憶を取り戻す。 ここは恋愛ゲームアプリの世界、自分は王太子ルートの悪役令嬢だ。 貴族学園でヒロインに悪辣非道な仕打ちを続け、卒業パーティで断罪されて修道院送りになるという、テンプレべたべたな負け犬人生。 ……冗談じゃありませんわよ。 勝手に私を踏み台にしないでくださいね? 記憶を取り戻した今となっては、王太子への敬意も慕情も消え失せた。 だってあの王太子、私の推しじゃあなかったし! 私の推しは、【ノエル】なんだもの!! 王太子との婚約破棄は大歓迎だが、断罪されるのだけは御免だ。 悠々自適な推し活ライフを楽しむためには、何としても王太子側の『有責』に持ち込まなければ……! 【ミレーユの生き残り戦略】 1.ヒロインを虐めない 2.味方を増やす 3.過去の《やらかし》を徹底カバー! これら3つを死守して、推し活目指してがんばるミレーユ。 するとなぜか、疎遠だった義兄がミレーユに惹かれ始め…… 「王太子がお前を要らないというのなら、私が貰う。絶対にお前を幸せにするよ」 ちょっとちょっとちょっと!? 推し活したいだけなのに、面倒くさいヒロインと王太子、おまけに義兄も想定外な行動を起こしてくるから手に負えません……! ミレーユは、無事に推し活できるのか……? * ざまぁ多めのハッピーエンド。 * 注:主人公は義兄を、血のつながった兄だと思い込んでいます。

本との事さ

九情承太郎
エッセイ・ノンフィクション
この本を読んだ時の記憶を、記しておこうと思う。 俺の人生を変えるような本との出会いや、本屋そのものの記憶も含めて。 ※カクヨムでも投稿しています。 表紙は、画像生成AIで出力したイラストです。

処理中です...