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過去にも色々ありました
第79話[シェルシェーレ過去編]シュバルツの悪魔③
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「ただいまお母様!」
家に戻ると、お母様が玄関でむかえてくれた。
「良かった、帰りが遅いから心配したのですよ?…おや、その少女は?それにハンネスはどうしたのですか?」
お母様が聞く。
「えーっと…後で話すね!とりあえずこの子をお風呂に入れたいの!」
「…分かりました、準備しましょう。」
――――――
「うーん」
あれから少し経ち、私はダイニングで悩んでいた。
金髪の少女はお母様がお風呂に入れてくれた。
お母様によれば、そこまで体は汚れていなかったらしいし、血色も良いから病気などの心配も無いそうだ。
ちなみに、シュバルツ家の人は自分の身の回りの事は自分でやる。
だから侍女やメイド、執事達の仕事はだだっ広い屋敷の管理や料理、外出の付き添いなどが中心だ。
…で、そんなことはどうでも良くて、今はお風呂からあがった後、与えた食事を目の前で貪るように食べているこの少女をどうにかしなきゃいけない。
「…美味しい?」
コクコク
少女は頷きながら、無心で食べ続ける。よっぽどお腹が空いていたんだろう。
…さて、まず考えるべきは、この少女がどこから来たのかだ。
状況から言って、あのときに声を聞いた不審な男達が関わっている可能性は高い。
というのも、あの不審者達は多分人攫いとか人身売買とかである可能性が高いからだ。
詳しくは街に情報収集のために残してきたハンネスさんの報告が来るまではなんとも言えないけど、男たちは何かを探している様子だったのと、"逃がしたら承知しねえ"みたいなことを言っていたので、彼らが探していたのは逃げるようなもの、つまりは動物だ。
そして、前も見ずに走ってぶつかってきたボロボロの服の少女がいたとなっては、やっぱり彼らはこの少女を探していたと考えるのが妥当だ。
まさかこの子の親や親戚では無いだろうし、仮にそうだとしてもあんな服を着せていたなら虐待だよね…
という訳で、これはこの子を元の場所に帰して解決する問題じゃないってことだけは確かだ。
あと今できることはこの子から事情を聞くくらいだけど…
モグモグ…
この子が食べ終わってからでいいか。
――――
「……」
少女はご飯を食べ終え、居心地が悪そうにそわそわし始めた。
「あなた、名前は?」
「…リナ」
お、返事してくれた。
「どこから来たの?」
「…おうち」
おうちということは、元から天涯孤独だった訳じゃなく、家族と暮らしていたってことかな…?こんな小さい子が一人暮らしできるとは考えづらいし。
「どんなおうち?」
「…おっきいおうち」
「今いる私のおうちとあなたのおうち、どっちが大きい?」
「えっと…おなじくらい」
同じくらい…?
「おうちでは誰と暮らしてたの?」
「おかあさまと、おとうさまと、シロ」
「シロって?」
「ワンちゃんのなまえ…」
………
これは思ったより話がややこしそうだ。
「ここまで…というか、私とぶつかったあの場所まで、どうやってきたの?」
「おうちからこわい人たちにばしゃにのせられて、しばらくそのままでいたけど、だんだんこわくなってきてにげてきた…」
「…そっか、教えてくれてありがとう。じゃあ食事も済んだし、今日はもう寝ちゃいなよ。寝室はお客さん用のがあるから。」
「え…」
「ちゃんとあなたの居場所は私が探すから、それまではうちにいていいからね。」
「…ありがとう、おねえさま」
少女はニコッと笑う。出会ってから初めての笑顔だ。
「…うん」
こうして少女…いや、リナは侍女に連れられ、眠りについた。
家に戻ると、お母様が玄関でむかえてくれた。
「良かった、帰りが遅いから心配したのですよ?…おや、その少女は?それにハンネスはどうしたのですか?」
お母様が聞く。
「えーっと…後で話すね!とりあえずこの子をお風呂に入れたいの!」
「…分かりました、準備しましょう。」
――――――
「うーん」
あれから少し経ち、私はダイニングで悩んでいた。
金髪の少女はお母様がお風呂に入れてくれた。
お母様によれば、そこまで体は汚れていなかったらしいし、血色も良いから病気などの心配も無いそうだ。
ちなみに、シュバルツ家の人は自分の身の回りの事は自分でやる。
だから侍女やメイド、執事達の仕事はだだっ広い屋敷の管理や料理、外出の付き添いなどが中心だ。
…で、そんなことはどうでも良くて、今はお風呂からあがった後、与えた食事を目の前で貪るように食べているこの少女をどうにかしなきゃいけない。
「…美味しい?」
コクコク
少女は頷きながら、無心で食べ続ける。よっぽどお腹が空いていたんだろう。
…さて、まず考えるべきは、この少女がどこから来たのかだ。
状況から言って、あのときに声を聞いた不審な男達が関わっている可能性は高い。
というのも、あの不審者達は多分人攫いとか人身売買とかである可能性が高いからだ。
詳しくは街に情報収集のために残してきたハンネスさんの報告が来るまではなんとも言えないけど、男たちは何かを探している様子だったのと、"逃がしたら承知しねえ"みたいなことを言っていたので、彼らが探していたのは逃げるようなもの、つまりは動物だ。
そして、前も見ずに走ってぶつかってきたボロボロの服の少女がいたとなっては、やっぱり彼らはこの少女を探していたと考えるのが妥当だ。
まさかこの子の親や親戚では無いだろうし、仮にそうだとしてもあんな服を着せていたなら虐待だよね…
という訳で、これはこの子を元の場所に帰して解決する問題じゃないってことだけは確かだ。
あと今できることはこの子から事情を聞くくらいだけど…
モグモグ…
この子が食べ終わってからでいいか。
――――
「……」
少女はご飯を食べ終え、居心地が悪そうにそわそわし始めた。
「あなた、名前は?」
「…リナ」
お、返事してくれた。
「どこから来たの?」
「…おうち」
おうちということは、元から天涯孤独だった訳じゃなく、家族と暮らしていたってことかな…?こんな小さい子が一人暮らしできるとは考えづらいし。
「どんなおうち?」
「…おっきいおうち」
「今いる私のおうちとあなたのおうち、どっちが大きい?」
「えっと…おなじくらい」
同じくらい…?
「おうちでは誰と暮らしてたの?」
「おかあさまと、おとうさまと、シロ」
「シロって?」
「ワンちゃんのなまえ…」
………
これは思ったより話がややこしそうだ。
「ここまで…というか、私とぶつかったあの場所まで、どうやってきたの?」
「おうちからこわい人たちにばしゃにのせられて、しばらくそのままでいたけど、だんだんこわくなってきてにげてきた…」
「…そっか、教えてくれてありがとう。じゃあ食事も済んだし、今日はもう寝ちゃいなよ。寝室はお客さん用のがあるから。」
「え…」
「ちゃんとあなたの居場所は私が探すから、それまではうちにいていいからね。」
「…ありがとう、おねえさま」
少女はニコッと笑う。出会ってから初めての笑顔だ。
「…うん」
こうして少女…いや、リナは侍女に連れられ、眠りについた。
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