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何かと不穏です
第56話 セレナさんの猛攻
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「ハッ!あんた馬鹿なんじゃないの?エリオットがあんたみたいなやつに手紙なんて書くわけ無いじゃない、この妄想女!」
セレナさんはものすごく見下したような目で見てくる。わあ怖い。
それにしてもセレナさんはどうやったら収まるんだろうか。でも何言っても怒りそうだし、ここは黙ってみよう。
「………」
「何黙ってんの?あ、もしかして泣きそうなの堪えてる?可哀想に、妄想なのがバレちゃったから…」
エリオット様の真意はともかく手紙を貰ったという事実は揺るぎないので、どちらかと言うと妄想しているのはセレナさんの方では?と思ったけど、もちろん口にはしない。
なんにせよ、さっきよりはちょっと落ち着いた気がする。このまま黙っていよう。
「…何とか言いなさいよ!!」
ビリビリッ!!
セレナさんは私から取り上げた手紙を盛大に破り捨ててしまった。どうやら黙りすぎるのも良くなかったらしい。女心って難しいな…
それにしてもせっかく書いた手紙なのに…別に書いた内容覚えてるし、家に帰って書き直せばいいんだけど。
私は捨てられた紙切れを回収してから、セレナさんに問う。
「それで、何か他にご用件はありますか?」
「…っ!!」
セレナさんは腸が煮えくり返っている様子だ。もうこれじゃあ上手くなだめるのは無理そうだな…
「ふざけんじゃないわよ!貴族だからってお高くとまりやがって!」
スタスタ…
バシャッ!!
セレナさんは近くを歩いていた女性から井戸から汲んできたと思われる水入りの桶を取り上げ、思いっきり私にかけた。
「………」
「…フン!あんたにはその格好がお似合いよ!」
セレナさんは実に勝ち誇ったような様子だ。
ふと周囲を見渡すと、住民達が遠巻きにこちらを見てヒソヒソと話をしている。内容は"可哀想"とか"こんなところで喧嘩するなよ"とか"なんでこんなことになってるんだ"とかそんなところだ。
「どう?皆に無様な姿を見られてさぞかし貴族としてのプライドを傷つけられたでしょうね!!」
セレナさんはさらに言葉を続ける。
プライド?プライドねぇ…
「…"プライド"が見てくれだけを考えて威張り散らすことなら、そんなものは鼻から要りませんよ。重要なのはどう見られるかではなく、何を成すかなので。」
私は今まで逸らしていた目線をしっかりとセレナさんに向ける。
「……っ!!何ムキになってんのよ!もういいわ、帰る!」
そう言うと、セレナさんは急ぎ足でどこかに消えてしまった。
「…しっかし随分ビショビショだな…」
――――――
「すみません、色々とお世話になりました。」
「いやいや、いいってことよ!」
セレナさんと会ってからしばらくして、私は近くの宿屋に居させて貰っていた。先程びしょ濡れでいたところにこの宿屋の女性店主が通りかかり、風魔法で乾かせるからと宿屋に迎え入れ、替えの服まで用意してくれたのだ。
「それにしても、面倒なのに目つけられちまったね…」
「もしかして、彼女について何か知っているんですか?」
「まあ噂程度だけどね?店に理不尽なクレーム入れたりとか、男に貢がせたりとか、最近じゃ悪い連中とつるんでるとか色々だよ。」
「そうだったんですか…」
まさか私以外にも態度が悪かったとは。"悪い連中"がマフィアとかだったら嫌だし、もう少し気をつけようかな…
セレナさんはものすごく見下したような目で見てくる。わあ怖い。
それにしてもセレナさんはどうやったら収まるんだろうか。でも何言っても怒りそうだし、ここは黙ってみよう。
「………」
「何黙ってんの?あ、もしかして泣きそうなの堪えてる?可哀想に、妄想なのがバレちゃったから…」
エリオット様の真意はともかく手紙を貰ったという事実は揺るぎないので、どちらかと言うと妄想しているのはセレナさんの方では?と思ったけど、もちろん口にはしない。
なんにせよ、さっきよりはちょっと落ち着いた気がする。このまま黙っていよう。
「…何とか言いなさいよ!!」
ビリビリッ!!
セレナさんは私から取り上げた手紙を盛大に破り捨ててしまった。どうやら黙りすぎるのも良くなかったらしい。女心って難しいな…
それにしてもせっかく書いた手紙なのに…別に書いた内容覚えてるし、家に帰って書き直せばいいんだけど。
私は捨てられた紙切れを回収してから、セレナさんに問う。
「それで、何か他にご用件はありますか?」
「…っ!!」
セレナさんは腸が煮えくり返っている様子だ。もうこれじゃあ上手くなだめるのは無理そうだな…
「ふざけんじゃないわよ!貴族だからってお高くとまりやがって!」
スタスタ…
バシャッ!!
セレナさんは近くを歩いていた女性から井戸から汲んできたと思われる水入りの桶を取り上げ、思いっきり私にかけた。
「………」
「…フン!あんたにはその格好がお似合いよ!」
セレナさんは実に勝ち誇ったような様子だ。
ふと周囲を見渡すと、住民達が遠巻きにこちらを見てヒソヒソと話をしている。内容は"可哀想"とか"こんなところで喧嘩するなよ"とか"なんでこんなことになってるんだ"とかそんなところだ。
「どう?皆に無様な姿を見られてさぞかし貴族としてのプライドを傷つけられたでしょうね!!」
セレナさんはさらに言葉を続ける。
プライド?プライドねぇ…
「…"プライド"が見てくれだけを考えて威張り散らすことなら、そんなものは鼻から要りませんよ。重要なのはどう見られるかではなく、何を成すかなので。」
私は今まで逸らしていた目線をしっかりとセレナさんに向ける。
「……っ!!何ムキになってんのよ!もういいわ、帰る!」
そう言うと、セレナさんは急ぎ足でどこかに消えてしまった。
「…しっかし随分ビショビショだな…」
――――――
「すみません、色々とお世話になりました。」
「いやいや、いいってことよ!」
セレナさんと会ってからしばらくして、私は近くの宿屋に居させて貰っていた。先程びしょ濡れでいたところにこの宿屋の女性店主が通りかかり、風魔法で乾かせるからと宿屋に迎え入れ、替えの服まで用意してくれたのだ。
「それにしても、面倒なのに目つけられちまったね…」
「もしかして、彼女について何か知っているんですか?」
「まあ噂程度だけどね?店に理不尽なクレーム入れたりとか、男に貢がせたりとか、最近じゃ悪い連中とつるんでるとか色々だよ。」
「そうだったんですか…」
まさか私以外にも態度が悪かったとは。"悪い連中"がマフィアとかだったら嫌だし、もう少し気をつけようかな…
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