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何かと不穏です
第50話 エリオット様の変化②
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「そこで何してるんだ?シェリー」
「あ、あはは…」
まあ、気づきますよね…
騎士相手に忍びスキルで挑んだ私がバカだった。
「……聞いてたのか?」
「すみません、盗み聞きするつもりは無かったのですが…」
「…いや、まあそれはいいんだけどよ。……」
あの、声のトーンが良さそうに聞こえないんですが…
とはいえ廊下で堂々とイチャついてたエリオット様も大概なので、お互い様ということにして欲しい。
「そ、それより!さっきの彼女追いかけなくて大丈夫なんですか?かなり怒ってましたけど。」
「あの娘とはもう会わねえからいいんだよ。」
「…それって私のせいですよね?」
「……へ?」
エリオット様は素っ頓狂な声をあげると、みるみる顔が赤くなっていく。ほんとにこの人最近どうしちゃったんだろう。
「…それは、どういう意味で、だ?」
「楽しんでるときに人が来て、気が散ってしまったのでは?」
「…え?あ、いや、そうだけどそうじゃねえっつうか…」
結局どっちなんだろう。
でもそれ以外無くない?私に義理立てするために他の女の子と縁を切ろうとしている訳じゃ無いだろうに。
「その…悪かったな、あんなところ見せちまって…」
エリオット様が突然謝ってくる。
「…?私に謝る必要はないのでは?あくまでエリオット様本人の問題ですし。確かに仕事場で私用を済ますのは避けた方がいいとは思いますけど。」
「そう…そう、だよな。ハハ、何言ってんだ俺…やっぱなんでもねえ!さ、第1騎士団のところに行こうか。」
そう言ったエリオット様は笑っていたけど、その笑顔は出会った頃によく見た、自然さを欠いた作り笑いのようにも見えた。
――――――――
「以上が概要となります。何か質問のある方はいらっしゃいますか?」
それからしばらくして、私は第1騎士団の方々にクラウゼ領に関する説明を行っていた。基本的に私が一方的に話す形式で、エリオット様は部屋の後ろの方で第1騎士団と一緒に話を聞いていた。
第1騎士団は近衛隊で、普段は皇族の警護などが仕事だ。なので今回の仕事は割と特例と言える。
彼らは白い制服に身を包んでいて、なんとも真面目で格式高い印象を受ける。実際第7騎士団が比較的自由な雰囲気なのに対し、第1騎士団はとても規律を重視している。 ちなみに第7騎士団の制服は黒色なので、そこも対照的だ。
「…特に無いようでしたら、ひとまずここでの説明は終わりにします。今後新たな疑問点がでた場合は、エリオット副団長伝いにその旨をお伝えください。」
説明会はつつがなく終わり、予定した時間よりも早く終わった。
第1騎士団の方々はぞろぞろと部屋から出ていく。でも、1人だけ出ていかない人がいた。
「本日は、わざわざ私たちの為に御足労頂き、ありがとうございます。」
その人は私の方を向き、頭を下げながら挨拶する。
「いえ、私もお役に立てたようで何よりです。ところでお残りになったということは、先程聞き忘れたことでもおありでしたか?」
「ああいや、そうではありません。ただ少し、シェルシェーレ嬢にご挨拶をと。」
その騎士さんは満面の笑みでこちらに近づいてきた。
私に挨拶?なんで?
―――――― 続く
「あ、あはは…」
まあ、気づきますよね…
騎士相手に忍びスキルで挑んだ私がバカだった。
「……聞いてたのか?」
「すみません、盗み聞きするつもりは無かったのですが…」
「…いや、まあそれはいいんだけどよ。……」
あの、声のトーンが良さそうに聞こえないんですが…
とはいえ廊下で堂々とイチャついてたエリオット様も大概なので、お互い様ということにして欲しい。
「そ、それより!さっきの彼女追いかけなくて大丈夫なんですか?かなり怒ってましたけど。」
「あの娘とはもう会わねえからいいんだよ。」
「…それって私のせいですよね?」
「……へ?」
エリオット様は素っ頓狂な声をあげると、みるみる顔が赤くなっていく。ほんとにこの人最近どうしちゃったんだろう。
「…それは、どういう意味で、だ?」
「楽しんでるときに人が来て、気が散ってしまったのでは?」
「…え?あ、いや、そうだけどそうじゃねえっつうか…」
結局どっちなんだろう。
でもそれ以外無くない?私に義理立てするために他の女の子と縁を切ろうとしている訳じゃ無いだろうに。
「その…悪かったな、あんなところ見せちまって…」
エリオット様が突然謝ってくる。
「…?私に謝る必要はないのでは?あくまでエリオット様本人の問題ですし。確かに仕事場で私用を済ますのは避けた方がいいとは思いますけど。」
「そう…そう、だよな。ハハ、何言ってんだ俺…やっぱなんでもねえ!さ、第1騎士団のところに行こうか。」
そう言ったエリオット様は笑っていたけど、その笑顔は出会った頃によく見た、自然さを欠いた作り笑いのようにも見えた。
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「以上が概要となります。何か質問のある方はいらっしゃいますか?」
それからしばらくして、私は第1騎士団の方々にクラウゼ領に関する説明を行っていた。基本的に私が一方的に話す形式で、エリオット様は部屋の後ろの方で第1騎士団と一緒に話を聞いていた。
第1騎士団は近衛隊で、普段は皇族の警護などが仕事だ。なので今回の仕事は割と特例と言える。
彼らは白い制服に身を包んでいて、なんとも真面目で格式高い印象を受ける。実際第7騎士団が比較的自由な雰囲気なのに対し、第1騎士団はとても規律を重視している。 ちなみに第7騎士団の制服は黒色なので、そこも対照的だ。
「…特に無いようでしたら、ひとまずここでの説明は終わりにします。今後新たな疑問点がでた場合は、エリオット副団長伝いにその旨をお伝えください。」
説明会はつつがなく終わり、予定した時間よりも早く終わった。
第1騎士団の方々はぞろぞろと部屋から出ていく。でも、1人だけ出ていかない人がいた。
「本日は、わざわざ私たちの為に御足労頂き、ありがとうございます。」
その人は私の方を向き、頭を下げながら挨拶する。
「いえ、私もお役に立てたようで何よりです。ところでお残りになったということは、先程聞き忘れたことでもおありでしたか?」
「ああいや、そうではありません。ただ少し、シェルシェーレ嬢にご挨拶をと。」
その騎士さんは満面の笑みでこちらに近づいてきた。
私に挨拶?なんで?
―――――― 続く
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