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研究員見習いになれました
第29話 他の課のお手伝い
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「失礼します。」
「ん?ああジョセフくん、待ってたわ!」
私はジョセフさんにつれられて、人間魔法課の方たちの手伝いに来ていた。ちなみにエリオット様は騎士団に戻るとのことなので、そのまま解散して今はいない。
「あら、そっちの娘はどなた?」
最初に迎え入れてくれた、薄紫の髪に濃い紫色の瞳の女性に聞かれる。研究所で女性は初めて見た…!
「昨日から捜査課に配属になったシェルシェーレ・シュバルツです、よろしくお願いします!」
「ああ、あなたが例の面白い新米さんね!話はダグラスさんから聞いてるわ。」
面白いって…一体何を聞いたんだろう。
「私は捜査課の課長のエリーザ・アインホルンよ、よろしくね!」
この人が課長さんか!
「はい、よろしくお願いします!」
「それで、エリーザさん。私たちは何をすればよろしいですか?」
ジョセフさんが質問する。
「あ、そうだったわね。とりあえずそこの死にそうになってる人達に言われた通りに動いてくれるかしら?」
エリーザさんの目線を追うと、人間魔法課の所員と思われる人達が、憔悴しきった様子で机に向かっていた。
確かにこれは猫の手も借りたい状態だろうな…
「はい、わかりました!」
――――――
「終わっったー!!」
1人が大声をあげた。日もすっかり沈んだ頃、ようやく仕事が終わったのだ。私とジョセフさんもその間ずっとお手伝いをしていた。
やたらと忙しいのは溜め込んでいた予算申請の書類の提出期限が迫っているかららしく、お手伝いの内容も実験の補佐というより書類の整理や書類の数字があっているかの確認、雑用などが多かった。
少し拍子抜けはしたけど、こういう頭をあまり使わない仕事も割と好きなので問題ない。
「いやいや、皆さんありがとうございました!」
人間魔法課の方が私とジョセフさん、エリーザさんに向かって言う。
「困ったときはお互いさまよ。」
「また何かあれば呼んでください。」
「楽しかったので良かったです!」
「そう言っていただけると嬉しいです。それにしてもシェルシェーレさん、随分と経理の仕事に慣れているようでしたが…」
ん?別に遅くも無いと思うけど、言うほど早くもなかったような…?
私が首を傾げると、その人はそのまま言葉を続ける。
「…その、女性でこういうことができる方って、エリーザさん以外にあまり見なかったもので…」
あーそういう。確かにこの手の仕事は"男の仕事"だもんな…
「時々父の仕事を手伝っているので、そのときに覚えたんです。」
「なるほど、そうでしたか。」
「なあに?女がお金の管理しちゃダメって言うの?」
ここへエリーザさんが口を挟む。
「いえいえ、決してそういう訳では!ただ普通いないじゃないですか、女性でこういう方って。」
「あら、私たちは普通じゃないって?」
「あ、いや、そうではなく…」
エリーザさんに詰められてその人は口ごもってしまった。
社交界に比べると教養のある女性への偏見が少ないこの研究所でも、多少の違和感を感じる人は一定数いるみたいだな。
…まあそんなことはどうでも良くて、仕事が終わったなら研究室の見学でもさせて貰えないかな、などと考えている私であった。
「ん?ああジョセフくん、待ってたわ!」
私はジョセフさんにつれられて、人間魔法課の方たちの手伝いに来ていた。ちなみにエリオット様は騎士団に戻るとのことなので、そのまま解散して今はいない。
「あら、そっちの娘はどなた?」
最初に迎え入れてくれた、薄紫の髪に濃い紫色の瞳の女性に聞かれる。研究所で女性は初めて見た…!
「昨日から捜査課に配属になったシェルシェーレ・シュバルツです、よろしくお願いします!」
「ああ、あなたが例の面白い新米さんね!話はダグラスさんから聞いてるわ。」
面白いって…一体何を聞いたんだろう。
「私は捜査課の課長のエリーザ・アインホルンよ、よろしくね!」
この人が課長さんか!
「はい、よろしくお願いします!」
「それで、エリーザさん。私たちは何をすればよろしいですか?」
ジョセフさんが質問する。
「あ、そうだったわね。とりあえずそこの死にそうになってる人達に言われた通りに動いてくれるかしら?」
エリーザさんの目線を追うと、人間魔法課の所員と思われる人達が、憔悴しきった様子で机に向かっていた。
確かにこれは猫の手も借りたい状態だろうな…
「はい、わかりました!」
――――――
「終わっったー!!」
1人が大声をあげた。日もすっかり沈んだ頃、ようやく仕事が終わったのだ。私とジョセフさんもその間ずっとお手伝いをしていた。
やたらと忙しいのは溜め込んでいた予算申請の書類の提出期限が迫っているかららしく、お手伝いの内容も実験の補佐というより書類の整理や書類の数字があっているかの確認、雑用などが多かった。
少し拍子抜けはしたけど、こういう頭をあまり使わない仕事も割と好きなので問題ない。
「いやいや、皆さんありがとうございました!」
人間魔法課の方が私とジョセフさん、エリーザさんに向かって言う。
「困ったときはお互いさまよ。」
「また何かあれば呼んでください。」
「楽しかったので良かったです!」
「そう言っていただけると嬉しいです。それにしてもシェルシェーレさん、随分と経理の仕事に慣れているようでしたが…」
ん?別に遅くも無いと思うけど、言うほど早くもなかったような…?
私が首を傾げると、その人はそのまま言葉を続ける。
「…その、女性でこういうことができる方って、エリーザさん以外にあまり見なかったもので…」
あーそういう。確かにこの手の仕事は"男の仕事"だもんな…
「時々父の仕事を手伝っているので、そのときに覚えたんです。」
「なるほど、そうでしたか。」
「なあに?女がお金の管理しちゃダメって言うの?」
ここへエリーザさんが口を挟む。
「いえいえ、決してそういう訳では!ただ普通いないじゃないですか、女性でこういう方って。」
「あら、私たちは普通じゃないって?」
「あ、いや、そうではなく…」
エリーザさんに詰められてその人は口ごもってしまった。
社交界に比べると教養のある女性への偏見が少ないこの研究所でも、多少の違和感を感じる人は一定数いるみたいだな。
…まあそんなことはどうでも良くて、仕事が終わったなら研究室の見学でもさせて貰えないかな、などと考えている私であった。
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