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しおりを挟む目覚めたら、もう日は高くなっていた。時計を見ると、もう10時だった。今の時間を知っても、何時頃に寝たのかわからないので、結局どのくらい寝たのかはわからないけれど、少し頭はスッキリしていた。
蓮は居なかった。蓮が使った布団は丁寧に畳まれている。もしかしたら、昨日のことは全て夢だったのかと思えてしまうほどに現実味がない。
LIN……
LINが鳴った。見ると蓮からだった。これも何か不思議な感じだ。こっちの私が持っていたスマホは、どうなっているのだろう。何故私に蓮が連絡してこれるのか。
どうせ私の頭では考えてもわからない。考えるのをやめて、LINアプリを開いた。
(起きてるかな?)と文字が入っている。
(今起きたよ。)と返す。
(瑠奏を迎えに向かっている。そのままそこへ連れて行っても平気?)
(うん。着替えておくね。)
(わかった。お腹空いてるでしょ。何か買っていくから。)
(ありがとう。待ってる。)
待ってる、なんて、何か恋人みたい。今から瑠奏と気の重い話をするというのに、不謹慎にも、ウキウキして幸せな気分になった。蓮と私は両想い。そういえば、キスもしたんだった。ニヤける顔をどうにか抑えようとするも、勝手に緩んでしまう表情筋。
「まあ、今は誰も居ないからいっか。」
独り言を言って、着替える。そういえば、この服、もう2日目だ。明日の服はどうしよう。なんて、こんなことを考える余裕があるなら、私はきっと大丈夫だ。
布団を畳んでテーブルを出した。座布団が二つしかない。少し考えて、瑠奏には座布団を使ってもらわないと、と、あっち側に2枚敷いた。そんなことをしていたら、扉をノックする音と、蓮の声が聞こえた。
「大丈夫?入っていい?」
私は一度だけ大きく深呼吸をして、
「良いよ。」
と、答えた。
蓮が入ってきて、その後ろから、瑠奏が入ってくる。たった1日しか経っていないのに、ずいぶん久しぶりに見るような気がする、私の大切な大親友の顔がそこにあった。
瑠奏は、こぼれ落ちそうなくらい目を見開いて、口も開けている。全部開いてるみたいに見える。
私の時にそうしたように、蓮が瑠奏に言う。
「落ち着いて、叫ばないでね。とりあえず座って落ち着いて。」
私もそれに倣う。
「こっちに来て座布団使って。瑠奏……ちゃん。」
「はぁぁああ??」
盛大に叫んだ瑠奏……ちゃん。
「どういうこと!?生きてたの??」
——ま、そうなるよね。
なんとか宥めて、事と次第を説明する。
私はどうやらパラレルワールドから来てしまったこと、私の世界では蓮の方が死んでいること。帰り方がわかるまでどうしようと思っていたけど、蓮と心が通じたことをキッカケに、このまま帰れないなら、こっちの陽葵として生きていきたいと思っていることを話した。
「そんなバカなこと起こるはずがないって言いたいけど、私、昨日、陽葵の死に顔見ちゃったし、あなたは陽葵にしか見えないし、双子?とかで、私をからかってるワケじゃ……ううん。陽葵は一人っ子のはず。従兄妹とか?」
瑠奏はかなり混乱しているようだ。そりゃするよね。それでも、瑠奏にはわかって欲しい。
「本当に、別の世界から来ちゃったみたいなんだ。親友の瑠奏には信じてほしい。」
「親友って、私は陽葵の親友なのであって、あなたの親友では……」
「あ、そうだね。でも私も陽葵なんだよ瑠奏ちゃん。蓮くんと瑠奏ちゃんがわかってくれないと、私、ここで独りぼっちになっちゃう。お願い助けて。」
瑠奏は不安そうに蓮くんの方を見た。
それを受けて、蓮くんは私の隣に来て、
「陽葵ちゃんは、陽葵とは別人だけど、でも、世界は違っても、陽葵と同じ人だと思うんだ。話せば話すほど、そう思う。あっちの僕も、ここに居る僕も、陽葵が好きなんだ。だから、僕は陽葵ちゃんを助けるよ。」
「陽葵と陽葵ちゃんは別人で同じ人?なんか混乱する……。え?好き?」
「うん。僕は陽葵が好きだったんだ。同じくらい陽葵ちゃんが好きだよ。」
「ごめん。瑠奏、ちゃん。私も、蓮が好きで、蓮くんのことを同じように好きだと思うの。」
「……。」
瑠奏は黙って、俯いている。
今、いろんなことを考えているのだと思う。私達はじっと瑠奏の頭の整理が終わるのを待った。
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