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しおりを挟む「これから、どうしたら良いんだろう。」
ぼそっと呟いてしまう。
やっぱり気になるのはそのこと。たかが中学生の私が、独りで生きていけるとは思えない。戻りかたを探すと言っても、それまで何処でどうやって生活すれば良いんだろう。
「瑠奏に話したら、協力してくれないかな。」
私の小さい頃からの大親友。瑠奏ならきっと、私を理解して助けてくれるんじゃないかと思った。
「瑠奏には……どうかな。心の負担が大きい気がする。通夜でも泣き過ぎて気失っちゃったし。」
「私、生きてるのに。変な気分。」
「皆泣いてたよ。葬式は日曜だって。」
「私、蓮のお通夜も出ないままこっちに来ちゃった。」
「そっちの僕が、陽葵ちゃんに見られたくなくてこっちに送ったのかもね。」
「なにそれ。」
「好きな子に死に顔を見られるとか、想像しただけで吐きそう。」
「それでこんな目に会わせるのも酷くない?」
「僕に陽葵をもう一度会わせてくれたのかも。」
「自分のことばっかりじゃん。」
「僕達にやり直す機会をくれたのかも。」
「やり直すったって、こっちの家に行けないんじゃ、どうしようも……」
「陽葵ちゃんが、覚悟を決めるなら、何とでもなるよ。」
「え?」
「この世界に残って陽葵として生きる覚悟があるなら、お父さんとお母さん、瑠奏にだって、きちんと話せば良い。」
混乱はあるだろうけど、陽葵であることは間違いないんだから受け入れてくれるはず。まだお通夜しかしていないのだから、生きていたとすることだってできるかもしれない。それが無理でも、戸籍さえどうにかできれば、遠くに引っ越すとか、方法は必ず見つかる。と蓮くんは言う。
「陽葵ちゃんが残ってくれるなら、僕は全力でサポートする。遠くに行くしかないなら、家出してでも、僕も一緒に行くよ。」
「そんな簡単に決めて良いことじゃないよ。」
「もう後悔したくないから。陽葵ちゃんは陽葵とは別人だと頭ではわかってるけど、でも、やっぱり僕は陽葵が好きだ。身代わりとかじゃないよ。陽葵ちゃんは陽葵と同一人物だと思う。陽葵ちゃんは、僕がそっちの蓮と別人に思える?」
「思え、ない。」
「でしょ。僕は陽葵ちゃんと離れたくないって本気で思ってる。陽葵ちゃんは?」
「私、も。蓮にもう一度会えたような気がしてる。離れたくない。」
そうだ。この人は蓮なんだ。きっと神様が私達をもう一度会わせてくれたんだ。
「私達、両想い、だね。」
「うん。」
いつのまにか、私達は体を起こしていて、2人の間に距離がなくなっていた。ぴったりくっついて、お互いの体に手を回していた。
恋する気持ちに火がついて睡眠不足も手伝って、盛り上がっていた。蓮が居てくれるなら、この世界で生きていける気がした。
「私、蓮の側に、ここに居たい。」
見つめあって、唇を合わせた。
唇を合わせるだけの、拙いキスだったけど、私達には心が通じた証として、十分だった。
「やっと陽葵を捕まえた。」
そう言ってくれる蓮を、心の底から愛してる、と、そう思った。
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