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8 森は楽園

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妻であった娘は男の住居に招き入れられた。


かては森の恵みを」
「水は泉を」
「着物は森の綿を紡げば良い」
「ただし、この赤い実だけは口にしてはならない。」


「ありがとう。悪魔か天使のお方」
「私は魔術師だ。」


何年も居ると、森のことがわかってくる。

時間が止まっているかのような、清浄な森。
鬱蒼と暗かった森は、木漏れ日が美しく入る場所があり、魔物は綺麗な獣だった。泉はいつも透明な水を湛え、森の恵みは尽きることなく実り続ける。

時折、森に足を踏み入れる者が現れ、魔術師は、いつか私にしたように、問いと取り引きを持ちかける。

引き返すか、命を取り引きして楽になるか、森を抜ける者は、1人も居ない。

「命を使わずに、抜けたのは、お前だけだ。」
「では、元夫は、」
「いずれ生まれるはずの、妻の子を差し出した。」

ああそうなのか。
もう顔も思い出せない元夫。

幾年の月日が経った頃。
またひとり、森に踏み入る男、有り。


私の元夫だと、魔術師は言った。

「取り引きを見ていても良い」



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