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しおりを挟む「わかりました。それで結構です。」
レイルから、結婚の約束は無かったことにしてほしいと言われた。
もちろん、理由を聞いた。
何だか、どうでも良くなった。
彼は、レイルは、私と婚約するのが恐ろしいと言った。
ウィリアム殿下に気に入られる私を望むことが、陛下の怒りを買うかもしれないことが恐ろしいと。そう言ったのだ。
元より、1人で生きていこうと思っていたのだから、問題はない。ただ、恋がひとつ消えただけだ。
そうよ。口約束の婚約だもの。こういうこともあるわ。大したことじゃない。
何事もなく、明日からも過ごしていける。シャーロット様に付き添い、ウィリアム殿下と口喧嘩を楽しみ、日々の言葉遊びを躱すだけ。
そうして、心を落ち着かせようとしていたのに、ウィリアムが現れた。
「オリヴィア!聞いたよ。俺……ごめん。」
「何がです?ウィリアム殿下のお気にされることではありません。」
「でも、俺のせいで、その……」
「どうでも良いことです。」
「どうでも良くはないだろう!その程度の気持ちだったのか?」
「貴方には関係がないと、申し上げているんです。」
「そんな言い方!心配してきてやったのに!」
「そうですか。ご心配をおかけ致しました。お気持ち、有り難く頂戴いたします。大丈夫ですので、どうぞお引き取りください。」
「そうじゃなくて!……もし、もしも、お前が頷いてくれたら、俺、伯父に、陛下に言って、お前を召し上げようと思ってる。」
「何をバカなことを仰ってるんですか。そんな暇があるなら、シャーロット様のことをお考えになっては?」
「いや、だから、俺は、お前のことが、」
「言わないで!
続きを言ったら嫌いになります!」
「でも、俺のせいで、だから、責任を、」
「そうです!貴方のせいです!」
「……!?」
「あなたになんか、私の気持ちなど、わかるはずもありません。謝られたら許さなくてはならなくなります。だから、謝らないで。何も言わないで。」
我慢してたのに、涙が溢れる。
大したことはないと思い込もうとしていたのに、台無しにされた。
「あの方は、私を望むことが恐ろしいと、そう言ったのです!貴方が私を気に入ってるから、だから、そのことで陛下の怒りを買うのが恐ろしいと!あの方は、私を望むお心よりも、あなた達の怒りを恐れる気持ちの方が大きかったのだわ!あんな方を、兄とも恋人とも思って慕っていたなんて……!」
泣きじゃくるオリヴィアに、ウィリアムが近寄ろうとすると、
「近づかないで。貴方にはもう、会いたくありません。」
しばらくして、オリヴィアは辞表を提出した。
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