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5 ウィリアム視点
しおりを挟む王である伯父は、世の中では、大変厳しい方だと言われている。横暴な面があるようだ。貴族からの反発もそこそこあるらしいが、身内をとても大切される方で、ウィリアムのことも大変可愛がってくださる。そのため、ウィリアムからすれば、優しい伯父でしかなかった。
父はもしかしたら王女を頂くことになるかもしれないから、時々、ご機嫌伺いに行くようにと言うし、伯父もまた、そうすることを喜んだ。
そうして、月にに何度か王女の元へ通っていたのだが、いつの間にか入れ替わっていた、新しい王女の付き人に興味を持った。
きちんとした身なりをしているし、所作も問題はない。王女についているくらいなので、それなりの家の人間であろうとは思うが、なのに、何処か今まで見てきた令嬢達とは違う印象を受ける。控えめに言って、田舎くさい。
歳はウィリアムよりひとつ上、年上とは思えない、幼さが残るその口からは、キツい言動しか出てこないが、ある日気付いた。オリヴィアは田舎くさいのではなく、素朴なのだ。高位貴族令嬢にはない健康そうな可愛らしさがある。言動と可愛らしさのアンバランスも、また良い。
憎まれ口を言い合うやり取りが楽しくて、義務でしかなかった、王女へのご機嫌伺いが、格段に楽しみになった。
気づけば、王女のお茶の時間に合わせて、頻繁に訪れるようになっていた。
彼女のことを気に入っている、のだと思う。ふと見かける彼女が男に声を掛けられていると、微妙に苛立ちを覚える。
「何だあれ。」
と、呟くと、ウィリアムの付き人を務めているエリアスが——(ウィリアムの母の甥で幼少の頃から側にいる)——が、答えてくれる。
「ああ、オリヴィアは美味しいからな。」
「美味しいって何だよ。」
「そこそこ美人だろ。学院で教授の推薦状を引っ提げて王宮に来たって話だし、つまり優秀。この時期に王女の付き人になるってことは、何処の派閥にも属していない。美人で才女でしがらみもない、しかも妙齢の女性ともなれば、そりゃ、色んな意味でモテるだろうさ。」
「なんか面白くない。」
「おまっ!マジかよー。やめてくれよ。王が烈火の如く怒り狂うぞ。」
「なんで?」
「なんでってそりゃお前……。王のお気に入りで、王女といずれってお考えのようなのに、他の女に惚れたなんて知ったら、」
「そんなんじゃない。」
「本当か?それならまあ良いけど。」
「それに、伯父は、もしも誰かに惚れても怒らないよ。好いた女が居たら側に置いてやるから言えって言ってたし。」
「え、そうなの?それなら良いのか?いや、でもそれって、側女とかそういう……?」
エリアスは何か悩んでいるようだが、放置した。
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