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番外編
オスカーの誤算 1
しおりを挟む手足の拘束に目隠しをされたまま、ずいぶん長く馬車に揺られていた。時々、休憩を挟み、何日経っただろうか。
馬車を降ろされ、何人もの手で、押し出されるように投げ出されたと思ったら、全ての拘束を解かれた。久しぶりの太陽の光に目が眩んでよく見えない。
「俺たちの仕事はここまでだ。達者でやりな。」
声から数人の男だとわかる。ドサドサッと何かを降ろす音と共に、男達は立ち去った。
目が慣れてくると、まず、近くに、多少の荷物が放り出されているのが見えた。それから、高いフェンス。棘がたくさんついていて、登れそうにない。自分が入って来ただろう扉には頑丈そうな鍵がついている。その向こうには、細い道が続いていた。その道を通っで此処へ来たのだとわかる。
「チッ」と舌打ちしてから、ぐるっと周りを見回すと、フェンスの外は森のようだ。森の中にフェンスで囲った範囲だけが整備されているようだ。整備と言っても、木がないだけで、足元は剥き出しの地面だった。
遠くに建物が見える。あそこが、サイラーの言っていた小屋だろう。
こうしていても仕方がない。森は深く見えるし、誰もいないのだから、声を出すだけ体力の無駄だと、持てるだけの荷物の袋を持って、ノロノロと小屋に向かった。
周りに何もないからか、見えているよりも遠く感じる。歩きながら、これは、荷物を運びいれるのがとんでもなく大変だと気付き、先に袋の中を確認して、食料などを選んで持ってくるんだったと思ったが、既に半分ほど進んでしまっているので、やはり先に小屋に行くことにした。
辿り着いた小屋には鍵はかかっておらず、扉を開けるとギィと音を立てて開いた。
中も酷いものだった。多少の家具があるように見えるが、当然、灯りはついておらず、ずいぶんと乱雑に何かが置かれているようだ。
残りの荷物を持ってくるべきだ。と思ったが、長い間、馬車に揺られ、ここまで歩いた疲れで、「そんなことより、まず食べて休みたい」と思ったオスカーは、かろうじて持って来た袋の中を確認すると、残念ながら、洗面道具やタオルなどが入っているだけだった。
「チッ」と舌打ちして、取りに行こうかどうか考えてから、もう歩きたくない、また後でいいかと、その辺りの大きめの台のような物の上に寝転んで、寝てしまった。
夢をみたようだ。
リリアとサイラーが笑い合っている。
目覚めた時には、体が痛くて仕方がなかった。人生の中で、こんな硬い所で寝たことがない。
外は薄暗く、今が朝なのか夜なのかもわからない。とにかく、食べ物を取ってこなくては。と、再び歩いてフェンスの前までくる。
今度は中身を確かめて、パンやチーズの入った袋を見つけると、それを持って小屋へ戻った。
さあ食べるか、と、思ったが、どうやって食べたら良いのか、皆目見当がつかない。めんどくさくなって、そのまま、それぞれを齧った。腹は満たされたが、今度は飲み物がない。
しょうがないと、再び荷物を取りに行き、持ち帰らずにその場で飲んだ。
日がだんだん高くなるのを見て、どうやら、朝のようだ。と認識して、仕方がないので、何度も往復して荷物を運び入れた。
夢をみた。
サイラーが何か言っている。
「3人目は女の子が良いな。」
リリアが何か言っている。
「いやね。どちらでも
元気に生まれてくれたら
良いわ。」
——早く出ておいで。
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