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侯爵家にて
しおりを挟む王太子リチャードは侯爵家の婚約式に訪問していた。
あれからやっと作らせた愛するマリアを着飾る服飾品に装飾品。あの忌々しい隣国の皇女に従うのは業腹だが、せっかく美しく飾り付けたマリアを見せびらかさなくては意味がないだろう。侯爵の婚約式パーティに2人で出席する。
「パーティは久しぶりで嬉しいわ」
マリアも喜んでいるようだから良しとするか。私達の秀麗さを囁きあっているのだろう。そこかしこでこちらをチラ見しながらヒソヒソと噂話をしている様子が優越感をくすぐる。
主催者の侯爵夫妻に挨拶をしてから、次代の侯爵夫妻にお祝いを述べる。この2人のための婚約式なので、当然この2人が主役なのだが、私達が来たからには主役を座を奪ってしまっている。申し訳ないがマリアに勝る美しい女性は居ないのだから仕方ない。
「これは王太子殿。どうもご無沙汰の気もいたしますが、今日も麗しゅうございますな。」
「ああ。久しぶりだな。これでも控えめにしてきたつもりなのだが、どうも主役を食ってしまうようで申し訳ないと思っていたところだ」
謙遜に見せかけた自慢をする。
これは誰だったかな?まあわからなくとも大して問題はないだろう。次々と挨拶に来る貴族達の全てを覚えているのも大変だから、その場その場で臨機応変に対応する。この機転こそ頭の良さだ。
「まことに。お二人はとてもお美しい」
「居てくださるだけで格調が上がりますな」
「見ているだけで気持ちが華やかになりますよ。」
美麗賛辞を浴びて自尊心が満たされる。
「これでも控えめな装飾にしたつもりだったが、マリアが美しすぎて隠しきれないようだな。」
「まあリチャードったら。恥ずかしいわ」
照れるマリアも可愛らしい。
装飾が控えめと言うのは嘘ではない。あの隣国の皇女がケチケチして金を出さないせいで、ドレスも飾りも控えた物しか買えなかったのだ。
本当に忌々しい。私が即位したら、隣国からの援助を継続させるためにあの女は飼い殺しにしてやる。
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