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38シルフィでは( 2 )セオドア視点

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 「もうこんな生活耐えられないわ!」
 リリィはセオドアの部屋でヒステリックに喚き散らしている。最近リリィの可愛さが翳っているように思うのは気のせいか?いや、私も肌の調子が良くない。肌どころか体の調子が悪い。空気が澱んだ気がするのでそのせいかもしれない。お互い様か。

 「お金がないのよ。何も買えないわ。食事なんて、昨日は豆のスープと硬いパンだけだったのよ!しかも何だか美味しくないの。」
 
 それは、王宮も同じだ。食事のレベルはますます下がった。肉や魚など滅多に出なくなった。サラダにソースがかかっていない日もある。

 「ねえセオ。早く婚約しましょうよ。」
 「何?リリィは私の婚約者だろう?」
 「婚約の契約をしていないんですって。正式な婚約者じゃないから、婚約者費用っていうのをくれないのよ。」
 「そうだったか……?」

 そういえばそうだった気もする。執務が増え忙しくなったことで、そんなことにも気が回っていなかったのか。だからリリィの教育も始まらなかったんだな。

 「良いだろう。話を通しておく。」
 とはいうものの、こういう時にどこへ話をすれば良いのかわからない。いつも指示さえ出せば、誰かがしてくれていたのだ。

 「私がこんな雑事をしなくてはならないとは。」
 
 まあ、管理部へ行けば何でもわかるだろう。早速、リリィを帰して管理部へ行く。相変わらず殺伐としている。書類や文具などが散らばっており、整理整頓という秩序が出張でもしているのか。忙しなく動いている者、机に向かって集中している者、何人も居るのに、誰も私の応対をしない。

 「おい!」
 「え、ああ、殿下、どうしましたか。」
 大声をかけて、やっと1人が反応を示したが、近くに寄ってくるなどの行動は取らない。不敬か!イライラしながら、
 「婚約の手続きをしたい。」
 と告げた。

 「えっと、どなたの婚約ですか?」
 「私が聞きにきているのだから、私のに決まっているだろう。」
 「はあ、そうですか。そんなことをここで言われても、わかりません。」
 「わからないって何だ。」
 「使用人の家族構成などは、こちらで簡単に把握しておりますが、ほら、労働場所なんかを調整しなくちゃいけませんから。しかし王族のことなど、私達に何もできません。王様に尋ねてはいかがです?」
 「なるほど、それもそうだな。」
 踵を返して行こうとすると、
 「殿下、これから、管轄の違うことで来るのは控えてくださいませんか。」
 と、言われた。

 「何?」
 「見ての通り、忙しいのです。何日も帰れない者も居ります。この殿下と話している時間が惜しいのです。わからないことは侍従の方にお聞きになっては。」
 「居ないから私自ら来ているのだ!」
 「はあ、そうでしたか。それでもですね。管轄の分類は習っておられるでしょう。早見表もあるはずです。皆、自分の仕事をするのに精一杯なのです。私達が仕事をしないと、殿下の今夜の食事も手配されなくなりますよ。それは困るでしょう?」
 「私を脅すのか?」
 「とんでもありません。汲んでくださいと申し上げているのです。」

 ふと相手の後ろを見ると、何人かが虚な、それでいて非難するような目でこちらを見ていた。何の仕事を持ってきたんだとでも責めているようだ。
 
 何も言えずに、そのまま方向を変えて王の執務室へ向かった。

 何なんだ。近頃の王宮はおかしい。ほんの少し前まではこうではなかった。皆、心にも体にも余裕を持っていられたはずだ。どうしてこうなった。

 重厚なドアに守られた王の執務室の前には誰も居なかった。以前はドアを守る衛兵が居たはずだが。

 仕方なく自分で開けて入る。
 王の執務室は2段階になっている。前部屋と奥部屋に分かれており、前部屋ではオウの執務を助ける者が働いている。流石にここには人が居るが、ここでもセオドアはすぐに認識されなかった。

 「父上にお会いしたい!」
 と叫ぶように声をかけてやっと顔を向けてもらえた。
 「ああ殿下。入り口にベル紐があったでしょう。鳴してくださいよ。」
 「そ、そうか。気づかなかった。これから気を付ける。父上に話がある。」
 「そうですか。」
 リンリンと室長らしい人物がベルを鳴らすと、リンリンと奥から返答があり、どうぞ、と言われたので部屋に入った。ここでもドアを自分で開けるのか。人手不足の深刻さを実感した。
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