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12 神聖国に入る
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大樹ユグドラシルを通って出られる場所には誓約がある。大樹から株分けしたトネリコの木のある場所。アシュリー家の敷地内にあるトネリコの木も、株分けした木ということだ。
この世界の各地に株分けされているが、場所はあまり多くない。株分け自体は数多く為されたが、根付かないのだと習った。
聖力を注ぎ続ける必要があり、その聖力を持つ聖人が前述の理由等でいなくなってしまうから、だと推測できる。
そこへいくと、神聖国にはトネリコの木は群生しているそうなので、行こうと思えば、いつでも行ける。
開いた道を通って、直通で神聖国に入った。
明るい。午前中の光のようだ。ということはやはり牢に入れられてから一晩が経っている。
土地勘がないので、神聖国内の中心に近く、でも近すぎない扉を選んだ。……つもりだったが、出た場所には神官達がたくさん居り、不審者として、その場で拘束されてしまった。
「何者だ!?」
「突然現れたぞ!」
「捕えろ!」
本来、神聖国に入ろうと思うと、外から手続きをして身元調査など諸々の調査をしてから、やっと許可が出され、着いてからも身体、精神検査などを受けてから入国となり、膨大な時間がかかる。
それがいきなり、ど真ん中に見知らぬ娘が現れたのだ。それは不審者として扱われても当然だろう。
わかってはいる。だが今、この時に限っては、昨日捕らえられ、牢に入れられた記憶がまだ生々しいメラニアとっては、恐怖心が勝り取り乱してしまう。
「やめて、離して!」
全力で抗うも、数人がかりで捕まえて連行しようとする神官達に勝てるはずもない。
ただ、恐怖で叫んだ。
「いやっ!」
懐から暖かい温度を感じたと思ったら、眩い光が発せられ、辺りを眩ませた。
そこに居た人の全員が動きを止め絶句する。
全員が狐に包まれたような顔をしてメラニアを遠巻きにした。
「これは……」
「聖なる木の光では?」
「まさか……」
「大神官でなければこんなこと」
「聖人なのか?」
さっきまで拘束しようと掴まれていた体を急に放り出され、地面に這いつくばってるメラニアは、ひそひそと噂され、視線に晒され、居た堪れなくなるが、周囲に人が集っているので、この場から逃げられる気もしない。
怖くて心細くて、ただ涙するメラニアは、ここに来たことを後悔しかけていた。何もここに来なくても、他のただの村などに出て、一人旅をしてもよかったのではないか。嫌な扱いから逃げて来た先でもこのような扱いを受けるのなら、ここにきた意味はない。
どうしたら良いのかわからずに、ただその場で蹲って泣くだけのメラニアに、ひとりの神官らしいローブを着た若い神官が近寄ってきた。
そして
「君は誰だ?」
と聞いてきた。
メラニアは泣きながら、
「メラニア、私は、メラニア=アシュリー、です。ここを、頼るように言われて、来ました。」
嗚咽をあげながら、そう告げる。
その神官は
「アシュリー?まさか、シルフィのアシュリー?」
と、驚きの眼差しでメラニアを見つめた。
この世界の各地に株分けされているが、場所はあまり多くない。株分け自体は数多く為されたが、根付かないのだと習った。
聖力を注ぎ続ける必要があり、その聖力を持つ聖人が前述の理由等でいなくなってしまうから、だと推測できる。
そこへいくと、神聖国にはトネリコの木は群生しているそうなので、行こうと思えば、いつでも行ける。
開いた道を通って、直通で神聖国に入った。
明るい。午前中の光のようだ。ということはやはり牢に入れられてから一晩が経っている。
土地勘がないので、神聖国内の中心に近く、でも近すぎない扉を選んだ。……つもりだったが、出た場所には神官達がたくさん居り、不審者として、その場で拘束されてしまった。
「何者だ!?」
「突然現れたぞ!」
「捕えろ!」
本来、神聖国に入ろうと思うと、外から手続きをして身元調査など諸々の調査をしてから、やっと許可が出され、着いてからも身体、精神検査などを受けてから入国となり、膨大な時間がかかる。
それがいきなり、ど真ん中に見知らぬ娘が現れたのだ。それは不審者として扱われても当然だろう。
わかってはいる。だが今、この時に限っては、昨日捕らえられ、牢に入れられた記憶がまだ生々しいメラニアとっては、恐怖心が勝り取り乱してしまう。
「やめて、離して!」
全力で抗うも、数人がかりで捕まえて連行しようとする神官達に勝てるはずもない。
ただ、恐怖で叫んだ。
「いやっ!」
懐から暖かい温度を感じたと思ったら、眩い光が発せられ、辺りを眩ませた。
そこに居た人の全員が動きを止め絶句する。
全員が狐に包まれたような顔をしてメラニアを遠巻きにした。
「これは……」
「聖なる木の光では?」
「まさか……」
「大神官でなければこんなこと」
「聖人なのか?」
さっきまで拘束しようと掴まれていた体を急に放り出され、地面に這いつくばってるメラニアは、ひそひそと噂され、視線に晒され、居た堪れなくなるが、周囲に人が集っているので、この場から逃げられる気もしない。
怖くて心細くて、ただ涙するメラニアは、ここに来たことを後悔しかけていた。何もここに来なくても、他のただの村などに出て、一人旅をしてもよかったのではないか。嫌な扱いから逃げて来た先でもこのような扱いを受けるのなら、ここにきた意味はない。
どうしたら良いのかわからずに、ただその場で蹲って泣くだけのメラニアに、ひとりの神官らしいローブを着た若い神官が近寄ってきた。
そして
「君は誰だ?」
と聞いてきた。
メラニアは泣きながら、
「メラニア、私は、メラニア=アシュリー、です。ここを、頼るように言われて、来ました。」
嗚咽をあげながら、そう告げる。
その神官は
「アシュリー?まさか、シルフィのアシュリー?」
と、驚きの眼差しでメラニアを見つめた。
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