ヤンデレBL作品集

みるきぃ

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◆わがままばかりしていたら愛想を尽かされた。

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不器用受け
月見渚


支配欲攻め
犬飼天馬



◇◇◇




「渚、もうお前のわがままに付き合えない。面倒だからじゃあな」



小さい頃から僕と一緒にいてくれた犬飼天馬。そんな彼からたった今、愛想を尽かれた。

僕の中では急なことだったため、『なんで?』という疑問だらけ。だって昨日まで一緒に買い物を行ったり、僕の家でご飯だって一緒に食べた。天馬が僕にあんな冷たいことを言うなんて考えられなかったし、初めてのことだったのですごくショックだった。




「天馬くん。今日ね、クッキー焼いてきたんだ!」


「ありがとう。紬」


隣から楽しそうな会話が繰り広げられているのが聞こえてきた。僕と天馬は同じクラス。前までは、天馬の隣は僕だったのに、違う子がいた。

違う子とは、クラスで可愛い男の子と人気の雪江紬くん。


…寂しいな。



「紬のクッキー美味しいよ。また作ってね」


「やった!ありがとう」


二人を見るとお似合いって言葉が浮かぶ。天馬もイケメンで女子から人気がある。紬くんも可愛くて料理も上手だって聞いたことあるし、二人が一緒にいるだけで別世界な感じがする。

一番悲しいのは、天馬が僕といる時より楽しそうだということだった。今までの自分の行動を振り返ると、確かに天馬に頼ってばかりでわがままだった。迷惑かけていたのだと今更気づいても遅い。そりゃあ、愛想を尽かれるのも無理ない。だけど、ずっと一緒にいた人が急に他人に見えて、怖かった。



ちなみに僕と天馬は隣の席で、天馬の前は紬くん。二人の楽しそう会話を聞きたくなくても隣なので強制的に聞こえてくる。僕も天馬と話したい。


人見知りの性格なため、今まで天馬以外の友達ができたことがない。人生でこんなに天馬と話さなかったのはなかった。喧嘩だって一度もしたことないのに。


天馬に話しかける勇気がなくて、僕は紙に『今日、放課後一緒に帰れる?話したいことがあるんだ。帰れるならいつもの場所で待っているね』と書いた。今は授業中で、紬くんも前を向いているため、手紙を天馬に渡しやすい。トントンと天馬の机を鳴らし、手紙を置いた。一瞬、天馬が僕の方を見るもすぐに逸らされた。そして、天馬は僕が置いた手紙を見て、ゆっくりと開き読んでくれていた。嬉しいと思った束の間。


隣からビリビリと紙を切る音が聞こえてきた。すぐに天馬の方を見ると、僕が渡した手紙を真っ二つに破っていた。


「…っ、」


その光景は心が折れてしまうほど、悲しかった。それほどまでに嫌われていたことを自覚した。嫌いな相手から、手紙なんて迷惑だったよね…。

その日の放課後、もしかしたら来てくれるかもしれないと思い、僕たちが日頃よく行っていたカフェで待っていた。でも天馬の姿はなかった。本当に愛想を尽かれたと実感した。天馬ともう一度、前みたいに話して、一からやり直したい。


僕が自分でやると言っても、天馬は僕の靴紐だって結んでくれるほど面倒を見てくれた。それが嫌で離れていったと思うけど。他にもたくさんのことを天馬は嫌な顔せずやっていた。こんなわがままな僕と一緒にいるより、可愛くてお菓子作りが上手な紬くんといた方が天馬も楽しいに決まっている。


嫌だな…。僕も天馬と一緒にいたい。


そう思い、前に天馬は紬くんの作ったクッキーを幸せそうに食べていたのを思い出した。僕も天馬のために作って、喜んでもらいたい。


早速、ネットを見ながら初めてクッキーを作ってみた。でも目の前にあるのは黒く焦げたもの、いびつな形をしたもの。



「これじゃあ、だめだ…」


食べてもらえない。こんなものそもそも渡せない。もっとうまく作らないと。徹夜して何度も繰り返し作り直した。作ったもの中から、出来の良いものを選び、オシャレにラッピングまでした。

…天馬、喜んでくれるかな。愛想を尽かれたけど、ちゃんと自分でできるところも見せないといけない。そしたらまた前みたいに話せることができたら嬉しい。早速、次の日学校で渡すことにした。




「天馬。き、昨日ね、そのこれを…」


ゆっくりとクッキーを差し出す。



「なにそのゴミ」


「ち、違うよ!えっと、」



自分なりに可愛くラッピングしたクッキーをまさかゴミと間違われたことに恥ずかしくなって、すぐに後ろに隠した。胸が締め付けられる。




「なに?話それだけだったら俺帰るけど」


「ま、待って!きょ、今日、一緒に帰らない?」


慌ててそう言い、帰ろうとする天馬のシャツの袖を掴んだ。



「今日、紬と帰る約束しているから」


「そ、そうなんだ!呼び止めちゃってごめんね」



掴んでいた袖をすぐに離した。そして、天馬は紬くんと二人で帰って行った。


こ、こういうところだよね、僕の悪いところって。でも無視されなくてよかった。


でも結局、渡せなかった。


その日、天馬のために初めて作ったクッキーを自分で食べた。


「にがい…っ、こんなの食べられないや」


天馬に愛想を尽かれて、一週間が経った。天馬とこんなに離れたのは初めてで一週間経っても慣れない。


…寂しい。



学校で天馬以外、気軽に話せる親しい人はいないし、天馬が離れて、どれだけ助けられていたのか気が付いた。天馬は僕がいなくてもみんなと仲良くできていた。きっと、今まで僕が天馬の邪魔をしていたんだと思うと余計に悲しくなった。


このままではいけないと思い、ある日の放課後、とある場所に寄った。そこは家庭科室だった。



「し、失礼します…」


ゆっくり扉を開けると甘くて美味しそうな香りがした。



「あれ?え、渚くん?」


家庭科室で一人、お菓子作りをしている紬くんがいた。紬くんはたまに一人で放課後、家庭科室でお菓子を作っていると誰かが言っていたのを聞いた。



「つ、紬くん。急に来てごめんね」


なぜ、僕がここに来たのかは理由がある。



「大丈夫だよ!でもびっくりした。まさか渚くんがここに来てくれるなんて」



紬くんは、手を止めて僕の所に近寄ってきた。


「えっと、僕も紬くんみたいにお菓子作り上手くなりたくて…良かったら教えてほしくて!め、迷惑だったらごめんね」


突然、こんなこと言われても困ると思うけど、上手くなりたいので、お菓子作りが上手な紬くんに教えてもらいたい。



「全然迷惑じゃないよ。僕で良ければ、もちろんいいよ!一人で寂しかったから、渚くんにそう言ってもらえて嬉しいよ」


「ありがとう…っ!」



断れるかと思ったけど、紬くんは優しかった。





「作る練習ってことは誰かにあげるの?」


「う、うん!その天馬にあげようと思ってる」


「そっか!渚くん、天馬くんと仲いいよね!でも最近一緒にいないよね?」


「僕がわがままばかりしていたから天馬に嫌われてしまったんだ。だから仲直りしたいと思って…。最近天馬、紬くんと仲良いみたいだけど、どんな感じ?」


「仲直りしたくて作るんだね!うーん、僕と天馬くんそんなに仲良くないよ?この前帰ったのだって、先生に買い出し頼まれたからだし」


「そ、そうだったんだ…」


それでも僕にとっては天馬と話せて羨ましかった。


「あ、天馬に内緒で作りたいからこのことは秘密にしてくれる?」


「もちろんだよ!二人だけの秘密ね」



それから一緒に放課後、天馬にバレないように内緒でたくさん練習した。紬くんと関わっていくうちに、本当に紬くんは優しい人で自然と仲良くなっていった。初めて、天馬以外の人と話をした気がする。





今日はケーキ作り。


「だいぶ上手くなったね」


「本当?嬉しい!」


紬くんは丁寧に教えてくれて、この練習が楽しくなっていた。紬くんから上手くなったなんて言われて舞い上がる。



「渚くん、頬っぺたにクリームついてるよ」


「え!嘘、どこ?」


夢中になっていたから恥ずかしい。

すると紬くんは笑いながら、僕の頬についたクリームを舐めた。



「つ、紬くん!?」

び、びっくりした。

舐められた頬に手を当てる。そんなことしなくてもいいのにと申し訳なくなる。




「ねぇ渚くん、目閉じてみて」


「え!きゅ、急にどうしたの?」



「お願い。あと絶対にいいよって言うまで目を開けないでね」


「え、わ、わかった」


言われた通り目を閉じた。すると唇に何か柔らかいものが一瞬だけ触れた。


「も、もういいよ。目を開けて」


目を開けると、紬くんの頬はうっすらと赤くなっていた。



「えっと、今のはなに?」


「何だと思う?」


「わかんない」


「い、今のはね…こ、このマシュマロだよ!何か当ててほしくて!」


紬くんは手に持っていたマシュマロを僕の口に入れた。…マシュマロ美味しい。

そんなこんなで紬くんとお菓子作りをする日々はとても楽しかった。







「できた!」

上手くケーキが作れた。これでゴミと間違うこともないだろう。


「そのケーキ天馬くんにあげるの?」


「うん!」


「そっか。今まで一緒に作ってきたから最初は僕が食べたいなと思った」


「紬くん…」


なんか、じーんとくる。優しいよ、紬くん。


「クッキーならあるよ」


「やった!」


そのあと紬くんは、僕が作ったクッキーを美味しそうに食べてくれた。


それから、天馬に作ったケーキを渡すべく、天馬の家に寄った。





「て、天馬…急に来てごめんね!その天馬のためにケーキ作ってきたんだ!」


「…まぁとりあえず、入れば?」


「いいの?お、お邪魔します…」


天馬の家にあがるの久々だ。ちなみに天馬は一人暮らしをしている。


紬くんに教わりながら作ったケーキを天馬に渡すと、箱から出して食べやすいように包丁で切ってくれた。


それを口にした天馬の反応にゴクリと喉を鳴らす。


「ど、どうかな?」


「うん。おいしいよ」


っ!!

「よ、良かった!」


まさかの反応に嬉しくなった。何より嬉しかったのはそれから天馬は残さずケーキを食べてくれたことだった。



そして、ちゃんと、謝らなきゃ。

このために来たから。



「い、いつもわがままばかりしてごめんね。天馬と離れて僕、たくさん迷惑かけていたことに今頃気づいたんだ。こんな僕に愛想を尽くすのもわかる。天馬と話さない時間が寂しかった…っ」

震える声、頬を伝う涙。

そんな僕の頭を優しく天馬は撫でた。


「うんうん。それから?」


「天馬が嫌じゃなかったら、またもう一度僕と仲良くして欲しい。…っ、ケーキ作ったのも天馬と仲直りしたくて、っ」






「もちろんだよ、おいで渚」


優しく微笑んだあと、天馬は僕を抱きしめた。


「天馬…っ」

渚って、名前を呼ばれたのも嬉しい。



「俺もごめんね、あんな酷いこと言って」


「ううん。天馬は悪くないよ。僕がわがままばかりしていたし、天馬を頼り過ぎていた」


「俺もう限界。渚不足」


さっきよりも強く抱きしめる天馬。


「…天馬?」


「俺のためにケーキ作ってくれたのは嬉しいけど、渚は何もできなくていいんだよ」


「え?」


「何でもないよ」



それから二人で笑い合った。


前の関係に戻れたと思った。





だけど、何かがおかしかった。







「んンっ、っぁん、て、んま…ッ」


「最初からこうしておけばよかった。変な虫といつの間に仲良くなっちゃって」


「ぁン、んんっぁ、ゃっ、ぁっん」


「渚は俺のことだけを考えて。…あぁもうイキそうッ」



それから何回も天馬に抱かれ、頭の中が天馬でいっぱいになった。






【犬飼天馬side】


昔から俺がいないと何もできない渚。いや、俺がそうさせた。渚が一人でしようとするものを執拗に俺がやった。

だけど、今のこのままの関係じゃだめだ。

もっと渚は俺でいっぱいになってくれないと困る。


俺は渚が死ぬほど大好きだ。

渚さえいればそれでいい。


早く、俺がいないと生きていけないと自覚してほしい。




そう考えて、あの提案を思いついた。

突き放すことだった。


離れるなんて嫌だけど、きっとすぐに泣きついて俺を必要としてくれるに違いない。



震えながら、頑張って俺と話そうと必死な渚を見てゾクゾクした。

横目でチラチラと話しかけたい目をされた時はたまらなかった。


クラスの同級生たちも俺と渚が話していないのに気づき、喧嘩でもしているのか?と噂になった。

変な輩が絶好のチャンスと思ったのか、渚に近づこうとしたので、裏で絞めた。

本人自覚していないが渚は、本当に可愛い。

俺が他の奴と話しているのを見て寂しそうにする渚。ん、結構いい。



嫉妬してくれている。可愛い。

抱きしめたい。抱き殺したい。


俺がいないと何もできない渚。



それなのにクッキーを焼いてきちゃって。なんで自分でできるようになろうとしてんの?

まあ、すぐにゴミと言ったから相当ショックな顔をしていたな。本当腰に来る顔をする。あれくらいキツく言わないとダメだ。

もうこれで自分で作ろうとバカな真似をしないと思った。





俺のために、何かを作る渚は可愛いが何もできない渚はもっと可愛い。

以前より、俺のことを考えてくれているのが目に見えた。

でもさ、もう限界なんだけど。






ねぇ、いい加減、早く

俺にすがって泣いて見せてよ。



俺がいないとダメだって言えよ。





手のかかる渚。それでいいんだよ。

それなのにさ、ケーキとか俺に内緒で他の野郎と作るなんて許せないんだけど。


何自立しようとしているの。意味が分からない。もう俺が完敗だ。


戻っておいでこっちに。






でもケーキを俺のために頑張って作った渚は可愛かったから、ちゃんと大目に見るよ。










「ねえ、天馬くん。僕、渚くんと話したいんだけど」


俺の渚に近づいた変な虫。

渚とケーキを一緒に作って仲良くなったと勘違いして調子に乗るな。



「何でそれ俺に聞くわけ?」


「だって渚くん、天馬くんにケーキを渡しにいくって行ったきり学校に来ないから」




お前ごときが軽々と渚の名前を口に出すな。


本当、気持ち悪い。

俺以外が渚を見るな。





「天馬、おかえり!僕ね、いい子にしていたよ!」


「……」


「天馬…?本当にいい子にして待ってたよ?信じて…っ、ねぇ、無視しないで、怖いよ…っ」


不安そうに見上げて、俺の腰に手をまわす渚。



これだよ。これ。

たまらない。


俺中心にまわっている。





「いい子にしていた渚にはご褒美あげないとね」





「…っ、ぁン、んんっ、てん、まっ」



「渚…っ、今日朝もしたのにキツいね」



「ンんぁ、っ…んンッ」






「渚はずっと俺のものだ」



この先も永遠に。





【完】




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