ヤンデレBL作品集

みるきぃ

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◆狂う記憶

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主人公受け
棚田はるひ


記憶喪失攻め
上林ゆうすけ



◇◇◇





僕の恋人はヤバイ奴だった。僕が今日したこと、今後の予定など知り尽くしている。いくら付き合っているからといって、行動一つ一つ知り尽くしているのは、正直キツかった。別れ話を告げると、物凄く怒り、僕をめちゃくちゃに抱いた。そして、その日から束縛が酷くなったのだ。



「はるひ、愛しているよ。俺から離れようなんて考えはできないようにしてあげるからね」


ベッドが軋む音。嫌だと言ったら更に酷くなるから耐えるしかない。


「ゆ…っ、ぁ、ゆう…すけ…っ」



僕の体が限界になろうとも続ける行為。僕、棚田はるひがこの上林ゆうすけと付き合ったきっかけは高校一年生の頃、クラスに馴染めなかった僕に声をかけ、事あるごとに優しくしてもらった。ゆうすけから告白された時は、僕に断るという選択肢はなかった。だけど、いつからか知らず、ゆうすけの行動がおかしくなっていった。現在高校三年生。付き合い始めてもうすぐ3年になる。誰かと付き合うのが初めてだったから、こういうものなのかなって最初は思っていた。けど、後からこれが普通ではないということに気づいた。


ゆうすけとの付き合いにそんな嫌気がさしている時、ある事件が起きた。そう、ゆうすけが車に轢かれて病院に運ばれたということ。ゆうすけに対して日頃、嫌気しかなかったけど、このことを聞いてさすがに心配し、怖くなった。慌てて、病院に駆けつけるも面会制限があり、会うことができなかった。僕は手を合わせ無事を祈ることしかできなかった。数日後、ゆうすけの状態がある程度落ち着いて、一般病棟にうつることが決まり面会制限も解除された。



「失礼します…」


ドアをノックし、病室に入ると寝ているゆうすけの姿があった。病室には花束や差し入れなどが沢山置いてあった。ゆうすけはクラスで人気があった。モテるのにこんな僕と付き合ってくれるのが不思議だった。僕はそっと黄色の花束を隅に置いた。黄色はゆうすけの好きな色だった。


いつもは、見たくない顔だった。解放されたかった。こんなことになるなんて思わなかった。ゆっくり、ゆうすけの手を握る。すると、ピクッとゆうすけが反応して起こしてしまった。



「ご、ごめんね。起こしてしまって…」


「あ、大丈夫だよ。ところで、君は…?」


「…え?」


「ごめんね。俺、事故で記憶が曖昧で…」


「あ、…そ、そうなんだ…」



正直驚いた。つまり、記憶喪失ってことだよね。てことは、僕のことなんて覚えていないというわけか…。



「えっと…僕は、はるひ。ゆうすけと同じ学校に通っていて友達だよ」


恋人だなんて、言えなかった。記憶喪失を利用してしまい、嘘をついた。僕にとっては都合のいい話だった。



「はるひ…。ごめんね、友達のことも覚えていなくて…」


「大丈夫だよ。無理もないよ。それより今は体のことだけ大切にして」



「ありがとう…」


このまま記憶を無くしたまま、僕はゆうすけと友達に戻りたいなんて思った。


「はるひだっけ?もしかして、あの花ははるひが?」


さっきほど、隅に置いた花をゆうすけが指差した。


「うん。こんなものしか持ってこれなくてごめんね」



「ううん、そんなことない。一番嬉しいよ。俺この色好きだから」


色の好みは覚えているんだと思った。それから少し他愛もない会話をした。



「じゃあ、僕はこれで失礼するね」



「そっか。ねぇ、はるひ、また会いに来てくれる?」



「もちろんだよ。じゃあ」


内心、別の意味でドキドキしていた。いくら記憶喪失だからって、記憶を取り戻したら、あの頃に戻ってしまう。また会う約束をしたけど、思い出してしまっては困るのでやめよう。そして、友達に戻りたい。



あれから数週間が経ち、ゆうすけが退院したと聞いた。明日には学校に来るらしい。


…どうしよう。顔なんて合わせられない。と思ったが一度きりの面会でゆうすけが覚えているはずがない。そう願う他なかった。



「あ、もしかして、はるひ?」


「え?」


いつものように学校に向かって歩いている時だった。後ろから声をかけられ、振り返った。


「おはよう。俺、覚えている?って、俺が言える立場じゃないけど」



そこには、元気なゆうすけがいた。良かった…記憶は戻ってないみたいだ。



「おはよう。もちろんだよ。もう元気になったんだね」



「はるひに会いたかったから、頑張った」


「あ、えっと、…あれ以来面会行けなくてごめんね。僕頭悪いから勉強で…ほら、一応今年受験生だし」


とりあえず、誤魔化そう。



「謝るなって!もうこれからいつでも会えるじゃん」


ほら、一緒に学校行こうぜ!と言ってくれるゆうすけ。

あぁ、これ僕が好きになったゆうすけの笑顔だ。こうやってずっと友達のままでこの笑顔がみたい。



それから、ゆうすけの記憶が戻らない日々を送った。友達に戻ったこの日々は幸せだった。


そんなある日の放課後。二人きりの教室。



「はるひ、今ちょっといい?」


「なに?」


手招きして少し来て欲しいとゆうすけが言ったので僕は鞄を肩にかけ、ゆうすけに駆け寄った。



「ここに、座って」


ゆうすけに言われた通りに近くの椅子に座った。




「どうしたの?…て、顔近いよ」


と、そう言っているそばから、お互いの唇が一瞬だけ触れた。


「な、なんで…」


体が震えた。記憶…戻った?




「キスしてごめん。嫌だった?」



良かった。記憶は戻ってないみたいだ。少しだけ安堵する。


「嫌というか…」


キッパリ言えない自分が嫌だ。


「はるひの気持ち考えずにしてごめん」



「い、いいよ、別に。そ、それに僕今付き合っている人いるから、こういうのは、ちょっとだめかな…」



もしかしたら、軽い気持ちでキスしただけかもしれないけど、友達以上になってしまってはダメだ。壊れてしまう。とりあえず、付き合っている人がいると言えば大丈夫だろう。そんな相手本当はいないけど。



「そっか…。はるひ付き合っている人いたんだ」


露骨に寂しそうな顔をするゆうすけ。

ゆうすけは根は良い人だから僕以外と幸せになってほしい。



付き合っています宣言をしてからは、ゆうすけとは変わらず友達の関係でいられた。



時々、ゆうすけからは『恋人とはどこまで進んでんの』とかおちょくられるけど、全て内緒と応えている。


「そうだ。はるひって誕生日いつ?」



「○月×日だよ」


「あぁ、もう終わったのか…祝いたかった」



「いいよ、気持ちだけで嬉しいから」



ゆうすけとは、日々他愛もない会話をして過ごしていた。僕はなるべくできれば学校でもゆうすけとは離れたいけど、話しかけてくるゆうすけを避けることなんて、できないし怪しまれたら困るし。


この日をきっかけに僕の平穏な日々が崩れるなんて思いもしなかった。



「はるひ。今日、放課後暇?」


「え?」


「ゲーセン行こうぜ」


ゲーセンか…。それくらい別にいいか。友達だし。


「いいよ」



これが、間違いだと気付いても遅かった。





「あー、楽しかったな」


「うん。今日はありがとう」


「いいって」


沢山遊び、UFOキャッチャーではゆうすけが取ったペンギンのぬいぐるみをもらった。



「そういえばさー…、はるひ」


「なに?」



人気のない帰り道。ゆうすけが何か思い出したかのように言ってきた。



「昨日、何の日か覚えている?」



「昨日?んー…わかんない」



「俺たちが付き合って3年の記念日」



「え…」


持っていたぬいぐるみを地面に落とした。すぐにゆうすけが汚れをはたきながら、拾った。


「俺、なんで今まで大切なこと忘れていたんだと後悔した」


そう言って、僕を抱きしめた後、構わずキスをしてきた。


「…っん、ちょ、…ぁ、ん」


長いキスの後、お互いの目が合う。



「今まで我慢してきたんだ」



「ま、って、…その僕には付き合っている人が…」


「それは俺でしょ。冗談でもそれは許さないよ」




「記憶…」


「そう思い出したんだ。はるひの誕生日を聞いてね」



「なにそれ…」



「俺、前の携帯、パスワードロックしてて、何をいれても開かなかったんだ。もういいやと思って新しいの買ったけど、試しに昨日さ前使っていた携帯にはるひの誕生日入れたら簡単に開いちゃって…、フォルダに今までの思い出とかメールの内容見てそれで全て思い出した」




「いや…」



「もう離さないから」



あの頃には戻りたくない。








【ゆうすけside】




俺には大切な人がいる。その人は棚田はるひ。中学の頃から好きだった。でも俺たちは別々の学校で、俺が気安く声をかけたら怪しまれるに違いないと思った。

はるひが受験するだろう高校の情報をてにいれ、晴れて入学式で出会うことができた。


しかも同じクラス。はるひは、誰もを惹きつけてしまう容姿をしている。所謂、美少年という言葉が合っているがもはやそれ以上で天使だ。みんな気安く声をかけられていないのか、遠目から見ているだけ。はるひの性格から人見知りでなかなか人と話せないのなんて知っている。だから、俺がめちゃくちゃ優しくして甘やかしてあげたい。そう思って、下心丸出しの俺は徐々にはるひと仲良くなって距離を縮めた。そして、付き合うことができ、我慢を通り越して告白して良かったと思った。


付き合って理性が爆発した俺。もう沢山、はるひを愛した。


そして、付き合って2年が経った時、突然はるひから別れ話をされた。焦りまくった。俺の何がいけなかったのかわからなくて以前よりももっと愛した。

俺だけを考えて、俺だけを感じてほしくて、大切にした。


こんな子を独り占めにした罰なのか俺は事故にあった。しかも記憶喪失付きの。


事故ったせいか、目を覚ますと記憶が曖昧で、大切なはるひを忘れていた。


ある日の病室で、はるひを見た時は、天使かと思い、俺もしかして死んだ?とさえ思ってしまった。


すぐに、はるひの名前を知り、また面会に来てくれと頼んだ。だか、はるひは来なかった。でもはるひがいうには俺たちは同じ学校に通っている友達。退院すれば、また会える。


俺は記憶を失ってもまたはるひに恋をした。


だから、はるひに会うため、退院するまで回復し、日々はるひがくれた花を見て頑張った。


学校に通い始めると、はるひに会え毎日がテンションMAX。はるひの一つ一つの行動が俺にとってドストライクで、放課後二人きりの教室でキスしてしまった。いい雰囲気だったのに、そしたら、はるひから付き合っている人がいると言われた。



誰だそいつ…。俺の中で黒い感情が出た。

でも付き合っている人がいても当然だろうと思ったが、俺はどうしてもはるひが欲しかった。


そして、はるひのこともっと知りたくなった。俺はまず、誕生日から知ろうと思った。


絶対、今付き合っている奴より俺が満足させられる自信はある。


俺がはるひを幸せにしたい。そう思いながら前に使っていた携帯が目に入る。パスワードロックがかかって開かない携帯。すぐに新しいものに変えた。もしかして…まぁ、そんなわけ…。半信半疑ではるひの誕生日を入力したら、簡単に開いた。まじかよ。前の俺もはるひのこと大好きだったんだ。すぐに携帯の中身を確認すると、はるひとの写真やメールの内容で、もうこれ付き合ってると思った。そして、次々と思い出していく記憶。



「はは…ハハハ!」


もう最高。


しかも、今日が付き合って3年目の記念日だった。今すぐにでも会いに行きたかったがここは慎重に明日会おう。


記憶を取り戻した俺は一刻も早くはるひに会いたかった。


前の記憶と、記憶を失ってからの記憶が重なって俺は物凄く、興奮した。



俺、はるひと付き合っている!




放課後、ゲーセンに誘い、記憶が戻っていることをはるひに告げると少し怯えていた。


はるひは俺と友達のままでいたがっていた。俺は友達のままなんて無理。

もう逃がさない。


はるひの反応が、可愛いから記念日忘れていたことは、許してあげる。





久しぶりの、はるひの体温に俺は溺れた。






【完】




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