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◆ただ今、ネカマやっています。
しおりを挟むネカマ主人公受け
松岡千紘
攻め
HARU→春川佐斗
◇◇◇
「ははっ。“ちぃちゃん今日も可愛いね”かぁ。当然だろ」
PCに向かって笑みをこぼす俺は、絶賛引きこもり中の男子高校二年生、松岡千紘。ネカマ歴二年。
男が好きそうなことなんて大概知れてる。なんせ、男だから。
今日も可愛いねだって言われちゃったよ。うける。まぁ、ネカマ歴二年にもなれば女より女を演じられちゃうし。もう自分の才能が怖い。顔を晒してないのにも関わらず、可愛いって言われてやんの。凄いわ自分。自画自賛していたら新しいメッセージが届いた。
「あ、今日もHARUってやつからメッセ来てる」
クリックして内容を確認した。
『愛するちぃちゃんへ
生脚可愛い。ペロペロしたいな(^q^)
でもあんまり僕以外の前で晒して欲しくないな。なんつって☆
あと、お腹を出して寝たら風邪ひくよ?
HARU』
…相変わらずキモいな。お腹を出すっておい。なんでそんなことわかるんだよと怖くなる。
俺は、“ちぃ”という別名で時々写真を投稿したりしている。これもフォロワーを増やすため仕方なくやっていることだ。顔はもちろん投稿していない。
まぁ、俺の投稿内容は、最近の話やら映画やらで特別なことは、何もしていない。ある日突然、フォロワーの多いHARUってやつからフォローされ、俺もちょっとだけ人気になった。
時々こうやってダイレクトメッセージでキモい発言してくるこいつがフォロワー多いことに俺はびっくりだけど。まぁ、人間、表と裏があるから俺はその気持ちわかるし、他の奴にこいつの性格バラすとかそういう卑怯なマネはしない。
「千紘ーっ、あなたもう高二なのよ。学校行かなくなって一ヶ月。このままじゃ留年確定よ」
突然ノックもなしに俺の部屋に入ってきた母親。
「もうノックしてって毎回言ってるじゃん。それに学校なんて行くとメンタルやられるし」
「また、そんなこと言って。パソコンばかりやってないで、しっかりしなさい。社会に出てからでは遅いわよ」
そう一言だけ言って出て行った。
うぜぇ…。俺だって好きで引きこもり生活をしてるわけじゃねぇのに。
『親に学校行きなさいと怒られちゃった。このまま引きこもりしていたらダメなのはわかるけど。。。』
そうネットでいつものように呟いた。
すると、秒でコメントが届く。
『ちぃちゃんは、可愛いから外に出たらだめ。なんつって☆無理やり学校に行けという押し付けは辛いよね。僕ならちぃちゃんの気持ちわかるよ。HARU』
何だよ、こいつ、いい奴かよ。もしかしてこいつも俺と似たような境遇の奴なのか?!
少し気になって初めてこいつのアカウントを見ることにした。フォロワーの数しか見たことなかったけど、意外と俺と似たようなこと呟いているかもと思い、のぞいてみた。
『この柴犬可愛い』『お腹さわさわした』『ちぃちゃん可愛い』とか自分の身の周りで、起きたことを主に呟いていた。
おいおい、みんなが見るところに俺の名前を晒すなよって思ったが、何やらこいつのフォロワーは柴犬の名前だと思っているらしい。
あと、写真が投稿されていたのでそれを見るとものすごくイケメンがうつっていた。
ムカついた。
別に境遇は一緒ではないみたいだな。いかにもリアル充実してますって感じのやつだな。悩みなそう。人生楽しんでいるっぽい。俺とは違って。
軽い言葉で俺にコメントしてくんじゃねぇよ。ちくしょう。こっちは本気で悩んでんのに。
ま、別にそんな腹立ててもどうこうなる話じゃないし、赤の他人にそんなこと思っても馬鹿らしい。
自分がもっと惨めに思えた。
そんなある日のこと。
いつものようにPCに向かっていたら、HARUってやつから告白された。
俺はそもそも付き合う気なんかないし、第一男は論外だしと思い、相手を傷つけないように丁寧に断った。
それが悪かったんだ。
ここはどこだ…?
両手両足を紐か何かで縛られて身動きがとれなかった。
「ちぃちゃん。僕だよ、わかる?」
低音ボイスが何やら倉庫らしき部屋の中で響き渡る。
俺は、その声の持ち主を見た。
っ!
この顔…もしかしてっ。
「HARU!?」
「ふふ、大正解ー」
「何でこんなこと…」
「何で?そんなの一番ちぃちゃんが知っているでしょ」
「何だよそれ」
「わかんない?なんで、僕のこと振るの?酷いじゃないか」
冷静になって少し考えてみると、何でこいつは俺のこと知ってんだ。
ネットだけの“ちぃ”であって、現実の俺は知らないはず。どうして、俺がちぃだってわかったんだ。
「あー、もう可愛いな。状況掴めていない表情ものすごくたまんないね」
俺の頬に触れニヤニヤと笑う。
「さ、触るな!それより、これを外せよ」
「ちょっとうるさいよ。自分の立場がわかっている?」
先程とは打って変わって、俺を見下ろす冷たい目。
もしかして、俺が男だったから怒っている?
こいつ、女と偽っていたときのちぃが好きだったから、騙した俺を今こうやって…もしかして殺そうとしてる!?
「ご、ごめんなさい。だ、騙したことなら謝るから命だけは…」
やっぱり、俺の人生ってこんなもん。
「可愛いな、ちぃちゃん…いや、千紘。僕は最初から君が男だって知っていたよ」
「え…、何だそれ」
ニヤリと笑うこいつに、俺は全身に死よりも恐怖が走った。
【HARU:春川佐斗side】
君は、昔からそうだった。下ばかり向いて僕のことは見てくれない。
ネカマをやっている君。最初から、僕は君が男…“松岡千紘”だって知っていた。
君が学校に、行かない理由もわかっている。
なかなか友達ができなくて不登校になったこと知っているよ。
君は不器用だから、わかってないみたいだけど、千紘くんはみんなの高嶺の花。だから、気安く声なんてかけられないし、友達なんてできないのは当然だ。
だって、君の前じゃみんな緊張してしまうもの。
前に、休んでいる千紘のために、プリントを届けに家に行ったことがある。
千紘の母親は、僕が初めて家に来た友達と勘違いして、快く家に招いてくれた。
ドアをノックして千紘の部屋に入ると、お腹をさらして無防備に寝ていた。まあ、家だから無防備は当たり前か。お腹をさわさわしてきた。
そして、柴犬のTシャツ着ていた。可愛い。
その時に、勝手にPCのぞいて君がネカマをやっているのがわかった。
ネカマなんかしなくたって、君はモテる。
それを本人わかってないことが逆に有難い。
きっと、千紘は、僕のことなんて知らない。
だって、僕を見ないから。
こんなに君を想ってきた僕。
勇気を出して告白したのに、断るなんて。
いくらなんでも、君でも許せない。
だからさ、僕を見てからまた、告白の返事を聞かせてほしい。
「ご、ごめんなさい…っ、ゆ、許して」
今、千紘が、僕を見ている。
監禁して26日目の朝。
「じゃあ、早く僕を好きになって?」
望んでいるのはそれだけ。
そっと君にキスをした。
【完】
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