嫌われ者の僕

みるきぃ

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もしもの話

天山神影×佐藤あおい ⑦ END

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【あおいside】



「はぁ…、休んじゃった」


ため息交じりに、一人部屋のベッドで横になりながら呟いた。親には体調が悪いと嘘をついたことに後悔する。


『お前なんか知らねぇし、知りたくもない。仮に忘れていても思い出したくもねぇ』


神影に言われたことを思い出す。僕のせいで、神影が苦しんでいるのは見たくない。また思い出して、泣きそうだった。

考えたら勝手に涙が出てしまうので僕は目を閉じて、『眠れ、眠れ』と唱えながら、気分を紛らわすしかなかった。


「ん…、どのくらい寝たんだろ…」

そして、いつの間にか眠りにつき何時間か経って、何度も鳴るインターホンの音で目が覚めた。


「誰だろ…」


目をこすり、身体を起こして玄関に向かった。


宅配便かな…?

そう思ってドアを開けると、思いもよらない人が目の前にいた。


「え…」

「あおいっ!」


その人は、僕を見た途端に抱きしめてきた。目が覚めたばかりもあって、頭が真っ白になる。


「あおい、あおい…っ」


嘘…。自然と涙がこぼれた。僕の名前を呼んでくれるのが信じられなかった。

そう、今僕を抱きしめている人物は…。


「み、神影…」

走ってきたのか息を切らした神影。思わず、『会長さん』ではなくていつもの癖で、名前で呼んでしまった。



「ごめん。俺、俺…あおいをたくさん傷つけた」


抱きしめる力が強くなった。それと同時に抱きしめている手は震えていた。


も、もしかして、…記憶が?



「全部思い出した。俺はあおいに酷いことばかり言って…最悪だ」


「神影…」

それから、たくさん神影から謝られた。

また校舎裏で記憶が戻ったこと、記憶がないときでも僕のことをずっと考えていたことなど話してくれた。



「ぼ、僕もごめんね…、こうやって学校まで休んで心配かけて…それから神影から逃げてごめんなさい」


傷つくのが怖くて、ちゃんと向き合っていなかったから。



「あおいは何も悪くない。あおいの誕生日…大切な日にあんなことになってしまって」


「ううん、大丈夫だよ。こうやって、また話せるだけで充分だから」


贅沢なことだけど、今、隣にいてくれて話せることが幸せだ。失いたくない。


そして、お互い気持ちを出して、以前と同じで神影といれる時間が増えた。






何か月か経って、神影から去年、僕の誕生日を祝えなかったから『もう一度、誕生日を祝いたい』とあり、誕生日の日に神影の家に招待された。


神影の部屋で、ケーキを食べ、プレゼントをもらい、二人で過ごした。


「あおい、誕生日おめでとう。これからもよろしくな」


「ありがとう」

とても幸せな誕生日。涙が溢れてくる。


「あおい?」

「ご、ごめんね。嬉しくて…」


そう言ったら、神影は優しく抱きしめてくれた。


すると、目線の先に見覚えのあるものが目に入った。



「あれって…」


「あぁ、あおいから貰ったお守り」


す、捨てなかったんだ。嬉しくてまた涙が出てきた。





「あおいは泣き虫だな。もう悲しい思いさせないから」


お互いの目を合い、微笑んだ後それからゆっくり唇が重なった。




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