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もしもの話
天山神影×佐藤あおい ④
しおりを挟む【神影side】
「ちょっと、神影!それは正気なの?なんてことあおいちゃんに言うのよ!!」
「知らねぇもんは知れねぇし」
姉貴はそう言うが、目が覚めたら知らない奴がいて意味が分からなかった。そいつを見て俺が睨むと、すぐに目を逸らされた。
…俺は胸をおさえた。なんだろう、この嫌な気持ち。さっきから、意味の知らない何かの罪悪を感じてばかりだ。
姉貴からの話によると、俺は車に轢かれたらしい。そして、頭を強く打ってなかなか目を覚まさず、この目の前のダサい地味な奴と知り合いらしい。だけど、こいつのことだけ思い出せない。俺様にこんなダサい奴の知り合いはいないと思った。事故を利用して嘘をついていると勝手に思った。
そして、俺は目を覚まして一週間が経った。
すると、ノックする音がし、誰か病室に入ってきた。誰だ…?姉貴か?
「し、失礼します…」
俺は読んでいた本を閉じて顔を上げた。
「…お前また来たのかよ」
あの日以来だった。何でこいつまた来てんだよ。
「ご、ごめんね。でもどうしても神影に会いたくて…」
「会いたくてってお前ストーカーかよ。気持ち悪」
俺の言った言葉に顔をうつむける奴と一瞬嬉しいと思った自分に鳥肌がたった。
「はは…、ぼ、僕、神影に元気になってほしくて…、このお守り受け取ってほしい」
奴は力なく笑い、ポケットからお守りを取り出した。このお守りって…。確か俺が目を覚ました時、手を握っていた時に持ってたやつだ。
「いらねーよ。知らない奴のなんか」
思わず、受け取ろうとしたが我に返った。
「そ、そうだけど、でも渡したい」
奴はそっとテーブルの上にお守りを置いた。
「す、捨てても全然構わないよ。あ、あとこれ花束」
懲りずに次は花束を渡してきた。花束…?すると、花束をみると急に頭が痛くなった。
フラッシュバックのように途切れ途切れの記憶。
事故の前、俺は花屋によって、花束を買って誰かに会う予定だったみたいだ。
大切な何かを忘れている気がする。思い出せない。
「頭いてぇ…」
「み、神影?大丈夫?」
頭を抱えると、慌てて奴は駆け寄ってきた。俺はすぐに突き放し、その反動で奴は壁に背中を打った。突き放したのは俺なのに後悔した。
…頭が痛い。すごく痛い。
だめだ。今こいつといると、何をするかわからない。
「お前なんか出ていけよ。そういうのうざいんだよ!!」
早く俺の前から消えてくれ。これ以上、酷いことしたくないと本能的に思ってしまっている自分がいた。
「お前の顔なんか二度と見たくねぇ」
「ご、ごめんなさい…。か、帰るね!」
やっと出て行った。安心しているはずなのにどこか物足りなさを感じた。
知らない奴のことなんか何も思っていないのになんだよこれ。
背中、痛かっただろうな。さっき自分で突き放して奴は背中を壁にぶつけていた。
はぁ…、自分がわからない。
矛盾している自分がいる。
「…なんか苦しい」
そう、一人病室で呟いた。
それから数週間が経ち、俺は無事退院できた。
結局、あいつ…、あの日以来、来なかったな。無意識に探している俺がいる。別にいいだろ、あんなストーカー野郎のことなんか。そんな自分にいつしか腹が立ち考えないようにした。
身体が良くなって退院できても、まだ胸の痛みは癒えない。
久々に、学校に登校すると、たくさんの人から心配された。
事故のせいで携帯は壊れており、後から姉貴から聞いた話によると、薔薇100本の花束を持って誰かに会う予定だったと。薔薇100本ってさすがに恥ずかしいことしていると思った。
俺は一体、誰に渡すつもりだったんだ?薔薇の花束を渡すなんて…もしかして、恋人か?俺にそんなのいたら、事故った話を聞いて、すぐお見舞いにくるはずだろ。だけど彼女らしき人物は誰も来ていなかった。
もう意味がわかんねぇ…なにも考えたくない。
「ねぇ~神影。今日暇~?」
「暇じゃない」
「え~、少しくらいいいじゃない」
廊下を歩いているとギャルに絡まれた。俺の腕に抱き着いて胸を押しつけてくる。あと香水きつ…。近寄んな、ブス。そう言いたいけど、生徒会長である俺は我慢した。
ギャルの話を無視して廊下を曲がると誰かとぶつかった。
「ご、ごめんなさい。前を見てなくて…」
「お前…」
俺は目を見開く。ぶつかった相手はあいつだった。
「神影大丈夫~?」
同じ学校だったのか…。
「よ、良かった。た、退院できたんだね」
平然と俺に話しかけてきた。
「え~、なに知り合い?」
ギャルが興味津々にそう聞いてきた。
「違う。俺のストーカー」
「ストーカー?神影、可哀想~」
そう言って汚い笑い方をするギャルにウザイと思いながら奴を見ると、軽く頭を下げ、走ってどこかへ行ってしまった。
「何~、あいつ逃げちゃった」
やってしまった。
せっかく会えたのに。
俺…、最低だ。
自分で酷いこと言ったのに、まただよ。
後悔している自分がいた。
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