嫌われ者の僕

みるきぃ

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もしもの話

天山神影×佐藤あおい ②

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【神影side】



「あおい…その、えっと俺と付き合ってくれ」


緊張してしまい噛みながら初めて告白した。


決して口に出したり、本人には言えないが俺にはもったいないくらいの俺様の恋人、佐藤あおい。

あおいの見た目は、ダサい眼鏡をかけ、チビでどこもいいところがない奴だと初めて会った時はその印象だった。関わっていくうちに『守ってやりたい』という感情が芽生え、なぜか行動すべてが愛おしく思えた。

何かの拍子で眼鏡を外したあおいを見た時は、別人かと思った。こんなに性格も健気で、美しいくらいの見た目。反則だと思った。

内緒で付き合ってはいるが正直俺自身は、あおいは俺の恋人なんだって公言したいくらい。そう言ったらきっとあおいは『僕なんかが』なんてまた言うだろう。そこがまた可愛いなんて言ってやらねぇけど。



帰りはいつも一緒に帰る。人気のない校舎裏が俺らの待ち合わせ場所。小さく座って待っているあおい。俺が来ると嬉しそうにするのを見ると今すぐにもかけつけて抱きしめたくなる。照れるからやらないけど。帰り道は他愛もない会話をして過ごしていた。

ある時、恋人となってもまだ手くらいしか繋いだことなくて、あおいの隣にいるだけで理性との戦いだった。もう我慢ができず、強引にあおいの手を引き、狭い路地へと連れ込んだ。そして付き合って初めてのキスを交わした。息をするのも一生懸命なあおい。またそこが俺をおかしくさせた。

この子は俺が大切にし、幸せにしたい。




そして付き合って半年が経った頃、あおいの誕生日をむかえた。大好きな人の誕生日。素敵な一日にして祝ってやりたい。そう思い、一緒に過ごすことを約束した。

あおいの誕生日に愛し合いたいなんてこと考えてはニヤついて俺は正直調子に乗っていた。

また、少し古いやり方だけど、薔薇100本の花束を買ってプレゼントして、喜ばせたいと思った。花束を片手に、浮かれていたんだと思う。


大好きな人が待っている場所に向かう途中、俺は強い衝撃をうけ、そこから意識が遠のいていた。













意識がないはずなのに、誰かが泣いているのを感じ、今すぐ抱きしめてやりたいとか思ったり、目を覚まさない俺の手を優しく手を握ってくれる感覚に安心していたりした。


『早く、目を覚ましてよ…神影っ』

誰かの声。

俺の大好きな声。誰だっけ…。

思い出せない。





それからゆっくり意識が回復した。うっすら目を開けると、真っ白な天井がうつった。俺の部屋じゃない。



「う…ここは、」



俺がそうひとこと喋ると、隣から『神影…?』と誰かが俺の名前を呼んだ。

声がした方に視線を向けると、お守りをたくさん持って、俺の手を握っているダサい眼鏡をかけた地味な奴。

誰だ、こいつ。

俺の横で泣く知らない奴。知らない奴なのに泣いている姿を見ていると、胸がぎゅっとなった。


「神影、目を覚ましたのね」

女の人の声。昔から聞いたことある声。


「あれ、姉貴…」

泣きそうな顔の姉貴の姿。


「もう神影の馬鹿。心配させないでよ。ほら、あおいちゃんもずっとあなたのこと心配していたのよ」

「神影、良かった…っ」


知らない。



「……あおい?…つかお前、誰?」


「え…、」


「何、俺の手をなれなれしく触ってんの」


「ご、ごめんなさい…」


奴は謝りながら、握っていた俺の手を離した。手が離れた瞬間、自分から言ったくせに俺はなぜかモヤっと嫌な感じがした。



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