嫌われ者の僕

みるきぃ

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嫌われ者

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【ゆうside】



気持ちよく目が覚めると俺と一緒のベッドで寝ているあおいの姿があった。


……本当可愛い。もう自然と口元が緩んでしまう。ぱっちりクリクリした目。スベスベして透き通った白い肌。触れたら壊れそうなくらい小さくて華奢な身体。まさに美少年。俺だけが君の全てを知っている。

笑みを浮かべ、そんな優越感に浸ってあおいが起きるまで愛らしい寝顔を見ていた。


…全部、俺のものだよ。




それと今日は、とても危なかった。なぜなら、あおいがいつも使用しているはずの眼鏡を壊したと言ってそのまま学校に行くと言うのだ。もちろん、止めるに決まっている。



俺以外に男に、素顔を見せる必要なんてないでしょ?

全て、俺だけが知っていればいいこと。他の奴の目には、いっさい入れたくない。もし、このまま行かせてしまったら、狼の群れに放り込むのと同じ。すぐに食べられてしまう。


だから、こんなこともあろうかと俺は、前もってあおいのと同じ瓶底みたいな眼鏡をたくさん購入した。


あおいには『お母さんから』という口実を作って話をまとめた。そうでもしないと、きっとあおいのことだから遠慮してしまうだろう。



ちなみに俺は、あおいより一つ年上で2年。頭の良さと顔の良さは、自覚している。


だから、俺のクラスは、S。

Sクラスというのは、家柄、容姿、頭脳、運動、どれか一つでも完璧であれば入れるシステム。

俺は、もちろん全てにおいてクリアしている。家だって、あおいは、知らないと思うけど超がつく程の金持ち。


特待生もなれば、部屋を一人で使うことができる。当たり前に俺は、一人部屋。


訳あって、俺の部屋にあおいを泊めている。











……ねぇ、

俺があおいを他の男と二人きりにさせると思う?








そんなのどうしても許せないんだ。実は同室の奴を呼び出して、脅しちゃったんだ、俺。


まぁ、あおいは『嫌われてる、追い出された』と思っているが、実際は……ふふ。



しょうがないことだよね。


そして行く宛を失ったあおいは、迷わず俺に頼ってきた。もうそれがどうしようもなく嬉しくて嬉しくて。

こうなるってことは、分かりきっていた。もし、仮にあおいが誰かに頼っていたら、俺はその誰かを殺していたかもしれないね。



…冗談だよ。

だって、この学園であおいは、"俺だけ"なんだから。他の誰でもなく、この俺。


ちなみに、あおいの学園でのあの容姿のせいか皆に嫌われている。


そして、何もかも完璧な俺が隣にいたら周りはどう反応するだろうか。


そりゃあ、自然と敵対心持つよね。


そうしたら、誰もあおいに近寄らないし、逆に嫌われていく。…俺にとっては、とても好都合。あおいを独占できる。




この学園は、Sクラスの他にA、B、C、D、Zの5クラスある。


Aクラスは、Sクラス程ではないが完璧。

Bクラスは、ある程度まあまあできる。

Cクラスは、何もかも普通。

Dクラスは、まあまあスポーツしかできない奴だけ。


そして、残るは、…Zクラス。このクラスは、不良とか、頭の悪い者が入る。

残念ながら、あおいはZクラス…。瓶底眼鏡のせいもあり、ランクは下。あの眼鏡さえ無ければ確実にSだ。

それに運動音痴で、勉強も出来ない子なんだ…あおいは。昔から、身体も弱いから最初、Zクラスと聞いた時は、ものすごく危険だと思った。

けど、噂で聞く以上、皆に無視され、不良達にはパシられているようだ。


あおいに触れる者は、いないから安心したが、俺のあおいにパシった奴は、始末してあげてる。

だけど、その不良等は、しめてもまだあおいをコキ使うんだよね。本当、イライラする。


まぁ、でもしょうがないか…。だって、直接この俺がしめてるわけじゃないし。他の奴に、『アイツ等殺れ』と命令しているだけだから。




皆、もっとあおいを嫌うといいよ。…暴力は、許さないけど。




俺だけがあおいを好きでいればいい。

ただそれだけのこと。




そしていつも通り朝食を食べに食堂に行った。入った瞬間、チワワどもの黄色い叫び声に包まれ、うざかった。若干、あおいに対しての皮肉い言葉もあったけど。

そこで俺は、優しく気にしないようあおいに伝えた。あんな奴らのために考え込む必要ない。


空いている席に腰を下ろし、メニューを聞いた。

あおいからしてみれば、俺は、ただの優しいお兄ちゃん的存在なんだろうけど、実際は、下心丸出しの男にすぎない。


あおいに嫌われないように日頃から“完璧”を意識している。


ま、ちょっと朝、あおいが眼鏡を外して行くと聞いた時は、少し素が出たけど、なんとか誤魔化せた。


そんなことを思いつつも、テーブルの上に置かれているタッチパネル式のやつで注文した。



そしたら、すぐに注文したものが運ばれてきた。…あおいのだけね。


俺が注文したのは、A定食。先に注文したはずなのに毎回あおいが選ぶサラダがすぐ運ばれてくる。


ウェイターは、お待たせいたしましたと笑顔で言い、あおいの手前におく。そしたら、あおいは、軽く頭を下げてお礼を言った。


この時、ウェイターの頬が赤く染まっていたことに俺は気づいた。そして、嬉しそうに戻りやがった。




…絶対、アイツ、あおいに気があるな。




まぁ最初は、このウェイター『消そうかな?』と思ったけどあおいに手を出してないし接点などないからまだ俺は、行動に出ない。


…もしものことがあったら必ず消す。



本当俺以外の奴に触れられたら心底、嫌だ。不愉快極まりない。





「キャー!!生徒会よ」


「美しすぎます!!」


「抱いてくださーい!!」




とうとう奴らが来た。

生徒会。


コイツらは一言で言うと、うざい。




退屈だからって、俺のあおいをターゲットにして遊ぶんじゃねぇよ。俺は平然としているが、いつも殺意を剥き出している。

遊びって言っても大概は、いじめだ。俺の力があれば、生徒会なんか余裕で潰せる。



だが、なぜ俺がそうしないかって…?そんなの決まってる。



「おい、神影。あっちにあのダサい根暗くんがいるぜ?」


「はっ?庶民の分際で、のうのうと食事してやがる」


生徒会の奴らは、そう話しながら、俺たちのいるところまで近づいてきた。



つまり、生徒に好評価な生徒会に嫌われていれば、より、あおいの噂は広まって本当に“俺だけ”になる。


あおいの心…そして身体…全て俺が満たしてあげれる。


そう考えただけで自然と口角が上がってしまうのも無理はない。




ドンッ

ガタンッ



次の瞬間、生徒会長がテーブルを思いきり蹴った。その拍子に、上にのっていたあおいが注文したばかりのサラダが無惨にも床に落ちてしまった。


「おら、どけよ。根暗」


ニヤと怪しげな笑みを浮かべているのは天山 神影。2年の生徒会長。生徒会皆は、俺と同じクラス。でも滅多にクラスには来ないけど。


「ゆうもおかしいよ?こんな幼なじみと食事なんかし ちゃってさ」



会計が俺に向けてバカな発言をしやがった。



この俺がおかしいだと…?頭イカれてんじゃねぇの?


「あおいは、良い子だよ」


俺は、怒りを抑えつつ、会計の野郎にそう伝えて優等生キャラを演じる。

そして、下に落ちてしまったサラダの皿を拾った。

そしたら毎度のように俺の親衛隊どもが



『ゆう様はなんてお優しい!!』

『何もかも完璧な方です!!』

『素敵!』


などの声が聞こえてくる。



…あぁ、マジうぜぇ。




「…ゆう、ごめんね」



小さめの弱々しい声が聞こえたと思ったら慌ててあおいも俺と同じようにしゃがんだことがわかった。




あおいは、俺に本当に申し訳なさそうに、ごめんごめんと謝りながら俯き、綺麗な小さな手でサラダを拾いあげていた。




それを見た生徒会は、


「うわっ、汚ねっ」

「下品」

「マジ視界から消えろよ」



口を開ける度にあおいに対してのひどい言葉を平気で言い放った。




 
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