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【第二部】
61、俺たち付き合ってます
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土日二日間使った学祭も無事に終わり、その打ち上げで学生会館を借りて、お酒やらジュースやらお菓子や食べ物を持ち込んでみんなで楽しんでる、のはいいんだけど。
見たくなくても視界の片隅に映る光景にさっきからイライラしていた。
「いいの?あれ」
「知らない。嫌だったら自分で断るでしょ」
大部屋の壁際にいる私たちから少し離れたところに、三年生のまりか先輩に迫られている慧がいた。目線だけでそれを訴えてくる一花に投げやりに答え、ビールの缶に口をつける。
「まりか先輩って酔うとキス魔になるよね。一年生の時に私もキスされた」
「何それ詳しく」
「今は私の話じゃなくて、あれをどうにかした方がいいと思うよ。本当にキスされちゃうかも」
「したらいいんじゃないの? 慧も嬉しそうにしてるし」
「アンタ酔ってるでしょ。どう見ても困ってるように見えるけど。よく見なよ」
ガブガブビールを飲んでいると、一花からそれを取り上げられた。
「見たくないのっ」
口を尖らせて一花からビールを取り返し、再びそれを口に含む。
「も~面倒くさいな~。慧と付き合ってるって言っちゃえばいいのに」
本気で面倒くさそうにしている一花に反論しようとしたとき、いきなり後ろから誰かにホールドされ、びっくりして後ろを振り返る。
振り向くと、そこにいたのは興奮したように瞳を輝かせるみくちゃんだった。
「花音先輩っ、聞いてください」
「何?どした?」
「さっき雅史くんに番号聞いたら教えてもらえたんです」
嬉しそうにそんな報告をされ、一花と顔を見合わせる。
「まだ交換してなかったのね……。でも教えてくれて良かったじゃん」
そこから?と言いたそうにしながらも、祝福してあげた一花にみくちゃんはこくこくと頷く。
「良かったね、みくちゃん。私も嬉しい」
「ありがとうございますっ。花音先輩たちも上手くいってるみたいで何よりです。昼間会いましたよね」
「うちはダメだよ、もう別れるかも。あそこで浮気してるし」
「わあ~本当ですね。花音先輩みたいな可愛い彼女がいるのに浮気するなんてサイテーですね」
「昼間は私のことが大好きだって言ってくれたのに、もう他の女といちゃついてるからね。そんなもんだよね、人間なんて。みくちゃんも気をつけて」
「はいっ、気をつけますね」
悪ノリして泣き真似をすると、お酒を飲んでいないはずのみくちゃんまでそれに付き合ってくれて、そんな私たちを一花が呆れたように見ていた。
「何言ってんの。彼女の目の前で堂々と浮気する馬鹿がどこにいるのよ。浮気するにしてももう少し上手くやるでしょ」
若干イラッとしながらもおふざけでそんなことを話していると、まりか先輩が引き気味の慧に抱きついていて。こちらにまで聞こえるぐらいの大きな声で何かを訴えている。
「私とキスするか、雅史とキスするか選んで!!」
何でそうなるかなぁ。
ああもうダメだ、さすがに限界。
「のん?」
急に立ち上がると一花に声をかけられたけど、それにも答えずに慧の元に向かう。
「慧は私のだから、ダメっ」
まりか先輩と慧の間に入り、慧の顔を掴んで唇を重ねる。
「ええ……マジ……?」
「どういうこと?」
「のんちゃんと慧って付き合ってるの?」
周りがざわざわする声が聞こえたけど、もうどうでもいいや。何秒かキスしてから唇を離すと、驚いている慧と目が合った。慧は固まってたけど、しばらくして私を抱き寄せ、今度は慧の方からキスをされる。
「何見せられてるの、これ」
「ひゅ~♪」
「いいぞ~もっとやれ~」
初めは戸惑っていたみんなの声も、しだいに冷やかすような声に変わっていく。なぜか拍手まで聞こえてきたし。もうこれ完全にバレたよね。
「花音と慧って付き合ってるの?」
私たちが唇を離すと、あっけにとられているまりか先輩からそんなことを聞かれる。
「付き合ってます」
私が何か言う前に慧が即答し、私もこくりと頷くと、さっきまで赤くなっていたまりか先輩の顔色がさっと青くなる。
「ごめんねぇ、花音~。二人が付き合ってるなんて全然知らなかったのぉ。ふざけてただけだからね? 本気で慧のこと奪ろうなんて思ってないから、怒らないで?」
すがりつくようにまりか先輩から抱きつかれ、なだめるように背中をなでてから、やんわりとその腕から逃れる。
「いえいえ~大丈夫です。怒ってませんよ? ちょっと頭冷やしてきますね」
たぶん本当に酔ってふざけてただけだと思うし、この調子じゃ明日には忘れてるんだろうし、別にまりか先輩に怒ってるわけじゃないけど。でも今になって急に自分の行動が恥ずかしくなってきた。とりあえずこの場から消えたい。
見たくなくても視界の片隅に映る光景にさっきからイライラしていた。
「いいの?あれ」
「知らない。嫌だったら自分で断るでしょ」
大部屋の壁際にいる私たちから少し離れたところに、三年生のまりか先輩に迫られている慧がいた。目線だけでそれを訴えてくる一花に投げやりに答え、ビールの缶に口をつける。
「まりか先輩って酔うとキス魔になるよね。一年生の時に私もキスされた」
「何それ詳しく」
「今は私の話じゃなくて、あれをどうにかした方がいいと思うよ。本当にキスされちゃうかも」
「したらいいんじゃないの? 慧も嬉しそうにしてるし」
「アンタ酔ってるでしょ。どう見ても困ってるように見えるけど。よく見なよ」
ガブガブビールを飲んでいると、一花からそれを取り上げられた。
「見たくないのっ」
口を尖らせて一花からビールを取り返し、再びそれを口に含む。
「も~面倒くさいな~。慧と付き合ってるって言っちゃえばいいのに」
本気で面倒くさそうにしている一花に反論しようとしたとき、いきなり後ろから誰かにホールドされ、びっくりして後ろを振り返る。
振り向くと、そこにいたのは興奮したように瞳を輝かせるみくちゃんだった。
「花音先輩っ、聞いてください」
「何?どした?」
「さっき雅史くんに番号聞いたら教えてもらえたんです」
嬉しそうにそんな報告をされ、一花と顔を見合わせる。
「まだ交換してなかったのね……。でも教えてくれて良かったじゃん」
そこから?と言いたそうにしながらも、祝福してあげた一花にみくちゃんはこくこくと頷く。
「良かったね、みくちゃん。私も嬉しい」
「ありがとうございますっ。花音先輩たちも上手くいってるみたいで何よりです。昼間会いましたよね」
「うちはダメだよ、もう別れるかも。あそこで浮気してるし」
「わあ~本当ですね。花音先輩みたいな可愛い彼女がいるのに浮気するなんてサイテーですね」
「昼間は私のことが大好きだって言ってくれたのに、もう他の女といちゃついてるからね。そんなもんだよね、人間なんて。みくちゃんも気をつけて」
「はいっ、気をつけますね」
悪ノリして泣き真似をすると、お酒を飲んでいないはずのみくちゃんまでそれに付き合ってくれて、そんな私たちを一花が呆れたように見ていた。
「何言ってんの。彼女の目の前で堂々と浮気する馬鹿がどこにいるのよ。浮気するにしてももう少し上手くやるでしょ」
若干イラッとしながらもおふざけでそんなことを話していると、まりか先輩が引き気味の慧に抱きついていて。こちらにまで聞こえるぐらいの大きな声で何かを訴えている。
「私とキスするか、雅史とキスするか選んで!!」
何でそうなるかなぁ。
ああもうダメだ、さすがに限界。
「のん?」
急に立ち上がると一花に声をかけられたけど、それにも答えずに慧の元に向かう。
「慧は私のだから、ダメっ」
まりか先輩と慧の間に入り、慧の顔を掴んで唇を重ねる。
「ええ……マジ……?」
「どういうこと?」
「のんちゃんと慧って付き合ってるの?」
周りがざわざわする声が聞こえたけど、もうどうでもいいや。何秒かキスしてから唇を離すと、驚いている慧と目が合った。慧は固まってたけど、しばらくして私を抱き寄せ、今度は慧の方からキスをされる。
「何見せられてるの、これ」
「ひゅ~♪」
「いいぞ~もっとやれ~」
初めは戸惑っていたみんなの声も、しだいに冷やかすような声に変わっていく。なぜか拍手まで聞こえてきたし。もうこれ完全にバレたよね。
「花音と慧って付き合ってるの?」
私たちが唇を離すと、あっけにとられているまりか先輩からそんなことを聞かれる。
「付き合ってます」
私が何か言う前に慧が即答し、私もこくりと頷くと、さっきまで赤くなっていたまりか先輩の顔色がさっと青くなる。
「ごめんねぇ、花音~。二人が付き合ってるなんて全然知らなかったのぉ。ふざけてただけだからね? 本気で慧のこと奪ろうなんて思ってないから、怒らないで?」
すがりつくようにまりか先輩から抱きつかれ、なだめるように背中をなでてから、やんわりとその腕から逃れる。
「いえいえ~大丈夫です。怒ってませんよ? ちょっと頭冷やしてきますね」
たぶん本当に酔ってふざけてただけだと思うし、この調子じゃ明日には忘れてるんだろうし、別にまりか先輩に怒ってるわけじゃないけど。でも今になって急に自分の行動が恥ずかしくなってきた。とりあえずこの場から消えたい。
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