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【第二部】
43、同じことの繰り返し
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「あっつ……」
寝ている間は高めの温度に設定してたエアコンがいつのまにか切れていて、寝苦しさに目を覚ます。ノーブラでキャミソールと下着だけしか身につけていない身体も、微妙に汗ばんでいて気持ち悪い。
今何時かな。
ここ数日バイトに行く以外はずーっと慧と部屋でいちゃいちゃしてたから、時間の感覚がなくなってる。外はもうけっこう明るそうだけど、今日何か予定あったかな。
時間と予定を確かめようとスマホに手を伸ばしかけ、隣にいるはずの慧がいないことに気がつく。
「あれ、慧……?」
帰ったのかな。でも、何も言わずに帰るなんてそんなのある? 私、また何かやらかした?
慧がどこに行ったのか考えていたら、廊下の方から音がしてそちらに視線を向ける。しばらくしてドアを開けて部屋に入ってきた慧と目が合って、一気に力が抜けた。
「シャワー借りました。声かけようと思ったけど、よく眠ってたから起こせなくて」
「あ、うん。それはいいんだけど、帰ったのかと思ってびっくりした」
まだ髪の毛が濡れている慧がこちらに近づいてきて、エアコンをつけてから、ベッドに腰かける。
「さすがに帰る時は声かけてから帰りますよ」
「だよね。でもさ、慧怒って帰っちゃうことよくあるじゃん。たしか二回くらいあったよね?」
「あ~……。ありましたね」
その二回とも私が慧を怒らせるようなことしたからだし、あれは帰っちゃっても仕方ないんだけど。でも、目を覚ました時に慧がいなくて一瞬不安になった。
慧"も"私のそばからいなくなっちゃったのかなって。なんか、ダメだ私……。
慧となら大丈夫だって思ったのに、好きになればなるほど不安になる。もし慧がいなくなっちゃったらどうしようって不安になる。
これじゃ、また同じことの繰り返しだよ……。
「花音先輩?」
大好きな人と別れた日の朝を思い出してうつむいていると、心配そうに顔を覗き込まれ、慧の身体にぎゅーって抱きつく。
「だからね、また私が怒らせるようなことして慧が帰っちゃったのかと思って」
「帰らないですよ。怒るようなことは特に何も———」
そんなことを話しながら慧は少しだけ身体を離して私の顔を見たけど、その途端ぎょっとしたような表情を浮かべ、私の顔を二度見した。
「泣いてるんですか?」
「泣いてない……」
慧の身体に自分の顔を押しつけてグリグリする。私めんどくさすぎ。なんなの、彼氏がシャワー行って戻ってきたら泣いてるとか。
「いや、泣いてますよね。不安にさせました?」
こんな顔を見せたくなくて慧に抱きついてたのに、両頬に手を置かれて上を向かされる。何て言ったらいいのか分からなくてただ首を横に振っていたら、ぎゅっと抱きしめられた。
「もし不安にさせてたらごめん。これからは勝手に帰ったりしないから」
「違うよ……。慧は悪くないから謝らないで」
「本当に? 何かあったら何でも言ってください」
こんなに慧は優しくて私を大切にしてくれるのに、どうして不安になるんだろう。慧が私を好きでいてくれればいてくれるほど、慧の気持ちがなくなる日が来ることが怖くなる。
「花音先輩、」
何かを言おうとした慧をベッドに押し倒し、上にのっかって唇を奪う。
「しよ?」
「いや話の途中ですよね。はぐらかさないでもらってもいいですか」
「しないの?」
「……します」
誘うような目で見ると、くるっと体勢を変えられて慧の下に。やめろ言うわりには、誘うと乗ってくるんだよね。
クスクス笑っていると、その唇を慧の唇で塞がれた。
「言いたくないなら言わなくてもいいですけど、俺は花音先輩が好きです。多少ケンカしたりしても嫌いになることはありませんから」
「……うん」
私を見つめる慧の目が優しくて、胸が締め付けられる。
慧と一緒にいると、すごく幸せ。
ぎゅって抱きしめられると幸せ。
服を脱いで抱き合わなくても、慧にキスされると幸せ。
付き合う前よりもずっとずっと慧が好き。
どんどん好きになる。
だけど、今まで空っぽだったところにいきなり与えられた幸せが大き過ぎたのかな。なんだかその幸せに追いつめられているみたいな気分。
寝ている間は高めの温度に設定してたエアコンがいつのまにか切れていて、寝苦しさに目を覚ます。ノーブラでキャミソールと下着だけしか身につけていない身体も、微妙に汗ばんでいて気持ち悪い。
今何時かな。
ここ数日バイトに行く以外はずーっと慧と部屋でいちゃいちゃしてたから、時間の感覚がなくなってる。外はもうけっこう明るそうだけど、今日何か予定あったかな。
時間と予定を確かめようとスマホに手を伸ばしかけ、隣にいるはずの慧がいないことに気がつく。
「あれ、慧……?」
帰ったのかな。でも、何も言わずに帰るなんてそんなのある? 私、また何かやらかした?
慧がどこに行ったのか考えていたら、廊下の方から音がしてそちらに視線を向ける。しばらくしてドアを開けて部屋に入ってきた慧と目が合って、一気に力が抜けた。
「シャワー借りました。声かけようと思ったけど、よく眠ってたから起こせなくて」
「あ、うん。それはいいんだけど、帰ったのかと思ってびっくりした」
まだ髪の毛が濡れている慧がこちらに近づいてきて、エアコンをつけてから、ベッドに腰かける。
「さすがに帰る時は声かけてから帰りますよ」
「だよね。でもさ、慧怒って帰っちゃうことよくあるじゃん。たしか二回くらいあったよね?」
「あ~……。ありましたね」
その二回とも私が慧を怒らせるようなことしたからだし、あれは帰っちゃっても仕方ないんだけど。でも、目を覚ました時に慧がいなくて一瞬不安になった。
慧"も"私のそばからいなくなっちゃったのかなって。なんか、ダメだ私……。
慧となら大丈夫だって思ったのに、好きになればなるほど不安になる。もし慧がいなくなっちゃったらどうしようって不安になる。
これじゃ、また同じことの繰り返しだよ……。
「花音先輩?」
大好きな人と別れた日の朝を思い出してうつむいていると、心配そうに顔を覗き込まれ、慧の身体にぎゅーって抱きつく。
「だからね、また私が怒らせるようなことして慧が帰っちゃったのかと思って」
「帰らないですよ。怒るようなことは特に何も———」
そんなことを話しながら慧は少しだけ身体を離して私の顔を見たけど、その途端ぎょっとしたような表情を浮かべ、私の顔を二度見した。
「泣いてるんですか?」
「泣いてない……」
慧の身体に自分の顔を押しつけてグリグリする。私めんどくさすぎ。なんなの、彼氏がシャワー行って戻ってきたら泣いてるとか。
「いや、泣いてますよね。不安にさせました?」
こんな顔を見せたくなくて慧に抱きついてたのに、両頬に手を置かれて上を向かされる。何て言ったらいいのか分からなくてただ首を横に振っていたら、ぎゅっと抱きしめられた。
「もし不安にさせてたらごめん。これからは勝手に帰ったりしないから」
「違うよ……。慧は悪くないから謝らないで」
「本当に? 何かあったら何でも言ってください」
こんなに慧は優しくて私を大切にしてくれるのに、どうして不安になるんだろう。慧が私を好きでいてくれればいてくれるほど、慧の気持ちがなくなる日が来ることが怖くなる。
「花音先輩、」
何かを言おうとした慧をベッドに押し倒し、上にのっかって唇を奪う。
「しよ?」
「いや話の途中ですよね。はぐらかさないでもらってもいいですか」
「しないの?」
「……します」
誘うような目で見ると、くるっと体勢を変えられて慧の下に。やめろ言うわりには、誘うと乗ってくるんだよね。
クスクス笑っていると、その唇を慧の唇で塞がれた。
「言いたくないなら言わなくてもいいですけど、俺は花音先輩が好きです。多少ケンカしたりしても嫌いになることはありませんから」
「……うん」
私を見つめる慧の目が優しくて、胸が締め付けられる。
慧と一緒にいると、すごく幸せ。
ぎゅって抱きしめられると幸せ。
服を脱いで抱き合わなくても、慧にキスされると幸せ。
付き合う前よりもずっとずっと慧が好き。
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だけど、今まで空っぽだったところにいきなり与えられた幸せが大き過ぎたのかな。なんだかその幸せに追いつめられているみたいな気分。
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