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【第一部】

24、プレゼント

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 学期末のテストも終わり、夏休みに入った8月最初の水曜日。大学もサークルもなく、バイトも夕方からで午後の予定がまるっと空いたので、市電に乗って大きな駅まで買い物に行くことにした。
 
 ———どうしようかな。
 駅前のビルに入っているショップを色々見てみたけど、どれもしっくりこない。
 
 明日は慧の誕生日。いつもお世話になってるし、さすがに誕生日プレゼントぐらい渡した方がいいかなと思ったけど、服をあげるのもなんか違う気がするし、部屋のインテリアもシンプルだから雑貨とかも必要なさそう。
 
 う~ん……。迷ってるうちに時間がなくなってきたので、最終手段でアクセサリーショップに寄ってみる。
 
 そこはあまりお金がない下宿生にも優しいお値段設定かつセンスの良いお店で、良さそうなものもいくつかあった。
 
 慧たくさん持ってそうだし、いらないかもしれないけど、やっぱりピアスかな。ピアスだったら、ひとつくらい余分にあっても邪魔にならないよね。よし買おう。
 
 小さなフープ状の黒いピアスをひとつ買って、市電に乗り、そのままバイト先のスーパーに向かった。
 
 *
 
「そうだ。これ、プレゼント」
「え?」
 
 22時にバイトを終え、たまたま上がる時間が一緒になった藤田くんとファミレスで夜食にパスタを食べている最中。いきなりテーブルの上に小さな包みを置かれ、目が点になってしまった。
 
 私の誕生日はとっくに終わったし、特にプレゼントをもらうようなこともなかったはず。
 
「ありがとう?」
 
 よく分からなかったけど、とりあえずお礼を言って封を開けてみる。そこに入ってたものを見て、ますますぎょっとしてしまった。
 
 だってコレ、数万円は余裕でするブランドのネックレスだよ?
 
「私誕生日じゃないし、これすごく高かったんじゃない?」
「ほしがってたよね?」
 
 ええ……。きょとんとした顔でそう返ってきて、つい顔がひきつってしまう。
 
 たしかに話の流れで、ここのブランドのアクセサリー可愛いなとは以前言ったかもしれないけど。でもただ好きって言っただけで、買ってなんて一言も言ってない。
 
 当たり前だけど藤田くんとは付き合ってないし、それどころかご飯行くのもこれで三回目だよ?
 
 なんだろう。どういうつもりなのか分からないけど、ちょっと怖い……。
 
「気に入らなかった?」
「ううん! そんなことないよ。ありがとう、嬉しい」
 
 不安そうに尋ねられたので、慌てて笑顔を作る。その場でネックレスをつけてみると、藤田くんはすごく嬉しそうにしている。
 
 なんだかなぁ。断った方が良かったのかなぁ。
 
 でももう買っちゃったのに突き返しても困らせるだけのような気もするし、もしかしたら親がお金持ちで色々な人にプレゼントを配り歩いてる人なのかもしれないし。
 
 なんとなくモヤモヤが残りつつも、その日は適当なところで切り上げて家に帰った。
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