4 / 29
4話 珠希ちゃんと渡辺くん
しおりを挟む
「そういやさぁ、保健室にくるくらいなんだから、つっきー体調悪かったんだよね。
ごめんね~、あたしの話に付き合わせちゃって。あたし、夢中になるとすぐにまわりが見えなくなるんだ。ほんとごめんっ」
保健室を出たとたん、珠希ちゃんに目の前でごめん!と手を合わせられたけど、笑いながら首を横にふる。
「ううん、大丈夫だよ。
珠希ちゃんと話してたら、逆に元気が出た」
珠希ちゃんと話していたら、いつのまにか頭の中のザワザワも止まっていた。きっと珠希ちゃんがいなかったら、私は保健室でも延々と一人反省会の続きをしていたと思う。
珠希ちゃんがいてくれて良かった。
「本当~? それならよかったぁ」
笑顔を向ける珠希ちゃんに私も笑顔を返す。普段は中々笑えなくて、無理矢理笑顔を作ってるのに、珠希ちゃんといると自然に笑顔になってしまう。
珠希ちゃんって本当に明るくて、裏表もなくていいな。どうしたらこんなに明るい性格になれるんだろう。
「あの、珠希ちゃんは大丈夫なの?
失恋……」
私ばっかり元気をもらっちゃったけど、そういえばと珠希ちゃんの失恋話を思い出す。
それを切り出すと、珠希ちゃんは大げさに泣き真似を始める。
「大丈夫、……じゃな~い。え~ん、悲しい……あっ! 圭佑じゃん!」
大げさに泣き真似をしてたけど、向こうのほうからうちのクラスの渡辺くんが歩いてきたのを見つけると、珠希ちゃんは勢いよく手を振った。
渡辺くんの方も小さく手をあげて、それからいつものクールな表情をほんの少しだけゆるませる。
渡辺くんでも、あんな顔するんだ。
渡辺くんでも、って言い方は失礼かもしれないけど、渡辺くんが女子に笑いかけるの初めて見た気がする。
「なに~? また保健室?
またなんかあったの?」
「いや、今回は良いこと」
「ふ~ん? 今度あたしにも教えてよ?」
渡辺くんと珠希ちゃんはすれ違う時にそんなことを話していたけど、なんだか二人にしか分からない会話という感じですごく親密そう。
なんとなく渡辺くんを目で追っていると、渡辺くんは慣れた様子で保健室に入っていった。みんなが言っていたように、休み時間にはよく保健室に行くのかな。
それも気になるけど、渡辺くんと珠希ちゃんがずいぶん仲良さそうだったのも気になる。
「珠希ちゃんと渡辺くんって仲良かったの?」
教室までの階段を上りながら、気になったことを聞いてみると、珠希ちゃんはにやりと笑う。
「まあね。ていうか、元カレ?
あれ、知らなかった?」
「ええっ? そうなの?」
「一年の時にちょっとだけ、ね~。
でもすぐ別れたから、つっきーは知らないか」
珠希ちゃんと渡辺くんが付き合ってた?
何でもないことのようにさらっと衝撃的なことを暴露されて、さすがにびっくりしてしまった。
「そうなんだ。別れたのに友だちでいられるなんてすごいね」
誰とも付き合ったことがないから分からないけど、そういうものなのかな? さっぱりしてて珠希ちゃんらしいと言えば、らしいけど……。
「あ~、あたしも元カレと友だちになるとかムリ~。圭佑だけはなぜか友だちなんだよね。
あいつもさっぱりしてるし、意外とイイヤツだからさ」
渡辺くんのことを話す珠希ちゃんは、いつもの元気で明るい珠希ちゃんとは少し違って、おだやかな笑顔を浮かべている。
よく分からないけど、元カレの中で渡辺くんだけが特別なんだね。
渡辺くんもなんとなくいつもと違ってて、珠希ちゃんには優しかったような気もする。
本当にもうお互い友だちとしか思ってないのかな?
「もしかして、今でもちょっと好きだったりするの?」
「え~アハハハハ、なにそれやめてよ~。
やだやだ、ナイナイ。あたし前カレ一筋だったもん」
渡辺くんのことをまだ好きなのか聞くと、珠希ちゃんはおかしそうにケタケタ笑いながらもきっぱりとそれを否定した。
珠希ちゃんは笑い過ぎて出た涙をぬぐうと、私の顔をおかしそうにじっとのぞき込む。
「あたしだよ?
好きな気持ちを隠して、友だちでいられると思う?もし今でも圭佑のこと好きだったら、もっとがつがついってるって」
それもそうかも……。
珠希ちゃんって良くも悪くも嘘がつけないタイプだし、もしもまだ渡辺くんのことが好きだったら隠せないだろうな。
そもそもわざわざ隠したりしないで、積極的にアピールしてそう。
納得してそうだねと頷くと、珠希ちゃんは分かればよろしい!となぜか得意気な顔をした。
もう今はただの友だちみたいだけど、珠希ちゃんと渡辺くんは昔付き合ってたんだ。
やっぱり噂って当てにならないな。
みんなは渡辺くんが人妻キラーだとか年上しか好きになれないみたいなこと言ってたけど、普通に同世代の珠希ちゃんと付き合ってたんだね。
「じゃ、あたしここだから。またね」
「うん、またね」
珠希ちゃんは二年二組の教室の前で一度足をとめ、私に手を振ってから教室に入っていく。
珠希ちゃんのおかげか、私が教室に戻る足取りも、保健室に行く前よりも軽くなっている気がした。
ごめんね~、あたしの話に付き合わせちゃって。あたし、夢中になるとすぐにまわりが見えなくなるんだ。ほんとごめんっ」
保健室を出たとたん、珠希ちゃんに目の前でごめん!と手を合わせられたけど、笑いながら首を横にふる。
「ううん、大丈夫だよ。
珠希ちゃんと話してたら、逆に元気が出た」
珠希ちゃんと話していたら、いつのまにか頭の中のザワザワも止まっていた。きっと珠希ちゃんがいなかったら、私は保健室でも延々と一人反省会の続きをしていたと思う。
珠希ちゃんがいてくれて良かった。
「本当~? それならよかったぁ」
笑顔を向ける珠希ちゃんに私も笑顔を返す。普段は中々笑えなくて、無理矢理笑顔を作ってるのに、珠希ちゃんといると自然に笑顔になってしまう。
珠希ちゃんって本当に明るくて、裏表もなくていいな。どうしたらこんなに明るい性格になれるんだろう。
「あの、珠希ちゃんは大丈夫なの?
失恋……」
私ばっかり元気をもらっちゃったけど、そういえばと珠希ちゃんの失恋話を思い出す。
それを切り出すと、珠希ちゃんは大げさに泣き真似を始める。
「大丈夫、……じゃな~い。え~ん、悲しい……あっ! 圭佑じゃん!」
大げさに泣き真似をしてたけど、向こうのほうからうちのクラスの渡辺くんが歩いてきたのを見つけると、珠希ちゃんは勢いよく手を振った。
渡辺くんの方も小さく手をあげて、それからいつものクールな表情をほんの少しだけゆるませる。
渡辺くんでも、あんな顔するんだ。
渡辺くんでも、って言い方は失礼かもしれないけど、渡辺くんが女子に笑いかけるの初めて見た気がする。
「なに~? また保健室?
またなんかあったの?」
「いや、今回は良いこと」
「ふ~ん? 今度あたしにも教えてよ?」
渡辺くんと珠希ちゃんはすれ違う時にそんなことを話していたけど、なんだか二人にしか分からない会話という感じですごく親密そう。
なんとなく渡辺くんを目で追っていると、渡辺くんは慣れた様子で保健室に入っていった。みんなが言っていたように、休み時間にはよく保健室に行くのかな。
それも気になるけど、渡辺くんと珠希ちゃんがずいぶん仲良さそうだったのも気になる。
「珠希ちゃんと渡辺くんって仲良かったの?」
教室までの階段を上りながら、気になったことを聞いてみると、珠希ちゃんはにやりと笑う。
「まあね。ていうか、元カレ?
あれ、知らなかった?」
「ええっ? そうなの?」
「一年の時にちょっとだけ、ね~。
でもすぐ別れたから、つっきーは知らないか」
珠希ちゃんと渡辺くんが付き合ってた?
何でもないことのようにさらっと衝撃的なことを暴露されて、さすがにびっくりしてしまった。
「そうなんだ。別れたのに友だちでいられるなんてすごいね」
誰とも付き合ったことがないから分からないけど、そういうものなのかな? さっぱりしてて珠希ちゃんらしいと言えば、らしいけど……。
「あ~、あたしも元カレと友だちになるとかムリ~。圭佑だけはなぜか友だちなんだよね。
あいつもさっぱりしてるし、意外とイイヤツだからさ」
渡辺くんのことを話す珠希ちゃんは、いつもの元気で明るい珠希ちゃんとは少し違って、おだやかな笑顔を浮かべている。
よく分からないけど、元カレの中で渡辺くんだけが特別なんだね。
渡辺くんもなんとなくいつもと違ってて、珠希ちゃんには優しかったような気もする。
本当にもうお互い友だちとしか思ってないのかな?
「もしかして、今でもちょっと好きだったりするの?」
「え~アハハハハ、なにそれやめてよ~。
やだやだ、ナイナイ。あたし前カレ一筋だったもん」
渡辺くんのことをまだ好きなのか聞くと、珠希ちゃんはおかしそうにケタケタ笑いながらもきっぱりとそれを否定した。
珠希ちゃんは笑い過ぎて出た涙をぬぐうと、私の顔をおかしそうにじっとのぞき込む。
「あたしだよ?
好きな気持ちを隠して、友だちでいられると思う?もし今でも圭佑のこと好きだったら、もっとがつがついってるって」
それもそうかも……。
珠希ちゃんって良くも悪くも嘘がつけないタイプだし、もしもまだ渡辺くんのことが好きだったら隠せないだろうな。
そもそもわざわざ隠したりしないで、積極的にアピールしてそう。
納得してそうだねと頷くと、珠希ちゃんは分かればよろしい!となぜか得意気な顔をした。
もう今はただの友だちみたいだけど、珠希ちゃんと渡辺くんは昔付き合ってたんだ。
やっぱり噂って当てにならないな。
みんなは渡辺くんが人妻キラーだとか年上しか好きになれないみたいなこと言ってたけど、普通に同世代の珠希ちゃんと付き合ってたんだね。
「じゃ、あたしここだから。またね」
「うん、またね」
珠希ちゃんは二年二組の教室の前で一度足をとめ、私に手を振ってから教室に入っていく。
珠希ちゃんのおかげか、私が教室に戻る足取りも、保健室に行く前よりも軽くなっている気がした。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
500年後転生、美少女としてやり直し王子に拾われる。
ポッポ
恋愛
傭兵として、魔法剣士として最高位のSランクの武勇を誇る女性だ。
ただ彼女は、可愛らしい名前に似合わず、大きな身体、いかつい顔。
がさつな性格。こんなのだからこれまで独り身。
女の子らしくやり直したい。
高齢で死期を迎えて、気がついたら転生して美少女に転生。
しかも500年後の世界。
これからは女らしく生きる
そして調停者へとなる。
「異世界に行った幼稚園児が世界皇帝」の
サイドストーリー
女子高生天才女流棋士が転生したら戦国時代だった
lavie800
ファンタジー
令和に京都の能楽堂で能面をつけた殺人事件が発生して、性に興味津々の女子高生棋士と初心なイケメン刑事が一夜明けたら二人は戦国時代の初代将棋名人候補の子供とその許嫁に転生。その戦国時代は正しい歴史からずれた異世界戦国時代だった。家康が天下を取れず初代の将棋名人も別の人になりそうな歴史を正しい状態に戻すため、天才女子高生棋士とバディの刑事が、希望を言えば望みが叶うといわれる月の小面を探す。月の小面は戦国時代に秀吉と家康が所有していたものだったが浜松城で忽然と小面が消失した。戦国時代の思惑で家康の敵も月の小面を追っている中で、天才女子高生棋士とバディの刑事はチート魔法が発動できるスマホを手にして、魔犬を操る敵と戦い、果たして月の小面を手に入れられるのか?!
少し歴史と違った戦国時代を舞台に繰り広げる和風ファンタジーです。
そして最後に、二人は結ばれる⁉
旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?
木山楽斗
恋愛
英雄の血を引くリメリアは、若くして家を継いだ伯爵の元に嫁いだ。
若さもあってか血気盛んな伯爵は、失言や失敗も多かったが、それでもリメリアは彼を支えるために働きかけていた。
英雄の血を引く彼女の存在には、単なる伯爵夫人以上の力があり、リメリアからの謝罪によって、ことが解決することが多かったのだ。
しかし伯爵は、ある日リメリアに離婚を言い渡した。
彼にとって、自分以上に評価されているリメリアは邪魔者だったのだ。
だが、リメリアという強力な存在を失った伯爵は、落ちぶれていくことになった。彼女の影響力を、彼はまったく理解していなかったのだ。
おじさんのことが好き・・・子供の頃から憧れる叔父に胸が切ない…僕の唇も人生も奪い取ってほしい
マッキーの世界
BL
叔父の笑顔を見ると、僕はすごく胸がドキドキするんだ。
どうしてだろう...
子供の頃からおじさんを見るだけで胸がトキメキ、膝の上にお座りすると胸が張り裂け
完結 婚約破棄をしたいのなら喜んで!
音爽(ネソウ)
恋愛
婚約破棄を免罪符にして毎回責めてくる婚約者。
さすがにウンザリした彼女は受け入れることにした。婚約者に何を言っても、多少の暴言を吐いても彼女は悲し気な顔で赦していたから。
この日もつまらない矜持を剥き出し臍を曲げて「婚約破棄」を言い出した。彼女は我慢ならないと言い出して婚約破棄を受け入れたのだ。
「あぁ……どうしよう、彼女を怒らせてしまった」
実は彼は婚約者であるベルティナ・ルーベンス伯爵令嬢をこよなく愛していた。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
次期公爵閣下は若奥様を猫可愛がりしたい!
橘ハルシ
恋愛
生まれてからずっと家族から疎まれ苛められ全く世間を知らない元姫に惚れて結婚したハーフェルト次期公爵テオドール。結婚してから全てを勉強中の妻シルフィアは好奇心旺盛で彼の予想の斜め上の行動ばかりする。
それでも何があっても妻が可愛くて可愛くて仕方がない夫は今日も隙を見て妻を愛でまくる。
そんな帝国に留学中で学生の旦那様と愛と自由を得て元気いっぱいの若奥様の日常です。
前作『綿ぼこり姫は次期公爵閣下にすくわれる』を読んでいなくても問題ありません。さらっと見ていただけたら幸いです。
R15は本当に念のため、です。一応、夫婦なので…。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる