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第一部 会えてよかった
10.君が好き
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10.君が好き
意識がはっきりしたのは家の食卓に着いてからだった。気が付いたら椅子に座っていた。
それまでどうやって歩いて帰ってきたのか覚えていない。
今まで広場にいたのではなかったか、と少し頭が混乱していた。
イリスは泣き笑いのような複雑な表情で、僕の向かいに座っていた。
「やあ。お帰り。やっと戻ってきたね。」
家に帰ってきたことを示すことではなく、僕の意識がここが家であると認識したことを示しているのだということが分かった。
「ごめん。僕はちょっと呆けてたみたいだ。戻ってくるのに迷惑かけた?」
「いや。ちゃんと自分でここまで帰ってきて、鍵もちゃんと開けてテーブルの手前に来て座ったよ。」
そうか。無意識のうちにちゃんといつも通りに行動できたわけだ。
ショックが強すぎて頭が真っ白になっても、いつもしているような通常のことはできるんだな。
僕の頭がちゃんと働いてなくても、彼はそれを見守っててくれて一緒に帰ってきてくれたんだ。
「今日が最後だから言うね。一度は断られたから、あきらめてたけどもうこれで最後だから。これで断られたらもう言わないから。やっぱり僕と寝ることはできないかな。僕とじゃその気になれないかな。」
その気、って。
初日に誘われたことか。
え、あれは社交辞令じゃなかったのか。ってゆうか、冗談だったんじゃ。
「普通なら君みたいにきれいな人が、残念な人代表の僕なんかと寝るわけないって、前にも言ったと思うんだけど。あの、本気で言ってた?」
「そう言ったのは聞いたよ。でも僕は本気だったの。スルーされたから、男とは寝られない人だって残念に思ってた。でも、もう今日が最後だし僕を一度試してもらっても良いんじゃないかと思って、こうしてまた誘ってるわけなんだけど。」
「それはその、男とは寝たことはないけど・・・、興味はあったけど・・・、君みたいなきれいな人が僕なんかと」
「だから君が好きなんだ。気に入ったんだってば。どうするの。好きなの、嫌いなの。寝るの、寝ないの、はっきり返事を聞かせて。」
僕の言葉にかぶせてイリスが勢いよく言ったので、思わずその勢いに乗せられて、顔から火がでるんじゃないかと思いながら勢いよく言ってしまった。
「スキデス!オネガイシマス!」
すると彼は色悪のような悪い顔をしてにやりと笑って言った。
「言ったね。やっと。僕に好意を持ってるのは分かってたけど、友人のスタンスを崩さないからもどかしく感じてたんだ。僕を好きだって言わせようと思ったけど、手ごわいからどう攻略しようかっていろいろ思案してたんだよね。」
ホントに?
これ冗談じゃないよね。
夢でもないよね。
あんまり展開が急すぎる。
僕がイリスを好きになったのは広場で話をしているときからだったけど、寝たいとは思わなかった。
でも気の合う友人から親友になるには時間はかからなかった。
寝てもいいくらい好きだと気づいたのはさっきだったけど。
いや、ホントは気づいてた。
ずっと一緒に住まないかって誘ったのは僕の方だ。
一緒に過ごして楽しかったから、好きだから、ずっとそばにいて欲しいと思ってそう言った。
初めてイリスの素顔を見て、その日に誘われて嬉しかった。
けれども、イリスみたいにきれいな人が僕を相手にするはずはない、って思ってたからスルーした。
冗談だ、って言われるのが怖くてこちらからスルーした。
でもどうやらイリスは本気で僕を誘ってくれているみたいだ。
好きだって、気に入ってるって、言ってくれた。
僕は天にも昇る気持ちだった。
たぶん赤い顔をしているだろうけれど、彼に聞かなくては。これからどうすればいいかを。
彼が僕の方に手を出して立たせてくれたので、誘われるまま僕の寝室へと向かった。
「あの、僕は男同士の作法、みたいなのは知らないんだけど。どうしたら良いか教えてもらえたらいいんだけど、頼めるかな?」
ベッドの上に座ると緊張で声が上ずってしまったけれど、これだけは言わなくちゃ彼に怪我をさせてしまったらいけない。そう思って言ったら、彼はきょとんとしていた。
そして、クスクス笑いながら僕に軽く口づけてこう言った。
「作法なんてないよ。でもまかせて?夜は短いよ。楽しもう?」
それから僕たちは口づけを深くしながら、ベッドに倒れこみ長くて短い夜を楽しむために協力し合った。
意識がはっきりしたのは家の食卓に着いてからだった。気が付いたら椅子に座っていた。
それまでどうやって歩いて帰ってきたのか覚えていない。
今まで広場にいたのではなかったか、と少し頭が混乱していた。
イリスは泣き笑いのような複雑な表情で、僕の向かいに座っていた。
「やあ。お帰り。やっと戻ってきたね。」
家に帰ってきたことを示すことではなく、僕の意識がここが家であると認識したことを示しているのだということが分かった。
「ごめん。僕はちょっと呆けてたみたいだ。戻ってくるのに迷惑かけた?」
「いや。ちゃんと自分でここまで帰ってきて、鍵もちゃんと開けてテーブルの手前に来て座ったよ。」
そうか。無意識のうちにちゃんといつも通りに行動できたわけだ。
ショックが強すぎて頭が真っ白になっても、いつもしているような通常のことはできるんだな。
僕の頭がちゃんと働いてなくても、彼はそれを見守っててくれて一緒に帰ってきてくれたんだ。
「今日が最後だから言うね。一度は断られたから、あきらめてたけどもうこれで最後だから。これで断られたらもう言わないから。やっぱり僕と寝ることはできないかな。僕とじゃその気になれないかな。」
その気、って。
初日に誘われたことか。
え、あれは社交辞令じゃなかったのか。ってゆうか、冗談だったんじゃ。
「普通なら君みたいにきれいな人が、残念な人代表の僕なんかと寝るわけないって、前にも言ったと思うんだけど。あの、本気で言ってた?」
「そう言ったのは聞いたよ。でも僕は本気だったの。スルーされたから、男とは寝られない人だって残念に思ってた。でも、もう今日が最後だし僕を一度試してもらっても良いんじゃないかと思って、こうしてまた誘ってるわけなんだけど。」
「それはその、男とは寝たことはないけど・・・、興味はあったけど・・・、君みたいなきれいな人が僕なんかと」
「だから君が好きなんだ。気に入ったんだってば。どうするの。好きなの、嫌いなの。寝るの、寝ないの、はっきり返事を聞かせて。」
僕の言葉にかぶせてイリスが勢いよく言ったので、思わずその勢いに乗せられて、顔から火がでるんじゃないかと思いながら勢いよく言ってしまった。
「スキデス!オネガイシマス!」
すると彼は色悪のような悪い顔をしてにやりと笑って言った。
「言ったね。やっと。僕に好意を持ってるのは分かってたけど、友人のスタンスを崩さないからもどかしく感じてたんだ。僕を好きだって言わせようと思ったけど、手ごわいからどう攻略しようかっていろいろ思案してたんだよね。」
ホントに?
これ冗談じゃないよね。
夢でもないよね。
あんまり展開が急すぎる。
僕がイリスを好きになったのは広場で話をしているときからだったけど、寝たいとは思わなかった。
でも気の合う友人から親友になるには時間はかからなかった。
寝てもいいくらい好きだと気づいたのはさっきだったけど。
いや、ホントは気づいてた。
ずっと一緒に住まないかって誘ったのは僕の方だ。
一緒に過ごして楽しかったから、好きだから、ずっとそばにいて欲しいと思ってそう言った。
初めてイリスの素顔を見て、その日に誘われて嬉しかった。
けれども、イリスみたいにきれいな人が僕を相手にするはずはない、って思ってたからスルーした。
冗談だ、って言われるのが怖くてこちらからスルーした。
でもどうやらイリスは本気で僕を誘ってくれているみたいだ。
好きだって、気に入ってるって、言ってくれた。
僕は天にも昇る気持ちだった。
たぶん赤い顔をしているだろうけれど、彼に聞かなくては。これからどうすればいいかを。
彼が僕の方に手を出して立たせてくれたので、誘われるまま僕の寝室へと向かった。
「あの、僕は男同士の作法、みたいなのは知らないんだけど。どうしたら良いか教えてもらえたらいいんだけど、頼めるかな?」
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そして、クスクス笑いながら僕に軽く口づけてこう言った。
「作法なんてないよ。でもまかせて?夜は短いよ。楽しもう?」
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