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やり直しは彼女を幸せにする?

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 ある日、高校生の絵里香は、自転車で学校に向かう途中、赤信号を無視して突っ込んできた車に撥ねられた。意識を取り戻すと、白い病院の天井が目に入った。彼女は交通事故に遭い、軽傷で済んだが、一つの不思議な力に目覚めていた。事故の日から、一日をやり直す能力が備わっていたのだ。

 一ヶ月後、絵里香は無事に退院し、学校に戻った。彼女は新たな能力を使って、密かに憧れていた大和先輩と付き合おうと決意した。大和先輩は学校でも人気者で、優しくて面倒見が良い。絵里香の心の中で、先輩への思いは日に日に強くなっていた。

 最初は失敗だった。絵里香は大和先輩に話しかけたが、緊張のあまり言葉が上手く出てこなかった。絵里香は再びやり直し、今度は自然体で話しかけることに成功した。彼女の努力は少しずつ実を結び、二人は徐々に仲良くなっていった。

 ある日、絵里香は大和先輩に告白することを決意した。しかし、彼女の言葉は緊張と不安に震え、大和先輩はただ困惑した表情を浮かべるだけだった。その瞬間、絵里香は再び一日をやり直す決意を固めた。

 時間を巻き戻し、絵里香は再び挑戦する。告白のタイミングを何度も調整し、最適な言葉を選び直す。その過程で、彼女は大和先輩の好きなことや趣味、彼の一日のルーティンまで詳しく知るようになった。大和先輩のことを知れば知るほど、絵里香の気持ちは深まっていった。

 何度目かの挑戦で、ついに大和先輩は笑顔で

「付き合おう」

 と答えた。絵里香の心は喜びで溢れ、二人は晴れて恋人同士となった。最初のデート、初めて手を繋いだ瞬間、そして初めてのキス。すべてが絵里香にとってかけがえのない思い出となった。

 しかし、絵里香は次第に不安を感じ始めた。彼女の能力でやり直した日々の中、大和先輩が知っている絵里香は、最適化された自分だったのだ。本当の自分を見せることが怖かった。もし、本当の自分を見せたら、大和先輩はどう思うのだろうか。

 ある日、絵里香は勇気を振り絞り、大和先輩にすべてを打ち明けることを決意した。彼女は涙ながらに、自分の能力と、何度もやり直してきたことを告白した。大和先輩は驚き、そしてしばらく沈黙した。

「絵里香、本当にそんなことができるのか?」

 絵里香は静かに頷いた。彼女の目には涙が溢れていた。

「でも、それでも君のことが好きなんだ。やり直しのない一日でも、君のことを知りたい」

 その言葉に、絵里香の心は救われた。大和先輩の優しさと真実に触れ、彼女は初めて本当に幸せを感じた。そして、彼女は一日を巻き戻した。

 大和先輩が彼女の秘密を知らない日に戻った。彼女が知りたかったのは、真実を知った大和先輩の反応だけだった。

(何があっても大和先輩は私を好きでいてくれる。でも、この力は私だけの秘密。彼に知られてこれからも平穏にいくとは限らない...)

 ◇

 しかし、時間が経つにつれて、絵里香の心には疑問が生じ始めた。大和先輩と過ごす日々は確かに幸せだったが、彼女の心には次第に冷たい影が落ち始めた。何度も繰り返してきた日々は、同じような出来事の連続で、予測可能なものばかりだった。彼女の心はその繰り返しに飽き始め、先輩への愛も次第に冷めていった。

 絵里香は最初の頃の情熱を取り戻そうと、何度も一日をやり直してみた。しかし、先輩との関係がどれだけ完璧に見えても、心の奥底にある虚しさは拭い去ることができなかった。彼女は次第に大和先輩との時間が重荷に感じるようになり、やり直しのたびに先輩への愛情が薄れていくのを感じた。

 ある日、絵里香は大和先輩に別れを告げることを決意した。彼女の心には悲しみと安堵が混じり合っていた。

「ごめんなさい、先輩。もうこれ以上続けられないの」

 大和先輩は驚き、そして悲しそうな表情を浮かべた。

「絵里香、どうして?俺たちは幸せだったはずじゃないか」

 絵里香は涙を浮かべながら言った。

「私たちの関係は私が作り上げたもの。何度も繰り返して、最適な瞬間を選んできた。でも、それは本当の私たちの姿じゃない。もう一度やり直すことはできるけど、それでも心の中の冷たさは消えないの」

「お前、何言っているんだよ、意味わかんねえ...分かったよ、別れよう」

 その日、絵里香は初めて能力を使わずに一日を過ごした。彼女の心には未練と後悔が渦巻いていたが、同時に自由の感覚も芽生えていた。彼女はもう一度新しい日々を生きることを決意した。

 絵里香の力はその日を境に消え去り、彼女は普通の高校生としての生活に戻った。大和先輩との思い出は心に残ったが、それはもう遠い過去のものとなった。絵里香は新しい未来に向かって歩き出し、過去の繰り返しから解放された。

 だが、心の奥底にはいつも、彼女が失った本当の愛への後悔と切なさが残っていた。一日は終わりを迎え、絵里香の新しい一日が始まった。
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