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 老齢ながらも長身で背もしゃっきりと伸びている執事の後ろから、見慣れた顔が覗いている。

 きらめく金髪に明るい新緑の色の瞳。
 社交会ではずいぶんご令嬢たちからギラついた目を向けられているだろうイケメンな顔。
 でもあきらかに、甘さ控えめになっている。
 子供っぽい甘さ、というか以前まではあった中性的な柔らかさが薄まって男らしさが増したというか……。

 直接顔を合わせたのは一年ぶり。
 久しぶりに目にした母方の従兄弟で、幼馴染の一人のその顔は、とても――。

 ――似てる。

 アリシアは思わず目を見張り、すぐに「突然やってきた従兄弟に驚いた」という表情を作った。

 兄弟なのだから、当然だ。
 今は可愛らしい天使なレオちゃんだって、きっと成長したら似通った容姿になるのだろう。
 まして母親譲りのピンクブラウンの髪色をしたレオちゃんと違い、ギルと兄であるあの男性ひとは髪色も瞳の色も同じ。

 亡くなった母の兄であるオーエンおじ様。
 クレイグ・オーエン伯爵には息子が三人いる。

 嫡男のクリストファー。
 次男のギルフォード。
 三男のレオナルド。

 娘がいない分、おじ様もその妻のエリシャおば様も姪っ子のアリシアを自分の娘のように可愛がってくれて、子供の頃は領地が隣り合っていることもあって上の二人とはいつも一緒に遊んでいた。

 いや、やんちゃ坊主のギルと、それ以上にお転婆だったアリシアが無茶をしすぎないように見守っていたクリス兄様というのが正解か。

 

 今年20才になるクリス兄様はすでに結婚していて、今は王都のオーエン家のタウンハウスに奥様と住んでいる。
 他の家族――オーエンおじ様夫妻とギル、レオちゃんは普段は領地にいて、アリシアが療養という名目で領地に戻っていた間も、領地で暮らしていた。
 ギルに関してはちょくちょく社交の関係で王都に足を運んでいたり、交易で他国に出かけることも多く、最後に会った時も他国への出航前だったけれど。

「……久しぶりね。なに?皆で王都こちらに来たの?」


 あぁ、情けない。
 意識しなければ声が震えそうになるなんて。

 内心の動揺を押し隠し、アリシアは尋ねた。
 本人ですらないのに、似ているというだけでなにをこうも動揺するのかと、自身を叱咤する。

 アリシアは書類上とはいえ、人妻だというのに。

 それでも、わずか一年会わないだけでこうも変わるものかと成長期を恨めしく思う。


 以前よりも大人びて、男らしくなった顔立ちは、アリシアの中で、別の男の人と重なって。

 無意識に力の込められた腕が、胸に抱いた幼子の身体をより強く引き寄せた。


 


 

 
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