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後編①
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口をはくはくと動かしはいるものの、衝撃のあまりか声が出ない様子の国王様。
相変わらずの中年太りにしばらく見ないうちにまた薄くなった頭。今度特製の鬘でも贈ってあげようかしら。少ない金髪を必死に伸ばして頭に貼り付けている様がなんだか哀愁を誘うわ。
もっともこの方に今度があるかは謎だけれど。
私はゆっくりと国王様に歩み寄る。
「国王様、どうかこの婚約の破棄をお許し下さいませ」
まだ混乱さめやらぬ様子で見上げてくる国王様と目が合った途端、ゾクリと血が沸騰した。
私を縛り付ける男。
私を、私たちを散々弄んできた男。
手を伸ばせば、ほんの少しこの首に指を回して力を入れれば……。
ーーいとも簡単に括り殺せる。
思った瞬間、心臓に針が刺さったように、ツキリと痛みが走る。
「……は」
痛みに息が詰まり、膝が折れそうになるのをなんでもない顔でグッと抑えた。
私にこの屑は殺せない。
とても、とても、残念だけれど。
私はそっと国王様により近づき、耳許に唇を寄せる。
「構いませんでしょう?ーー楔ならまだもう一つあるではありませんか」
他に聞こえないように囁いた私の言葉に、国王様はしばらく視線をどこともなく彷徨わせてから、ようよう口を開いた。
「良かろう。婚約の破棄を認める」
その言葉が耳に届くと同時に、私の中で楔が一つ消えた。
それは誓約によって私の心臓に埋め込まれた小さな楔だ。
私と、私の大切な家族に刻まれた隷属の楔。
私という存在と私に流れる血、戦力というわかりやすい力をこの国に繋ぎ留めるための楔。
二つあった、そして今は一つになったそれは私が誓約を違えると私と私の家族の心臓を止める。
普段はなんの違和感もない。
先程のように国王様に殺意でも抱かない限り。
にも関わらず胸がひどく軽くなった気がした私は、国王様に礼をしつつ、ほぅっ、と息を吐く。
これで楔はあと一つ。
そう思って顔を上げかけた私の耳に気が遠くなりそうな程馬鹿な台詞が聞こえてきて、ヒクリと喉が鳴る。
お花畑なのだとは思っていたし、頭が相当足りていないこともわかっていた。
けれどもこれ程とはーー。
ビッチ……彼女一応貴族の令嬢なのよね?
まさか平民の娘を王族の主催する夜会に連れてきたはずはあるまい。
「ハロルド様っ!破棄を認めて下さるんですって!!良かった!これで私たち正式に婚約できますわよね?」
…………何故この女はこんなに嬉しそうなのかしら?
確かに私とハロルドの婚約破棄は認められた。
認められたけれど、それとハロルドとビッチの婚約が進められるかどうかはまた別問題。
と、いうか………。
「まあ、そうですの?」
二人に向き直り、コテンと首を傾けてみせる。
「それにしてもビッチ様は本当にハロルド様をお慕いなさっておられるのですね。普通は王命による婚約を破棄されたような殿方と婚約なんて忌避されるものですのに。よろしかったわね?ハロルド様。きっとビッチ様ならお家を廃嫡のうえ勘当されようが不敬罪で投獄されようが強制労働で僻地に飛ばされようが愛を貫き地獄も共に歩んで下さいますわ」
にっこりして言うと、ビッチが「はあ?」と令嬢らしからぬ下品な声を上げた。
「誰がビッチよ!私はビビアンよっ!ビビアン!それに不敬罪とか地獄って何よそれっ!!」
「当然でしょう?」
ほんの少しだけ、本当にちょっぴり覇気を醸し出して言うと、ビッチは顔面蒼白になって震え出す。
「ハロルド様は王命を蔑ろにしたのですもの」
ねえ、と私は国王様の顔をねっとりと見つめ、唇を歪めた。
私とハロルドーーハロルド・グレンブルフ公爵令息との婚約は私が5歳、彼が8歳の時に結ばれたものだ。
それは国王様の欲のため。
私だけでなく、私が将来産む子供も確実に隷属させるため。私という個人だけではなく、私の中に流れる竜の血を先の未来までこの国に縛り付けるためのもの。
「ふふ、ねぇ、ビッチ様。良い事を教えて差し上げますわ」
ぽんと手を打った私に、国王様が何か口を開きかけたけれど、それを視線一つで抑える。
このぐらいなら誓約には抵触しない。
その程度の検証は行っていますのよ?国王様。
「この世界には3つの種族がそれぞれ国を作っています。さすがにそれくらいはご存知よね?」
地を治めるは人間と魔族。
空を治めるは神とも称される竜族。
「はるか昔は空と地を繋ぐ橋があったとされますが、それは愚かな人間の王の欲に激怒した時の竜皇によって壊されています」
人間にははるかに及ばない身体能力と魔力と美しさと竜の羽根を持つ一族。その竜姫に恋慕った人間の王が彼女を騙し拐かそうとしたことで、竜は地と袂を分かった。
「けれど地にはわずかに竜と縁を結んだ女性たちが残ったのです」
竜には番と呼ばれるたった一人がいる。
それは必ず竜の血を引く女性であるらしくて、その女性たちは見目麗しき竜に一夜の夢を求めた人間であったり一時の関係を楽しんだ者であったのだろう。が非常に迷惑なことにその中の幾人かは竜の子を生み、地にはわずかな竜の血筋が残った。
竜の血を引いていてもそのほとんどはただの人間だった。
「時折、生まれてしまうのです。竜の血筋から、私のような先祖返りが」
先祖返りの証である赤い瞳と人外の身体能力、魔力を持った子供が。
「私たちは、瞳の色がわかると同時に親から引き離され飼育小屋で育てられます。そこでそれぞれ国の役に立つように訓練されるのですわ」
赤い瞳の、子供たち。
私の家族。
「そこで頭角を表した子供が私のように勇者となり、戦争の兵器にされたり、他国への抑圧に使われるのですが、裏切られたり他国に奪われては大変ですよね?そこで誓約が成されるのです。国の、王の奴隷となるように。自身と同じ小屋で育った者も諸共に、誓約を破れば心臓が止まるように」
ふふ、と私は自分の胸を指し示す。
「けれど我が賢き国王様はそれだけでは満足なさらなかったのですよね?私の中の血を確実に国に残すように、5歳の時に新たな誓約が成されました。それがハロルド様との婚約です。おわかりになりますか?ハロルド様以外とはけして結ばれない。そう誓約をさせることによって私の血を管理するための誓約です。おかげで貴族の家に嫁ぐことになった私は、小屋では得られない知識と小屋の外を見ることができたのですが。それに破棄の条件をつけられたのも幸運でしたわ。もっとも本来ならハロルド様だけのためのものだったのでしょうけれども」
私のようなものを押し付けられるハロルド様を納得させるためだけのもの。
ハロルド様は知らなかったのだろう。
私はただ得体の知れない平民の小娘で、ただ勇者と呼ばれるほどの身体能力と魔力を持つから、その血に価値を見いだされたのだとでも思っていたはず。
突然国の、おそらくは王族と一部のわずかな側近だけが知る密事をペラペラとしゃべり出した私に、周囲からは驚愕と、そして畏れの入り混じった視線がこびりつく。
チラと見ると、国王様の顔色は蒼白を通り越して真っ赤だった。私に向けられた視線に込められているのは紛れもない怒り。不思議でしょう?国王様。
私は誓約に縛られていて国王様には逆らえないし、害も与えられない。
できるのはせいぜい軽く威圧するくらい。
なのに出鼻を挫かれたばかりでなくその後も声が出ないのだから。
「その誓約を台無しにしたのです。当然罰は下されるのではないかしら?」
国王様は場の空気に流されただけで、すぐに別の者を宛替えばいいと思ったのでしょうけど、だからといってお咎めなしとはいかないでしょうよ。
私はクスクスと笑う。
楽しげに、声を上げて笑う。
「ねぇ、そうですよね?国王様?」
ひとしきり笑ってから、真っ赤な顔で立ち尽くす国王様の頬に手で触れる。
「ふふ、不思議ですか?何故自身の声が出ないのか、何故動けないのか。とっても奇妙なことですわねぇ、国王様」
私は何もしてませんのよ?
私は、ね。
相変わらずの中年太りにしばらく見ないうちにまた薄くなった頭。今度特製の鬘でも贈ってあげようかしら。少ない金髪を必死に伸ばして頭に貼り付けている様がなんだか哀愁を誘うわ。
もっともこの方に今度があるかは謎だけれど。
私はゆっくりと国王様に歩み寄る。
「国王様、どうかこの婚約の破棄をお許し下さいませ」
まだ混乱さめやらぬ様子で見上げてくる国王様と目が合った途端、ゾクリと血が沸騰した。
私を縛り付ける男。
私を、私たちを散々弄んできた男。
手を伸ばせば、ほんの少しこの首に指を回して力を入れれば……。
ーーいとも簡単に括り殺せる。
思った瞬間、心臓に針が刺さったように、ツキリと痛みが走る。
「……は」
痛みに息が詰まり、膝が折れそうになるのをなんでもない顔でグッと抑えた。
私にこの屑は殺せない。
とても、とても、残念だけれど。
私はそっと国王様により近づき、耳許に唇を寄せる。
「構いませんでしょう?ーー楔ならまだもう一つあるではありませんか」
他に聞こえないように囁いた私の言葉に、国王様はしばらく視線をどこともなく彷徨わせてから、ようよう口を開いた。
「良かろう。婚約の破棄を認める」
その言葉が耳に届くと同時に、私の中で楔が一つ消えた。
それは誓約によって私の心臓に埋め込まれた小さな楔だ。
私と、私の大切な家族に刻まれた隷属の楔。
私という存在と私に流れる血、戦力というわかりやすい力をこの国に繋ぎ留めるための楔。
二つあった、そして今は一つになったそれは私が誓約を違えると私と私の家族の心臓を止める。
普段はなんの違和感もない。
先程のように国王様に殺意でも抱かない限り。
にも関わらず胸がひどく軽くなった気がした私は、国王様に礼をしつつ、ほぅっ、と息を吐く。
これで楔はあと一つ。
そう思って顔を上げかけた私の耳に気が遠くなりそうな程馬鹿な台詞が聞こえてきて、ヒクリと喉が鳴る。
お花畑なのだとは思っていたし、頭が相当足りていないこともわかっていた。
けれどもこれ程とはーー。
ビッチ……彼女一応貴族の令嬢なのよね?
まさか平民の娘を王族の主催する夜会に連れてきたはずはあるまい。
「ハロルド様っ!破棄を認めて下さるんですって!!良かった!これで私たち正式に婚約できますわよね?」
…………何故この女はこんなに嬉しそうなのかしら?
確かに私とハロルドの婚約破棄は認められた。
認められたけれど、それとハロルドとビッチの婚約が進められるかどうかはまた別問題。
と、いうか………。
「まあ、そうですの?」
二人に向き直り、コテンと首を傾けてみせる。
「それにしてもビッチ様は本当にハロルド様をお慕いなさっておられるのですね。普通は王命による婚約を破棄されたような殿方と婚約なんて忌避されるものですのに。よろしかったわね?ハロルド様。きっとビッチ様ならお家を廃嫡のうえ勘当されようが不敬罪で投獄されようが強制労働で僻地に飛ばされようが愛を貫き地獄も共に歩んで下さいますわ」
にっこりして言うと、ビッチが「はあ?」と令嬢らしからぬ下品な声を上げた。
「誰がビッチよ!私はビビアンよっ!ビビアン!それに不敬罪とか地獄って何よそれっ!!」
「当然でしょう?」
ほんの少しだけ、本当にちょっぴり覇気を醸し出して言うと、ビッチは顔面蒼白になって震え出す。
「ハロルド様は王命を蔑ろにしたのですもの」
ねえ、と私は国王様の顔をねっとりと見つめ、唇を歪めた。
私とハロルドーーハロルド・グレンブルフ公爵令息との婚約は私が5歳、彼が8歳の時に結ばれたものだ。
それは国王様の欲のため。
私だけでなく、私が将来産む子供も確実に隷属させるため。私という個人だけではなく、私の中に流れる竜の血を先の未来までこの国に縛り付けるためのもの。
「ふふ、ねぇ、ビッチ様。良い事を教えて差し上げますわ」
ぽんと手を打った私に、国王様が何か口を開きかけたけれど、それを視線一つで抑える。
このぐらいなら誓約には抵触しない。
その程度の検証は行っていますのよ?国王様。
「この世界には3つの種族がそれぞれ国を作っています。さすがにそれくらいはご存知よね?」
地を治めるは人間と魔族。
空を治めるは神とも称される竜族。
「はるか昔は空と地を繋ぐ橋があったとされますが、それは愚かな人間の王の欲に激怒した時の竜皇によって壊されています」
人間にははるかに及ばない身体能力と魔力と美しさと竜の羽根を持つ一族。その竜姫に恋慕った人間の王が彼女を騙し拐かそうとしたことで、竜は地と袂を分かった。
「けれど地にはわずかに竜と縁を結んだ女性たちが残ったのです」
竜には番と呼ばれるたった一人がいる。
それは必ず竜の血を引く女性であるらしくて、その女性たちは見目麗しき竜に一夜の夢を求めた人間であったり一時の関係を楽しんだ者であったのだろう。が非常に迷惑なことにその中の幾人かは竜の子を生み、地にはわずかな竜の血筋が残った。
竜の血を引いていてもそのほとんどはただの人間だった。
「時折、生まれてしまうのです。竜の血筋から、私のような先祖返りが」
先祖返りの証である赤い瞳と人外の身体能力、魔力を持った子供が。
「私たちは、瞳の色がわかると同時に親から引き離され飼育小屋で育てられます。そこでそれぞれ国の役に立つように訓練されるのですわ」
赤い瞳の、子供たち。
私の家族。
「そこで頭角を表した子供が私のように勇者となり、戦争の兵器にされたり、他国への抑圧に使われるのですが、裏切られたり他国に奪われては大変ですよね?そこで誓約が成されるのです。国の、王の奴隷となるように。自身と同じ小屋で育った者も諸共に、誓約を破れば心臓が止まるように」
ふふ、と私は自分の胸を指し示す。
「けれど我が賢き国王様はそれだけでは満足なさらなかったのですよね?私の中の血を確実に国に残すように、5歳の時に新たな誓約が成されました。それがハロルド様との婚約です。おわかりになりますか?ハロルド様以外とはけして結ばれない。そう誓約をさせることによって私の血を管理するための誓約です。おかげで貴族の家に嫁ぐことになった私は、小屋では得られない知識と小屋の外を見ることができたのですが。それに破棄の条件をつけられたのも幸運でしたわ。もっとも本来ならハロルド様だけのためのものだったのでしょうけれども」
私のようなものを押し付けられるハロルド様を納得させるためだけのもの。
ハロルド様は知らなかったのだろう。
私はただ得体の知れない平民の小娘で、ただ勇者と呼ばれるほどの身体能力と魔力を持つから、その血に価値を見いだされたのだとでも思っていたはず。
突然国の、おそらくは王族と一部のわずかな側近だけが知る密事をペラペラとしゃべり出した私に、周囲からは驚愕と、そして畏れの入り混じった視線がこびりつく。
チラと見ると、国王様の顔色は蒼白を通り越して真っ赤だった。私に向けられた視線に込められているのは紛れもない怒り。不思議でしょう?国王様。
私は誓約に縛られていて国王様には逆らえないし、害も与えられない。
できるのはせいぜい軽く威圧するくらい。
なのに出鼻を挫かれたばかりでなくその後も声が出ないのだから。
「その誓約を台無しにしたのです。当然罰は下されるのではないかしら?」
国王様は場の空気に流されただけで、すぐに別の者を宛替えばいいと思ったのでしょうけど、だからといってお咎めなしとはいかないでしょうよ。
私はクスクスと笑う。
楽しげに、声を上げて笑う。
「ねぇ、そうですよね?国王様?」
ひとしきり笑ってから、真っ赤な顔で立ち尽くす国王様の頬に手で触れる。
「ふふ、不思議ですか?何故自身の声が出ないのか、何故動けないのか。とっても奇妙なことですわねぇ、国王様」
私は何もしてませんのよ?
私は、ね。
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