2 / 5
02
しおりを挟む
私は2枚目の紙を捲るのを止めた。
先は読まなくても予想がつく。
何故なら似たような手紙をいくつも、いくつも私は目にしてきているから。
「…………ヒロインシンドローム」
私たちはそう呼んでいる。
なんらかの切欠によって人がある日突然別人のようになる。あるいは前世の記憶が蘇ったと言い出す。
多くは夢みがちな思春期の少女たちで、多くは実のところただの空想に囚われてそんな気になっているだけだったり、偶然の積み重なりによるもしかして、という願望込みの思い込み。
けれど中には本物がいる。
厄介で危険で、ものすごく面倒な存在。
「私が呼ばれたということは本物、ということですか?教皇猊下」
私の問いに、御簾の向こうで微かに笑う気配がした。
「それを見極め本物であれば適切に処理するのが貴女の役目ですよ。ミラリアーナ・クロッフィ」
司教様の言葉に私は深く頭を下げる。
「失礼いたしました」
部屋の中には護衛を除いても私、猊下、司教様と三人の人間がいるけれど、口を開き言葉を発するのはいつも私と司教様の二人だけだ。
私はその昔孤児の浮浪児というやつで教会が運営する孤児院の神父様に拾われた。
ミラリアーナ・クロッフィという名は孤児院を併設する教会の神父様が着けた名で、クロッフィは神父様のファミリーネームである。
5才くらいで神父様に拾われて、7才の洗礼式で適性を認められて、教会からとある仕事を斡旋されている。
12才までは散々お勉強をさせられ、どこにでも潜り込めるようにマナーだのも叩き込まれている。
おかげで行儀の良い所作というのもお手の物だ。(中身は別として)
丁寧に手紙を畳んで修道服の懐にしまい、スカートを軽く抓んでお辞儀をする。
「今回の任地はエブローズの魔術学園です。貴女の名はミラリアーナ・フライル子爵令嬢。クライフル公国からの留学生ということになっていますから、このまま任地に向かいなさい」
私はお辞儀をしたまま僅かに唇を歪めた。
よりによって魔術学園か――と。
「了解いたしました。すべては主の御心のままに」
先は読まなくても予想がつく。
何故なら似たような手紙をいくつも、いくつも私は目にしてきているから。
「…………ヒロインシンドローム」
私たちはそう呼んでいる。
なんらかの切欠によって人がある日突然別人のようになる。あるいは前世の記憶が蘇ったと言い出す。
多くは夢みがちな思春期の少女たちで、多くは実のところただの空想に囚われてそんな気になっているだけだったり、偶然の積み重なりによるもしかして、という願望込みの思い込み。
けれど中には本物がいる。
厄介で危険で、ものすごく面倒な存在。
「私が呼ばれたということは本物、ということですか?教皇猊下」
私の問いに、御簾の向こうで微かに笑う気配がした。
「それを見極め本物であれば適切に処理するのが貴女の役目ですよ。ミラリアーナ・クロッフィ」
司教様の言葉に私は深く頭を下げる。
「失礼いたしました」
部屋の中には護衛を除いても私、猊下、司教様と三人の人間がいるけれど、口を開き言葉を発するのはいつも私と司教様の二人だけだ。
私はその昔孤児の浮浪児というやつで教会が運営する孤児院の神父様に拾われた。
ミラリアーナ・クロッフィという名は孤児院を併設する教会の神父様が着けた名で、クロッフィは神父様のファミリーネームである。
5才くらいで神父様に拾われて、7才の洗礼式で適性を認められて、教会からとある仕事を斡旋されている。
12才までは散々お勉強をさせられ、どこにでも潜り込めるようにマナーだのも叩き込まれている。
おかげで行儀の良い所作というのもお手の物だ。(中身は別として)
丁寧に手紙を畳んで修道服の懐にしまい、スカートを軽く抓んでお辞儀をする。
「今回の任地はエブローズの魔術学園です。貴女の名はミラリアーナ・フライル子爵令嬢。クライフル公国からの留学生ということになっていますから、このまま任地に向かいなさい」
私はお辞儀をしたまま僅かに唇を歪めた。
よりによって魔術学園か――と。
「了解いたしました。すべては主の御心のままに」
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
女性が少ない世界へ異世界転生してしまった件
りん
恋愛
水野理沙15歳は鬱だった。何で生きているのかわからないし、将来なりたいものもない。親は馬鹿で話が通じない。生きても意味がないと思い自殺してしまった。でも、死んだと思ったら異世界に転生していてなんとそこは男女500:1の200年後の未来に転生してしまった。
私のことをどうしても悪者にしたかったようですが、かなり無理があったようです。そもそも、悪役令嬢って、何のことなの?
珠宮さくら
恋愛
シレーネは、留学先から戻って来たら、変な令嬢に絡まれることになってしまったが、彼女が何を言っているのかがわかるものは誰もいなかったようだ。
※全2話。
ヒロインのシスコンお兄様は、悪役令嬢を溺愛してはいけません!
あきのみどり
恋愛
【ヒロイン溺愛のシスコンお兄様(予定)×悪役令嬢(予定)】
小説の悪役令嬢に転生した令嬢グステルは、自分がいずれヒロインを陥れ、失敗し、獄死する運命であることを知っていた。
その運命から逃れるべく、九つの時に家出して平穏に生きていたが。
ある日彼女のもとへ、その運命に引き戻そうとする青年がやってきた。
その青年が、ヒロインを溺愛する彼女の兄、自分の天敵たる男だと知りグステルは怯えるが、彼はなぜかグステルにぜんぜん冷たくない。それどころか彼女のもとへ日参し、大事なはずの妹も蔑ろにしはじめて──。
優しいはずのヒロインにもひがまれ、さらに実家にはグステルの偽者も現れて物語は次第に思ってもみなかった方向へ。
運命を変えようとした悪役令嬢予定者グステルと、そんな彼女にうっかりシスコンの運命を変えられてしまった次期侯爵の想定外ラブコメ。
※話数は多いですが、1話1話は短め。ちょこちょこ更新中です!
●3月9日19時
37の続きのエピソードを一つ飛ばしてしまっていたので、38話目を追加し、38話として投稿していた『ラーラ・ハンナバルト①』を『39』として投稿し直しましたm(_ _)m
なろうさんにも同作品を投稿中です。
男爵夫人となった私に夫は贅沢を矯正してやると言い、いびられる日々が始まりました。
Mayoi
恋愛
結婚を機に領主を継いだブレントンは妻のマーガレットへの態度を一変させた。
伯爵家で染みついた贅沢を矯正させると言い、マーガレットの言い分に耳を貸さずに新入りメイドとして扱うと決めてしまった。
あまりの惨状にマーガレットはブレントンに気付かれないよう親に助けを求めた。
この状況から助けてと、一縷の望みを託して。
乙女ゲームの世界じゃないの?
白雲八鈴
恋愛
この世界は『ラビリンスは恋模様』っていう乙女ゲームの舞台。主人公が希少な聖魔術を使えることから王立魔術学園に通うことからはじまるのです。
私が主人公・・・ではなく、モブです。ゲーム内ではただの背景でしかないのです。でも、それでいい。私は影から主人公と攻略対象達のラブラブな日々を見られればいいのです。
でも何かが変なんです。
わたしは主人公と攻略対象のラブラブを影から見守ることはできるのでしょうか。
*この世界は『番とは呪いだと思いませんか』と同じ世界観です。本編を読んでいなくても全く問題ありません。
*内容的にはn番煎じの内容かと思いますが、時間潰しでさらりと読んでくださいませ。
*なろう様にも投稿しております。
道産子令嬢は雪かき中 〜ヒロインに構っている暇がありません〜
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「レイシール・ホーカイド!貴様との婚約を破棄する!」
……うん。これ、見たことある。
ゲームの世界の悪役令嬢に生まれ変わったことに気づいたレイシール。北国でひっそり暮らしながらヒロインにも元婚約者にも関わらないと決意し、防寒に励んだり雪かきに勤しんだり。ゲーム内ではちょい役ですらなかった設定上の婚約者を凍死から救ったり……ヒロインには関わりたくないのに否応なく巻き込まれる雪国令嬢の愛と極寒の日々。
距離を置きましょう? やったー喜んで! 物理的にですけど、良いですよね?
hazuki.mikado
恋愛
婚約者が私と距離を置きたいらしい。
待ってましたッ! 喜んで!
なんなら物理的な距離でも良いですよ?
乗り気じゃない婚約をヒロインに押し付けて逃げる気満々の公爵令嬢は悪役令嬢でしかも転生者。
あれ? どうしてこうなった?
頑張って断罪劇から逃げたつもりだったけど、先に待ち構えていた隣りの家のお兄さんにあっさり捕まってでろでろに溺愛されちゃう中身アラサー女子のお話し。
×××
取扱説明事項〜▲▲▲
作者は誤字脱字変換ミスと投稿ミスを繰り返すという老眼鏡とハズキルーペが手放せない(老)人です(~ ̄³ ̄)~マジでミスをやらかしますが生暖かく見守って頂けると有り難いです(_ _)お気に入り登録や感想、動く栞、以前は無かった♡機能。そして有り難いことに動画の視聴。ついでに誤字脱字報告という皆様の愛(老人介護)がモチベアップの燃料です(人*´∀`)。*゜+
皆様の愛を真摯に受け止めております(_ _)←多分。
9/18 HOT女性1位獲得シマシタ。応援ありがとうございますッヽ(*゚ー゚*)ノ
私は仕事がしたいのです!
渡 幸美
恋愛
エマ、12歳。平民。流行り風邪で寝込んでいる時に見た夢は、どうやら自分の前世らしい。今生の世界は魔法ありで、どうやら異世界転生したみたい!
それに前世を思い出してから見てみると、私、ずいぶん可愛くない…?しかもピンクブロンドの髪って、何だかいろいろ怪しくない?たくさん本は読んだけど、全部なんて覚えてない!しかもアラフォーだったので、乙ゲーに関してはよく知らないし……ヒロインってこんな感じ…のような?ちょっと分からないです!
けど、浮気男はごめんだし、魔法はいろいろ楽しそう!せっかくだから、世のため人のためにこの力を使おうじゃないか!
余計なものは頑張って回避して、大手企業の女社長(のようなもの)を目指したい?!
……はずなのに、何故か余計なものがチョロチョロと?何で寄ってくるの?無自覚だって言われても困るんです!仕事がしたいので!
ふんわり設定です。恋愛要素薄いかもです……。念のため、R15設定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる