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1章 はじまり
04 対話と彼の不思議な対応
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彼が起き上がったことに気付かなかった俺のミスで、その近くで鎧なんて叩いたことが悪かったのだろう。不意打ちで抵抗する間もなかった。
「さてと、オレはお前にいくつか聞きたいことがある。まずはどうやってここに来た?」
彼に手と足を紐で固く縛られているので、逃げ出すことはは不可能。しかし彼から対話を持ちかけてくれているのだから、これに乗らない手はない。
「ここには気づいたら居たとしか言えないな。こことは違う世界と思われる場所にいたけど、気付けばここにいた」
「違う世界……」
彼は驚いたように目を開くと少しだけ頬が緩んだように見えたんだが、恐ろしいことを考えてなんてないよな?
ちなみに手鏡についてはまだ彼を信頼するには足りないから教えるつもりはない。どのみち拷問でもされたら教えるだろうけど、帰るためにも絶対に関係ある手段だと思うから。
「次の質問だ。ここで何をしていた」
人の家の台所で。と不満そうな顔がこちらを見ている。
「俺がこの部屋でしてたのは情報収集だ。ここが知ってる世界か比較するためにも情報が必要だった。だから、申し訳無いけどあんたの事も少し知った。それと、あんたの体には血があまり付いてないだろう。俺が拭いた、その時に見てる。名前的には肉体再生術だっけ?」
「お前…、血を拭いてくれたのは感謝する。それと違う世界から来たのも信じよう。それを知っているということは、お前は書室の文字が読めたということだからな。お前、ニホンジンだな」
「!?!!」
俺のことを知っている、というわけじゃないみたいだけどあからさまにあのメモ帳は日本語のようだったし母国語だということもあったから普通に読めたんだけど。それがこの世界に無い文字だったりして。
「その顔は図星のようだ。次の質問は、台所で何を作っていたか」
「何を?そりゃ台所を借りたのは悪かったと思ってるけど、腹が減ってたし……。俺が作ったのはなんちゃって豚汁だよ」
その答えを聞いて彼は驚いたなんてものではなく、嬉しそうに抱きついてきた。
それに対して俺は近い、筋肉が近い、埋もれるっ!と鼻をスーハースーハーさせて頭がくらっと来ていたが、彼が謎の喜びを見せていることがとても気になった。
しかし聞かなくても良いような気がしているのは、先程感じた家族のような、もしくはそれに似た感情を何故か持っているからか。彼が喜んでいる姿でなんとなく落ち着いた。
「縄、ほどいてくれる?」
「ほどこう、お前の作った料理を食べながら話をしよう」
彼は先程見せた警戒心のカタマリのような表情が無くなったように見え、ほどいてくれているのを見て、彼に「ありがとうございます」と言った。
「なら、撫でて」
「俺のが年下ですよ?」
「オレ父さん居ない。それは知ってるだろ?あの部屋に入ったんだから、でも話したり見たことはあるんだよ。その時の一番良い記憶の雰囲気と同じ感じがするから……撫でて」
なるほど!意味わからん!よく分からないけどこんな筋肉野郎の頭を撫でても良いと、俺に対して少なからず好意を持っていると、やるしかないよな。
しかし頭を撫でるなんて姪っ子とかしかしたこと無いからな。その時と同じような感じで良いだろうか。
声に出してばれなければ、撫でられて不快そうじゃなければ大丈夫だろう。
「それじゃ、失礼して……………………」
「落ち着く……あぁ、親父みたいだ」
「褒め言葉として受け取っとくわ」
ずっと撫で撫でしてることも叶わず彼は納得すると台所に向かっていく。俺はその後ろを付いていくか悩んだが、あの体格から逃げられることもないし、と料理を暖め直したりと食器を用意するなり手伝えることはあると、後ろを付いていくことにした。
「さてと、オレはお前にいくつか聞きたいことがある。まずはどうやってここに来た?」
彼に手と足を紐で固く縛られているので、逃げ出すことはは不可能。しかし彼から対話を持ちかけてくれているのだから、これに乗らない手はない。
「ここには気づいたら居たとしか言えないな。こことは違う世界と思われる場所にいたけど、気付けばここにいた」
「違う世界……」
彼は驚いたように目を開くと少しだけ頬が緩んだように見えたんだが、恐ろしいことを考えてなんてないよな?
ちなみに手鏡についてはまだ彼を信頼するには足りないから教えるつもりはない。どのみち拷問でもされたら教えるだろうけど、帰るためにも絶対に関係ある手段だと思うから。
「次の質問だ。ここで何をしていた」
人の家の台所で。と不満そうな顔がこちらを見ている。
「俺がこの部屋でしてたのは情報収集だ。ここが知ってる世界か比較するためにも情報が必要だった。だから、申し訳無いけどあんたの事も少し知った。それと、あんたの体には血があまり付いてないだろう。俺が拭いた、その時に見てる。名前的には肉体再生術だっけ?」
「お前…、血を拭いてくれたのは感謝する。それと違う世界から来たのも信じよう。それを知っているということは、お前は書室の文字が読めたということだからな。お前、ニホンジンだな」
「!?!!」
俺のことを知っている、というわけじゃないみたいだけどあからさまにあのメモ帳は日本語のようだったし母国語だということもあったから普通に読めたんだけど。それがこの世界に無い文字だったりして。
「その顔は図星のようだ。次の質問は、台所で何を作っていたか」
「何を?そりゃ台所を借りたのは悪かったと思ってるけど、腹が減ってたし……。俺が作ったのはなんちゃって豚汁だよ」
その答えを聞いて彼は驚いたなんてものではなく、嬉しそうに抱きついてきた。
それに対して俺は近い、筋肉が近い、埋もれるっ!と鼻をスーハースーハーさせて頭がくらっと来ていたが、彼が謎の喜びを見せていることがとても気になった。
しかし聞かなくても良いような気がしているのは、先程感じた家族のような、もしくはそれに似た感情を何故か持っているからか。彼が喜んでいる姿でなんとなく落ち着いた。
「縄、ほどいてくれる?」
「ほどこう、お前の作った料理を食べながら話をしよう」
彼は先程見せた警戒心のカタマリのような表情が無くなったように見え、ほどいてくれているのを見て、彼に「ありがとうございます」と言った。
「なら、撫でて」
「俺のが年下ですよ?」
「オレ父さん居ない。それは知ってるだろ?あの部屋に入ったんだから、でも話したり見たことはあるんだよ。その時の一番良い記憶の雰囲気と同じ感じがするから……撫でて」
なるほど!意味わからん!よく分からないけどこんな筋肉野郎の頭を撫でても良いと、俺に対して少なからず好意を持っていると、やるしかないよな。
しかし頭を撫でるなんて姪っ子とかしかしたこと無いからな。その時と同じような感じで良いだろうか。
声に出してばれなければ、撫でられて不快そうじゃなければ大丈夫だろう。
「それじゃ、失礼して……………………」
「落ち着く……あぁ、親父みたいだ」
「褒め言葉として受け取っとくわ」
ずっと撫で撫でしてることも叶わず彼は納得すると台所に向かっていく。俺はその後ろを付いていくか悩んだが、あの体格から逃げられることもないし、と料理を暖め直したりと食器を用意するなり手伝えることはあると、後ろを付いていくことにした。
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