日々の欠片

小海音かなた

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11/9『オフる』

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 ぼんやりする。
 時間の進みがいつもより遅い気がする。
 いつもの“ぼんやり”は偽りの“ぼんやり”だったのだなと思う。
 スマホやテレビ、ラジオなどの電子機器をもちいらず時間を過ごすのが、こんなにも手持ち無沙汰だったとは。
 今日は文明の利器を手放してみよう、と決めて、家に帰ってから通信機器の全てをオフにした。照明も最小限の常夜灯のみ。窓から入る光も僅かで、足元に不安を感じる。
 スマホがないとゲームはできないし音楽もラジオも聞けない。
 更にテレビを点けなければ、家の外で鳴る音しか聞こえない。
 大通り近いけど周りが住宅地だとけっこう静かだよなー。
 ……あー、暇だ。
 いつもみたいにテレビ視ながらスマホいじって漫画読んだりしてたらあっという間に寝なきゃならない時間だけど、たまにはこういう時間もいい。
 とはいえ手持ち無沙汰だから、積ん読してた本の中から一冊取り出して読むことにした。
 本を読むには暗いからと、ベッドサイドテーブルに置かれた照明の電源を入れる。おぉ、眩しい。
 紙の本読むの久しぶり。手に伝わる紙の感触が好ましい。
 電子書籍メインにすれば物も減るんだろうけど、やっぱりどうしても紙の手触りを求めてしまう。好きなんだよなー、紙のもの。
 ゆっくり読み進め、一冊読み終わるころにHDDレコーダーが音を立てて起動した。いつも録画している番組がそろそろ始まるらしい。
 ということは……と大体の時間を予想する。うーん、夜が長い。
 読み終わった本を戻すついでに、積まれていた本の山も本棚などに収納したらだいぶスッキリした。
 それでもまだ手持ち無沙汰だけど……いいや、眠くなるまで本読んでよ。
 いつもならスマホのタイマーを入れて寝るんだけど、明日は休みだし電源落としたままでいいや。
 いつもはさして気にならない外の音が割と聞こえることに気づく。
 走る車の音、若そうな男女数名の会話する声、急に強くなる風の音。
 窓閉めてるのにこんなに聞こえてたんだなぁ、と思いながら本を読み続ける。
 寝る時バサッて顔に落としそうだな、と気づき、あおむけから横向きに体勢を変えた。
 そうしていたらウトウトしだして、同じ行を何度も読み返しちゃって……いつの間にか眠っていたらしく、気づいたら朝になっていた。
「んー、んんん……」
 ベッドの上で伸びをする。読んでいた本は枕元に落ちていた。
 点きっぱなしだった照明を消して、起きあがってカーテンを開け、スマホの電源を入れる。届いていたのはダイレクトメールだけ。
 私の人間関係なんてそんなものよな。
 通信機器をオフにする意味あったかなぁ。ゲームやらなかったしテレビも見なかったから目の疲れは軽減されているけど……。
 こういうのは交友関係が広くて頻繁に連絡が来る人がやったほうが効果的な気がする。
 というわけで、電子機器から離れる時間おわり!
 今日は仕事がお休みなので昨日録画しておいたテレビ番組を視ながら洗濯機回してワイパーで床掃除して乾燥終わった服を畳んでしまって……家事が一旦終わってから昨日できなかったゲームにログインする。おぉ、一日やってないだけで依頼がめっちゃ溜まってる。やりがいあるじゃん。
 ソファに座ってテレビを視ながらゲーム内の依頼をこなす。
 あれ、これ昨日の反動出てない?
 結局、通信機器や電子機器から離れていると、翌日に反動でベッタリになってしまうことがわかった。私には向いていなかった。
 それがわかっただけでも良しとしよう……かな。
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