日々の欠片

小海音かなた

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8/10『頭上から降り注ぐ「くるっぽ」。夏雨(なつさめ)とともに。』

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 自転車通勤してたら雨が降ってきて、同時にどこからか鳩の鳴き声が聞こえてきた。
 どうやら建物のひさしの上にいるらしい。
 そういえば道路にいつもいる鳩たちがいない。雨の日はお休みなのかな。

 夏になって、膨らまなくても体温が維持できるからか、鳩たちは幾分スリムになって街を歩く。
 信号を理解しているのかいないのか、車が走っていない道路の真ん中で道をついばんでる。
 ちゃんと食べられるものかなぁ。
 ポイ捨てゴミが多い都会では心配になるけど、毎日決まった時間に与えられないから餌をあげたりはしない。
 自分ちの庭とかベランダがあればやってたかもしれないけど、あいにくうちのアパートにはそのような余裕の空間はない。
 動物が嫌いとか苦手という人もいるし、フン害があったりするし……野生の生き物の餌付けはしないに越したことはないんだろう。
 いろんなことに責任もって、周囲に迷惑かけないならいいと思うけどね。庭がある家に住めたとしたら、バードフィーダー設置して観察したいし、近所に野良猫がいる地域だったら保護活動とかしたいと思ってるし。
 人間の都合で野生動物の住処を追いやってるんだったら、そのけじめも人間がつけるべきなのだ。という考えの持ち主だから。

 動物が好きで隙あらば動物を見たいと思っている私にとっては、都会でも遭遇率の高い鳩や雀、ネズミなんかは、猫や犬と同様【可愛い生き物】にカテゴライズされている。
 雑菌がすごいらしいから触らないけど(そもそも触らせてくれないし)、見かけると嬉しくなる。と同時に、食べ物の心配もしてしまう。
 人間のように、買うという手法で食料を調達することができない野生の生き物は大変そうに見えるのだ。
 ご飯をあげたい気持ちをグッとこらえて、私は自転車をこぎ続ける。
 たまに茶色だったりマダラだったり、レース用の鳩が野生化したらしき真っ白だったりする鳩がいてバリエーションも豊富だから眺めるのが楽しい。
 頭のてっぺんに抜けた羽毛が残ってふさふさしてて、冠みたいでカワイイ鳩もいる。
 多分私、動物との触れ合いが足りてないんだな。
 かといって触れ合える動物カフェはなんとなく敷居が高いし、お客さんがいっぱいいると気ぃ遣うし。
 自転車でちょっと行ったところにある動物園へ行こうかと思ったけど、平日でも混んでたから結局やめた。
 うーん、我ながら行動力が低い。

 そんなこんなでここ数日鳩のことばかり考えていたら、外出してすぐ、家の前の道路で鳩を見つけた。
 どこからか持ってきたのか落ちていたのか、食パン丸ごと一枚を一羽で食べていた。
(おぉ、大フィーバー……)
 人間みたいに冷蔵庫とか冷凍庫とか使えたら、しばらくは食べ物に困らないだろうけど、そんなのを野生の生き物が利用できるわけもなく……。
(お腹壊さない程度に食べるんだぞー)
 心の中で語りかけ、動画を撮ってから駐輪場へ移動した。

 野生の生き物も、食べたいときに食事ができるようなシステムができたらいいのになぁ。
 彼ら自身は【困る】という感情を持ってないだろうけど、生き物好きな人間としては気になってしまう。
「……驕りかな」
 ぽつりとつぶやいた頭の上、空で鳥がミャーミャー鳴いていた。
 幸せであるように祈ることしかできない無力さを抱えながら、今日も道を走る。
 鳩や雀、散歩中の犬や野良猫、たまにネズミを眺めて愛でながら。
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