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Chapter.118

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 目覚めて(遅刻…!)とハッとして、有休中だったと思い出す。
 目の前には攷斗が寝ている。絡みつく腕の重みが心地良いが、目の前の胸板に自分の吐いた息がとどまって少し息苦しい。
 ゆっくりと寝返り、攷斗に背を向ける。
 目の前に置かれている攷斗の手。その指の間に自分の指を入れて、手を繋いでみる。
(おっきい手……)
 その温もりや肌の感触も愛おしい。攷斗の手を抱き寄せて、そっと腕にキスしてみる。
「……すき……」
 なんて呟いてみる。
 攷斗は背後で寝息を立てて…いたはずだった。
 キスを落としたその腕に意思が戻り、ひぃなを抱き寄せる。
 驚き、身じろぐひぃなに身体を押し付け
「かわいいな~」
 嬉しそうに言って、ひぃなの後頭部に顔を埋めた。
「起きてたの?」
「うん。おはよ」
「おはよう……いつから、起きてた?」
「んー? ひなが寝返り打ったあたり」
(じゃあ最初からじゃん……)
 まぁもういいやと攷斗に身体を委ねる。
 布団の中が二人の体温で暖まり、とても気持ちいい。
 時間が知りたくて可能な限り室内を見渡すが時計が見当たらない。枕元に置いてあるのは攷斗のスマホなので、勝手に見るわけにもいかない。
「どしたの?」
 モゾモゾと動くひぃなに攷斗が問う。
「いま何時なのかなと思って……」
「いいじゃん、今日休みでしょ?」
「そうだけど……」
 なおも起きようとするひぃなを、攷斗は抱き寄せて離さない。
「もう少しこのままでいさせてよ。十年越しでやっと叶ったんだから、もっと浸りたい」
(十年……)
 攷斗との十年間を思い返してみる。ずっと“叶わぬ想い”をいだいていた相手とこんな朝を迎えられたら、浸りたいのは当たり前だ。
 ひぃなだって、攷斗には及ばないかもしれないが、ずっと同じ想いでいたはず。
 自分の気持ちにも気付いて、動くのをやめ、攷斗の腕の中におさまった。
 ただ、昨夜は下着もつけずにそのまま眠ってしまったので、あまり身を寄せられると、なんだか色々気恥ずかしい。
「ひぃなさぁ」
「ん?」
 ちゃんとした名前をさらりと呼ばれ、ひぃなの心臓がきゅんと締め付けられる。
「体調どう?」
「ふつう」
「のど乾いた?」
「少し」
「おなか減った?」
「それはだいじょぶ」
「じゃあ、もう一回しよ?」
 言うや、攷斗が身体を起こしてひぃなに覆いかぶさった。
「えっ? 起きたばっかだよ?」
「うん。でもしたい」
 ひぃなが答えるより先に攷斗がひぃなの唇を塞ぎ、じっくり味わってから、
「いい?」
 離して、可愛らしい微笑みで問う。
「……お好きにどうぞ……」
 恥ずかしそうな嬉しそうな、それでいてふてくされたような、何とも言えない表情で答えて、ひぃなが少し顔を背けた。
 攷斗はとろけそうな笑みを浮かべて、身体を重ねた。

* * *
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