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第七章 魔法王国の動乱

クルクマに帰ろう

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 「よくも我が娘をたぶらかしたな! 打ち首じゃあ!」とかならないとよいのだが。
 王の楽しそうな笑顔が脳裏から離れず不安を抱えながら騎士団兵舎へと帰宅した。
 
「王女様となにかあったでしょ?」

 帰宅するなりエヴァはワクワクした顔で聞いてきた。
 
「私としては王女さま絶対にアークのことお気に入りだと思うのよね。チューくらいしたんじゃないの? ねえ??」

 うちの親、超直観に目覚めたのかな。
 受け答えするとボロが出そうだ。
 
「なんもないです。おやすみなさい、母様」
「アーク、聞かせてよ~何があったのよ~」

 アンナの宿屋へ行けばよかったな。
 俺は努めて沈黙を貫き通した。

 翌朝。
 俺とエヴァとアンナは故郷クルクマへと発つため荷物をまとめていた。
 キサラギが完全にエネルギー切れになる前に、少しでもはやく修復しなくてはならない。俺の人生は毎日が時間に追われている。

 朝早く、マントに身を包んだエフィーリア一行が見送りに来てくれた。
 ヘンリックはいつも通り寡黙に表情をかえずエフィーリアの傍らにたたずみ、ジェイクとフラワーはどこかぎこちない笑顔をつくっていた。

「二日酔い」
 
 ノザリスがぼそっとつぶやいた言葉ですべての事情を察するには十分だった。
 
「アーカム・アルドレア、どうか無事で。エフィーリアと魔法王国を救ったようにきっと多くを救済してみせてください」
「期待が重たいですね、ノザリスさん。でも、きっとそうしますよ。望まずとも怪物たちの手は緩みませんので」
「勇敢な賢者殿の道に光あれ」

 エフィーリアとその周辺は俺が狩人協会に所属することをなんとなく察している。
 まあ彼ら彼女らに限った話でもないかもしれないが。

「じゃあな、アーカム。レトレシアに帰ってきたら王都に寄れよ。エフィーはお前を豪快にもてなす。必然、俺たちも豪華な食事の席につけるってもんだぜ」

 ジェイクは何とか言葉を絞りだす。

「うぅ、まじでやばい、ベッドに帰りたい……やばいって、あっ、出る、まずいやばい!」

 フラワーは死にそうにしているので放っておいてあげよう。

「うぅ、頑張ってね、なにか力になれることがあったら王都に、うぅやばい!」
 
 最後まで言い切れなかったが、まあ困った時には頼ってくれって感じだと勝手に補完して理解しておこう。

「アルドレア殿、どうかお元気で。クーデターの一件では命を救われました。このご恩は必ずお返しいたします」
 
 ヘンリックと固く握手をする。
 
「ローレシアはあなたの故国ですわ。それを忘れないでくださいまし、アーカム」
「もちろん。順調にいけば来年の今頃は穏やかな日々に戻っている予定ですから」
「穏やかな日々?」
「はい。帰ってきたら魔法学校へ行こうと思っていたんです」
「もちろん、レトレシア魔法魔術大学へ行くのでしょう?」
「え。あー……どこにするかは、まだ考えている最中です」

 一瞬、アーケストレスでいまも孤高であるだろう少女の顔が思い浮かぶ。
 ドラゴンクランとレトレシア。どちらも素晴らしい魔法学校だと聞く。
 判断は未来の自分に委ねよう。

 そんなこんなで俺たちはドレディヌスの町をあとにした。
 見送られる皆へ手をふりながら。
 
「やあ、アーカムくん」
「げっ」

 門を出て程なく進んだ先、森に差し掛かったあたりで梅髪の女が待ち伏せしていた。
 思わず声が出かける。というかちょっと出たかも。
 エヴァは目を丸くして「あら? こちらの方は?」と俺に説明を求めて来る。
 流れるようにアンナを見やる。

「はあ。私の姉です。たぶん同行するつもりかと」
「まあ、アンナちゃんにお姉ちゃんがいたなんて! それもすごい美人さんね!」
「いえいえ、ありがとうございます。アーカムくんのお母さんはとっても良い人だねぇ、本当にね」

 エレナは一瞬でエヴァと打ち解ける。
 この人、付いて来る気か?
 
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