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第九節 迫りくる世界の闇・セイル編
第179幕 命吹き込む魔方陣
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「ふ……ははは! ぼろぼろになって、まだ戦えるってか?
悩みを振り切ったような目をしてるが、これだけの差が覆るとでも思ってるのか?」
「当たり前だ。勝算のない戦いをするほど、俺も馬鹿じゃない」
これから先、ただ怒りに任せて戦いに行ったんじゃ勝てない。
そんな敵を相手にする為に俺は今まで鍛えてきたんだ。
剣も魔方陣も……俺が出来る事全て!
「勝てるつもりでいるのか? 剣も魔方陣も、俺と比べれば見劣りするお前が?
笑わせんなよ!」
「勝手に笑ってろよ。すぐにそんな事も出来なくしてやる」
荒い息を整えながら、俺は魔方陣を展開していく。
起動式は『命』『炎』『鷹』で構築する。
それに魔力を注ぎ込むと身体に負担が掛かり、俺は一瞬虚脱感を覚えるが、こんなものは大した事ではない。
「喰らえ――!」
発動した魔方陣から飛び出したのは、鋭いくちばし。
左右の足は三つの爪が生えていて……雄々しく羽ばたくその姿は、何よりもたくましい。
子供の頃、アサルトホークという魔物を見たことがある。
と言っても狩られて死体になっていたものを……だけれどな。
それを知っているからか、具現化した炎の鷹もそれに似た感じになっていた。
「な……なんだ? その魔方陣は……!」
ラグズエルは驚きながら一歩後ろに下がって俺の魔方陣から飛び出してきた炎の鷹を見て、困惑していた。
それもそうだ。
俺自身、魔方陣を使う相手と何度も戦ったことはあるが、こんな風に生き物を形どった魔方陣を扱う奴には出会ったことはない。
あの真っ白の世界で出会った不思議な少年から貰った力。
その一つがこの『命』の起動式を使用する魔方陣だ。
他にももう一つあるけど……特にこれは『炎』や『氷』に文字通り『命』を吹き込む事ができる。
初めて使った時は、上手くコントロールが出来ずに魔力をガンガン吸い取られてあっという間に気絶してしまったりもしたが、今はそんなヘマはしない。
この時の為に、俺は何度もぶっ倒れながら魔方陣を行使し続け、自身を酷使したのだから。
「行けっ!」
命令すると炎の鷹はけたたましい鳴き声を上げ、一直線にラグズエルの方へと突進していく。
彼はそれを回避して、不敵な笑みを浮かべているようだけど、それだけで俺の魔方陣を上手く避けたつもりなら……それは甘い。
これはただ一度避けただけで終わるような代物じゃない。
炎の鷹はそのまま旋回して、再びラグズエルの背後から襲いかかってくる。
「なに……!?」
「そう簡単にこの魔方陣を避けられると思うなよっ」
俺は更に魔方陣を展開させる。
今度の起動式は『命』『氷』『狼』だ。
以前、勇者会合からの帰りに襲われた時に見た黒い狼の魔物。
あれを再現して作った氷の狼に俺はまたがり、指示を出してラグズエルに突撃する。
「ラグズエル!」
「はっ! その程度の児戯が……俺に通じると思うなよ!」
ラグズエルは魔方陣を展開して、大きな水の槍を発生させて炎の鷹を迎撃するけど、するりとそれを紙一重でかわして、一気にラグズエルに肉薄し、彼は憎々しげに顔を歪めた。
「ちっ……まさかお前がこれほどの魔方陣を扱うとはな……!」
「影で俺が修行していたのは、お前も知っていたはずだ。
その成果が……これだぁぁっ!」
炎の鷹の突撃をかわしたラグズエルに向かって、氷の狼に乗った俺の剣戟が襲いかかり、彼はそれをぎりぎり剣で防いできた。
身体から魔力がどんどん抜けていくのを感じる。
絶えず気絶するまで魔力を扱い、訓練していたしていたおかげで、体内の魔力量が大幅に上がっているのを感じるけど……それでもこの減り方は不味い。
そう長くは耐えきれるものじゃない。
戦いが長引けば、不利になるのは俺の方だ。
だからこそ……一気に決める!
俺は魔方陣を展開し、更に追撃を仕掛ける。
起動式は『命』『雷』『虎』だ。
これも子供の頃にフォレストタイガーという魔物の死体を見たからこそ、思いついた魔方陣だ。
「三匹とも、奴を撹乱しろ!」
ある程度ラグズエルに接近した俺は、氷の狼から飛び降り、三匹の獣に指示を出す。
彼らは俺の与えた命令通りに警戒しつつも、ラグズエルの隙をいつでも突くことができるように動いてくれる。
一気に距離を詰めて、ラグズエルに斬りかかった俺の方は、容易く受け止められるのだが、それと同時に雷の虎があいつの喉笛に食らいつこうと飛びかかっていく。
「ちっ、鬱陶しい!」
ラグズエルは俺の剣を押し返して、そのまま反対側に飛び込むように回避するのだけれど、それを待ち構えるかのように炎の鷹が襲いかかり、やつの身体を焼いていく。
「ぐ……おおおお……!!」
転げ回るように逃げるラグズエルに追撃を仕掛ける氷の狼だけれど、眼前に魔方陣を展開され、激しい爆発とともに流れていた魔力の一部が途切れるのを感じた。
氷の狼の残骸が周囲に飛び散り、そこに俺が飛び込むように乱入してくる。
「まだ……まだぁ!」
「調子に乗るなよ! セイル風情がぁぁぁっ!!」
完全に頭が切れたというかのように吠えるラグズエルと激しく剣戟を交わし、俺が押し負けて弾き飛ばされると、すぐさま二匹の獣が猛攻を加える。
そして俺が攻防に参戦すると、今度は二匹の獣に流れる魔力を出来る限り抑える為に待機をする……それの繰り返しを続けて、俺とラグズエルの戦いは徐々に苛烈さを増していき、庭だった場所は徐々に荒れ地へと変わり、建物も崩れてきている。
そんな騒ぎの中、魔人の一人も現れないのは目の前の男の策略の一つなのだろうが……今はそれがありがたかった。
決着を焦らず……でも急がなければならない。
なら、俺も全力で――自分に今出せる最大の魔方陣・動きを繰り出すしかない。
その結論に達した俺は、戦闘を二匹の獣に任せ、魔方陣の展開を始める。
最大の一撃を放つ為に……俺の全てを懸けて、この男だけはここで葬ってみせる――!
悩みを振り切ったような目をしてるが、これだけの差が覆るとでも思ってるのか?」
「当たり前だ。勝算のない戦いをするほど、俺も馬鹿じゃない」
これから先、ただ怒りに任せて戦いに行ったんじゃ勝てない。
そんな敵を相手にする為に俺は今まで鍛えてきたんだ。
剣も魔方陣も……俺が出来る事全て!
「勝てるつもりでいるのか? 剣も魔方陣も、俺と比べれば見劣りするお前が?
笑わせんなよ!」
「勝手に笑ってろよ。すぐにそんな事も出来なくしてやる」
荒い息を整えながら、俺は魔方陣を展開していく。
起動式は『命』『炎』『鷹』で構築する。
それに魔力を注ぎ込むと身体に負担が掛かり、俺は一瞬虚脱感を覚えるが、こんなものは大した事ではない。
「喰らえ――!」
発動した魔方陣から飛び出したのは、鋭いくちばし。
左右の足は三つの爪が生えていて……雄々しく羽ばたくその姿は、何よりもたくましい。
子供の頃、アサルトホークという魔物を見たことがある。
と言っても狩られて死体になっていたものを……だけれどな。
それを知っているからか、具現化した炎の鷹もそれに似た感じになっていた。
「な……なんだ? その魔方陣は……!」
ラグズエルは驚きながら一歩後ろに下がって俺の魔方陣から飛び出してきた炎の鷹を見て、困惑していた。
それもそうだ。
俺自身、魔方陣を使う相手と何度も戦ったことはあるが、こんな風に生き物を形どった魔方陣を扱う奴には出会ったことはない。
あの真っ白の世界で出会った不思議な少年から貰った力。
その一つがこの『命』の起動式を使用する魔方陣だ。
他にももう一つあるけど……特にこれは『炎』や『氷』に文字通り『命』を吹き込む事ができる。
初めて使った時は、上手くコントロールが出来ずに魔力をガンガン吸い取られてあっという間に気絶してしまったりもしたが、今はそんなヘマはしない。
この時の為に、俺は何度もぶっ倒れながら魔方陣を行使し続け、自身を酷使したのだから。
「行けっ!」
命令すると炎の鷹はけたたましい鳴き声を上げ、一直線にラグズエルの方へと突進していく。
彼はそれを回避して、不敵な笑みを浮かべているようだけど、それだけで俺の魔方陣を上手く避けたつもりなら……それは甘い。
これはただ一度避けただけで終わるような代物じゃない。
炎の鷹はそのまま旋回して、再びラグズエルの背後から襲いかかってくる。
「なに……!?」
「そう簡単にこの魔方陣を避けられると思うなよっ」
俺は更に魔方陣を展開させる。
今度の起動式は『命』『氷』『狼』だ。
以前、勇者会合からの帰りに襲われた時に見た黒い狼の魔物。
あれを再現して作った氷の狼に俺はまたがり、指示を出してラグズエルに突撃する。
「ラグズエル!」
「はっ! その程度の児戯が……俺に通じると思うなよ!」
ラグズエルは魔方陣を展開して、大きな水の槍を発生させて炎の鷹を迎撃するけど、するりとそれを紙一重でかわして、一気にラグズエルに肉薄し、彼は憎々しげに顔を歪めた。
「ちっ……まさかお前がこれほどの魔方陣を扱うとはな……!」
「影で俺が修行していたのは、お前も知っていたはずだ。
その成果が……これだぁぁっ!」
炎の鷹の突撃をかわしたラグズエルに向かって、氷の狼に乗った俺の剣戟が襲いかかり、彼はそれをぎりぎり剣で防いできた。
身体から魔力がどんどん抜けていくのを感じる。
絶えず気絶するまで魔力を扱い、訓練していたしていたおかげで、体内の魔力量が大幅に上がっているのを感じるけど……それでもこの減り方は不味い。
そう長くは耐えきれるものじゃない。
戦いが長引けば、不利になるのは俺の方だ。
だからこそ……一気に決める!
俺は魔方陣を展開し、更に追撃を仕掛ける。
起動式は『命』『雷』『虎』だ。
これも子供の頃にフォレストタイガーという魔物の死体を見たからこそ、思いついた魔方陣だ。
「三匹とも、奴を撹乱しろ!」
ある程度ラグズエルに接近した俺は、氷の狼から飛び降り、三匹の獣に指示を出す。
彼らは俺の与えた命令通りに警戒しつつも、ラグズエルの隙をいつでも突くことができるように動いてくれる。
一気に距離を詰めて、ラグズエルに斬りかかった俺の方は、容易く受け止められるのだが、それと同時に雷の虎があいつの喉笛に食らいつこうと飛びかかっていく。
「ちっ、鬱陶しい!」
ラグズエルは俺の剣を押し返して、そのまま反対側に飛び込むように回避するのだけれど、それを待ち構えるかのように炎の鷹が襲いかかり、やつの身体を焼いていく。
「ぐ……おおおお……!!」
転げ回るように逃げるラグズエルに追撃を仕掛ける氷の狼だけれど、眼前に魔方陣を展開され、激しい爆発とともに流れていた魔力の一部が途切れるのを感じた。
氷の狼の残骸が周囲に飛び散り、そこに俺が飛び込むように乱入してくる。
「まだ……まだぁ!」
「調子に乗るなよ! セイル風情がぁぁぁっ!!」
完全に頭が切れたというかのように吠えるラグズエルと激しく剣戟を交わし、俺が押し負けて弾き飛ばされると、すぐさま二匹の獣が猛攻を加える。
そして俺が攻防に参戦すると、今度は二匹の獣に流れる魔力を出来る限り抑える為に待機をする……それの繰り返しを続けて、俺とラグズエルの戦いは徐々に苛烈さを増していき、庭だった場所は徐々に荒れ地へと変わり、建物も崩れてきている。
そんな騒ぎの中、魔人の一人も現れないのは目の前の男の策略の一つなのだろうが……今はそれがありがたかった。
決着を焦らず……でも急がなければならない。
なら、俺も全力で――自分に今出せる最大の魔方陣・動きを繰り出すしかない。
その結論に達した俺は、戦闘を二匹の獣に任せ、魔方陣の展開を始める。
最大の一撃を放つ為に……俺の全てを懸けて、この男だけはここで葬ってみせる――!
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