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第六節 リアラルト訓練学校編

第109幕 B級の生徒たち

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 試験日まで残り七日――いや、六日か。
 六日というとまだ時間があるようにも思うが、そうやって呑気構えてるとあっという間に時間が過ぎ去ってしまうだろう。

 というわけで俺とミシェラとレグルは今、残りのメンバーを見つけるために放課後のB級の教室の目の前にいた。

「それじゃ、ちょっと待ってください。
 今から呼んできますんで」
「うん、よろしくねー!」

 グッ、と拳を握って親指を突き立てて教室に突撃していくレグルと、それを手を振りながら笑顔で見送るミシェラ。
 ……というか、流石に制服の色が違うからかものすごく目立っている。

「あれが噂の……」
「そ、そう。ちっちゃい子好きの……」
「ほら、あの子がそうだよきっと」
「こんなところにまで連れ回すなんて……」

 ち、違う……どっちかというと俺の方が悪目立ちしてるだけだった!
 というかG級とA級ではその噂はなくなったはずなのに、B級ではまだ残ってるのか……!
 おまけにミシェラの事を男装した女の子だと勘違いしている始末。

「はぁ……仕方ない。まずは話し合うほうが先か……」
「おにいちゃん?」
「ちょっとそこで待っててくれ。後、今だけはその呼び方はやめてくれ」

 それからの俺はしばらくの間、謂われのない誤解を解くことに奔走するのだった。
 シエラのやつのせいで飛んだ苦労をすることになったもんだ……。


 ――


 なんとかシエラのデタラメを解くことが出来た俺は他の生徒にもそう触れ回るように説得してからミシェラの待つB級教室の入り口の方に向かうと、既にレグルも教室からこちらに戻ってきたようで、彼の隣には彼と同じくらいの背丈をした少女がいた。

 薄い赤い髪をしているが、ピンクとはまた違う色合いで綺麗だ。それを左右に分けられているが、ルーシーと違って彼女は普通に垂らしている。
 そして目の方は髪とは逆の燃えるような赤色で、宝石のようにも見える。

「この二人がレグルの紹介したいって言ってた……」
「グレリア師匠とミシェラだ」
「僕がミシェラだよ!」

 笑顔で手をひらひらと振るミシェラに対し、女の子は少し怯えたような視線をレグルの方に送るが、肝心の彼は全く気付いてないようだ。

 仕方ない……ここは少しフォローした方がいいだろう。
 気が萎えてしまっても困るからな。

「大丈夫だ。危害を加えなければミシェラもなにもしないから」
「なにもしないよー」

 それでも少し警戒しているような視線を俺とミシェラの交互に向けている。

「あたし、ルルリナ。ルルリナ・エーデルテ」
「よろしく」
「ルルリナちゃんよろしくねー」

 彼女がレグルの言ったB級の知り合いか……。
 初対面の女の子をまじまじと見るのは流石に非常識だからしてはいない……が、ミシェラの方は興味津々で彼女の方を注視している。

「うん、で、今回の試験だけど……友達と一緒でいいなら行ってあげる」
「ほんとう!? 良かったねおにいちゃん! これで全員揃うよ!」
「だから……もういいか」

『おにいちゃん』と呼ばれた瞬間、ルルリナは変人を見るような目で俺を見てきた。
 いや、気持ちはわかる。

 最近では慣れたが、B級の生徒はG・A級の生徒が大勢いる訓練場にはあまり来ない。
 必然的にミシェラが俺の事を『おにいちゃん』と呼んでいる姿を見る者は少ないということだ。

 ――ああ、なるほど。
 だから俺が『小さい子が好きな変態』というイメージがそのまま残ったというわけか……。

 おまけにB級の生徒はミシェラの名前と多少の容姿は知ってても、笑顔を振りまいている彼がその本人だとは思わない。
 その理由として、G級ではミシェラに対する結構具体的な噂が流れているが、A級になるとケタケタ狂い笑ってるキチガイの男がいる……とかいう噂が流れている。

 一つ下がるだけでそこまで違うんだ。
 B級にまでなると、どんな風に噂が肥大化してるかわかったもんじゃない。

「レグル、本当に大丈夫なの……?」
「あったりまえだ! 特に師匠は相当強いぜ!」
「そりゃあG級の生徒なんだから強いのはわかるけど……」

 そんな胡散臭そうな目で俺たちを見ないで欲しいもんだ。
 気持ちはわかるけどな。

「ルルリナちゃん……一緒に来てくれないの?」

 悲しい……という感情を知らない様子のミシェラはきょとんとした様子でルルリナをじっと見ている。
 しばらくの間互いに見比べて……先に折れたのはルルリナの方だった。

「はぁ……今更一緒に行かない、なんて言わないから。
 でもその子が嫌って言ったらあたしも行かない。それでいい?」
「ああ、構わない」

 どうせ勧誘しなければならないなら、1か0の違いだ。
 今全員揃う可能性がある以上、これを断る理由はない。

「それじゃ、明日また来て。その時にもうひとりの子を連れてくるから」
「わかった」

 ルルリナはそれだけ言うとさっさとどこかに行ってしまった。

「す、すみません。あいつ、慣れてない奴にはいつもああいう態度で……」
「別に気にしてないさ」

 俺も万人受けするような男ではないしな。
 ともあれ、事態はあまり変わってないが、少なくとも一歩前進はしただろう。
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