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第四節 魔人の国・探求編
第69幕 かつての故郷
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アッテルヒアからシュテルク村まではそう日数もかからず到着する事が出来た。
地形が変わってるせいで俺が思っていたような道中ではなかったが……まあ、色々昔を思い返す事が出来た旅路だった。
シエラがいなかったらそんな風に感じる事はなかっただろう。
なにせ変わり過ぎてまず地図でも見ながらじゃないと進めなかったらろうからな。
久しぶりに訪れたここは――700年の歳月が経ってもなお、村の名前以外にはなんの変化もなかったのは意外だったが、やはりあの日見た光景は存在しなかった。
広がる畑。家畜が歩くその様は全く変わらないはずなのに、丘ができたり野原が森になっていたら……その逆もあったりと、時の流れを感じさせる。
どこか寂しくて、切なく感じるのは、きっと俺が過去の村の姿を知っているからだろう。
「どうしたの? そんな顔して」
「ん、いや、何でもない」
「もしかして、初めてグレリア様が生誕された場所を見て、感動してる?」
俺がその『グレリア様』本人だという事を全く知らないシエラは、少しからかうような目で俺のことを見ている。
「……そうかもな」
微妙に複雑な気分だが、それよりも今は大事な事がある。
このシュテルク村にある自前の迷宮に眠っているであろう『グラムレーヴァ』を手に入れることだ。
シエラとも多少言い争いになってしまったが、あんなものを本物の『グラムレーヴァ』だとは俺は認められない。
だからこそ、今、俺はここにいるんだ。
「それで、すぐに迷宮の方に向かう?」
「そうだな。なるべく早い方がいいだろう」
目的を果たすべく、俺たちはどんどん先に進んでいくのだけれど……なんというか、気になることが一つある。
「そういえば、観光客とかは多いのに、それを活かした発展とかはしてないんだな」
「あまり汚したりしたらグレリア様が悲しみになるだろうから……って理由らしいよ。
現に態度の悪い魔人も多いからね」
そういうところはもっともらしい理由をつけてくれてるんだな。
まあ実際、偽物の『グラムレーヴァ』を見たときは何ともいえない気持ちになったし、ある意味正しいか。
本当のところはわからないが、少なくとも今ものどかそうな村で良かった――そう思う俺がいたのだった。
――
「……本当にこの迷宮に本物の『グラムレーヴァ』があるの?
もう散々探し尽くされた後なのに?」
あれからまっすぐこの迷宮に向かい、中に入って深部を目指している途中、いよいよもって怪しい、と言いたげな目つきでシエラは俺の方も見ている。
この迷宮が初めて見つかったのはもう随分と前のことで、時の王様なんかが調査隊を組んで何度も調べた後……今を生きる魔人の奴らにとって、ここは半ば観光スポット的なものになっているらしい。
よくもまあ700年もの間保ったままでいられたなとも思ったが、ちょくちょく修繕されてるらしく、これもまた『グレリア様』の人気が窺い知れる一因になってる。
ちなみに、俺が適当に置いておいた価値のあるものも根こそぎ持っていかれたらしく、すべて城の方に大事に保管されているそうだ。
「奥に行ってみればわかるって」
「……もう随分奥まで来たと思うんだけど」
歩き続けることに疲れたのか、妙にふてくされ気味な声を上げるが、それを無視してどんどん進んでいくと、シエラもため息一つついて大人しくついてくる。
しっかし、本当に散々調べられてるんだな。
こっそり仕掛けた罠とかもものの見事に解除されてあまり面白みがない。
そういうのを求めてるわけではないのだけれど、ここまで何もないと、何でここが観光スポットになってるんだと疑問を感じざるを得ない。
魔人達のよくわからない感性に首を傾げながらも、ようやく到着した最後の部屋は、ちょっとした石造りの立派な空間になっていた。
「最奥まで来たけど、やっぱり何もないじゃない」
そりゃ散々調べ尽くされたんだからな。
だけど本当に大切なものってのは誰にも見つからない場所に隠しているもんだ。
「まあ、見てみな」
最奥の部屋の左上の隅。
ここにちょっとした探知の魔方陣にも引っかからないようなある種の細工がされてある。
魔方陣をその床に発動させると俺の魔方陣と同じ起動式が展開して、ゆっくりと床が移動して、新しい道が出現する。
これにはシエラも驚いたらしく、慌てて駆け寄って、マジマジと俺と床を交互に見ていた。
「な、なんで……!?」
「単純な構造だよ。
ここの石の裏側にだけ魔方陣を掘って下に続く階段を作ってたってわけだ。
今も起動するかはわからなかったが、壊すような事にならなくてよかったよ」
「あなたは……」
ここでようやく俺の言葉を信用しはじめた様子のシエラだったが、そのせいかどういう風に俺と接すれば良いのかと少し悩んでいるようだった。
「ほらいつまでも驚いてないで、先に進もうぜ」
「う、うん」
進んだ先は所々ボロボロになってるところもあるが、上の迷宮部分が大切に使われているおかげか、ここもまだ原形をとどめていた。
更にそのまま進んでいくと、一つの部屋にたどり着いた。
「こ、ここに……?」
震える声で今度は俺と部屋の扉を交互に見るシエラに対し、俺は首を横に振る。
「通路の横にもさっきと同じものを施してある。
ちょっと待ってろ。開け方が複雑だから今開けてやるよ」
部屋に続く通路の真ん中あたり……その左側に俺はさっきと同じように魔方陣を展開させる。
ただし、今度はかなり複雑な起動式を構築させる。
通路の裏に描かれているのと寸分違わず同じものにしなければならないし、破壊して道を繋げようにも、周囲の壁は俺が手に入れることが出来うる限り硬い金属で通路と部屋を作っているからな。
下手な攻撃ではビクともしないはずだ。
最後に開いた扉の先は、誰かに荒らされたような形跡は全くない。
ということはここにあるんだ。
俺の相棒である『グラムレーヴァ』が――。
地形が変わってるせいで俺が思っていたような道中ではなかったが……まあ、色々昔を思い返す事が出来た旅路だった。
シエラがいなかったらそんな風に感じる事はなかっただろう。
なにせ変わり過ぎてまず地図でも見ながらじゃないと進めなかったらろうからな。
久しぶりに訪れたここは――700年の歳月が経ってもなお、村の名前以外にはなんの変化もなかったのは意外だったが、やはりあの日見た光景は存在しなかった。
広がる畑。家畜が歩くその様は全く変わらないはずなのに、丘ができたり野原が森になっていたら……その逆もあったりと、時の流れを感じさせる。
どこか寂しくて、切なく感じるのは、きっと俺が過去の村の姿を知っているからだろう。
「どうしたの? そんな顔して」
「ん、いや、何でもない」
「もしかして、初めてグレリア様が生誕された場所を見て、感動してる?」
俺がその『グレリア様』本人だという事を全く知らないシエラは、少しからかうような目で俺のことを見ている。
「……そうかもな」
微妙に複雑な気分だが、それよりも今は大事な事がある。
このシュテルク村にある自前の迷宮に眠っているであろう『グラムレーヴァ』を手に入れることだ。
シエラとも多少言い争いになってしまったが、あんなものを本物の『グラムレーヴァ』だとは俺は認められない。
だからこそ、今、俺はここにいるんだ。
「それで、すぐに迷宮の方に向かう?」
「そうだな。なるべく早い方がいいだろう」
目的を果たすべく、俺たちはどんどん先に進んでいくのだけれど……なんというか、気になることが一つある。
「そういえば、観光客とかは多いのに、それを活かした発展とかはしてないんだな」
「あまり汚したりしたらグレリア様が悲しみになるだろうから……って理由らしいよ。
現に態度の悪い魔人も多いからね」
そういうところはもっともらしい理由をつけてくれてるんだな。
まあ実際、偽物の『グラムレーヴァ』を見たときは何ともいえない気持ちになったし、ある意味正しいか。
本当のところはわからないが、少なくとも今ものどかそうな村で良かった――そう思う俺がいたのだった。
――
「……本当にこの迷宮に本物の『グラムレーヴァ』があるの?
もう散々探し尽くされた後なのに?」
あれからまっすぐこの迷宮に向かい、中に入って深部を目指している途中、いよいよもって怪しい、と言いたげな目つきでシエラは俺の方も見ている。
この迷宮が初めて見つかったのはもう随分と前のことで、時の王様なんかが調査隊を組んで何度も調べた後……今を生きる魔人の奴らにとって、ここは半ば観光スポット的なものになっているらしい。
よくもまあ700年もの間保ったままでいられたなとも思ったが、ちょくちょく修繕されてるらしく、これもまた『グレリア様』の人気が窺い知れる一因になってる。
ちなみに、俺が適当に置いておいた価値のあるものも根こそぎ持っていかれたらしく、すべて城の方に大事に保管されているそうだ。
「奥に行ってみればわかるって」
「……もう随分奥まで来たと思うんだけど」
歩き続けることに疲れたのか、妙にふてくされ気味な声を上げるが、それを無視してどんどん進んでいくと、シエラもため息一つついて大人しくついてくる。
しっかし、本当に散々調べられてるんだな。
こっそり仕掛けた罠とかもものの見事に解除されてあまり面白みがない。
そういうのを求めてるわけではないのだけれど、ここまで何もないと、何でここが観光スポットになってるんだと疑問を感じざるを得ない。
魔人達のよくわからない感性に首を傾げながらも、ようやく到着した最後の部屋は、ちょっとした石造りの立派な空間になっていた。
「最奥まで来たけど、やっぱり何もないじゃない」
そりゃ散々調べ尽くされたんだからな。
だけど本当に大切なものってのは誰にも見つからない場所に隠しているもんだ。
「まあ、見てみな」
最奥の部屋の左上の隅。
ここにちょっとした探知の魔方陣にも引っかからないようなある種の細工がされてある。
魔方陣をその床に発動させると俺の魔方陣と同じ起動式が展開して、ゆっくりと床が移動して、新しい道が出現する。
これにはシエラも驚いたらしく、慌てて駆け寄って、マジマジと俺と床を交互に見ていた。
「な、なんで……!?」
「単純な構造だよ。
ここの石の裏側にだけ魔方陣を掘って下に続く階段を作ってたってわけだ。
今も起動するかはわからなかったが、壊すような事にならなくてよかったよ」
「あなたは……」
ここでようやく俺の言葉を信用しはじめた様子のシエラだったが、そのせいかどういう風に俺と接すれば良いのかと少し悩んでいるようだった。
「ほらいつまでも驚いてないで、先に進もうぜ」
「う、うん」
進んだ先は所々ボロボロになってるところもあるが、上の迷宮部分が大切に使われているおかげか、ここもまだ原形をとどめていた。
更にそのまま進んでいくと、一つの部屋にたどり着いた。
「こ、ここに……?」
震える声で今度は俺と部屋の扉を交互に見るシエラに対し、俺は首を横に振る。
「通路の横にもさっきと同じものを施してある。
ちょっと待ってろ。開け方が複雑だから今開けてやるよ」
部屋に続く通路の真ん中あたり……その左側に俺はさっきと同じように魔方陣を展開させる。
ただし、今度はかなり複雑な起動式を構築させる。
通路の裏に描かれているのと寸分違わず同じものにしなければならないし、破壊して道を繋げようにも、周囲の壁は俺が手に入れることが出来うる限り硬い金属で通路と部屋を作っているからな。
下手な攻撃ではビクともしないはずだ。
最後に開いた扉の先は、誰かに荒らされたような形跡は全くない。
ということはここにあるんだ。
俺の相棒である『グラムレーヴァ』が――。
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