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第三節 英雄の道 セイル編
第59幕 そして勇者は合流する
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カナラサの町でのアンヒュルと戦いが終わってから……俺達はアンヒュル達のいる中央に最も近いところにある町・ダティオにやってきていた。
ダティオはジパーニグの中でもそれなりに大きな町に該当するらしく、その象徴は堅牢な要塞の形をしていることにほかならない。
外壁で取り囲まれた遥か大きく円状の町は、三層の壁によって構築されている。
初めに作られた場所から一区、二区という順で区画分けされていき……現在は一区と三区が厳重に管理されていている
一区は上流区、二区は住民区。三区は農商区となっていて、食べ物が重要視されがちなここでは優先順位の結果、そうなっているらしい。
俺達は司を探して三区の中でも二区に近い、商業区にいた。
他の町で探していた結果、ようやくこのダティオの町にいることがわかって追いかけてきたというわけだ。
「随分遠くまできたな」
「そうだねー……いつの間にかこんなところだもんね」
俺とエセルカが少し遠い目をしていると、くずはの方は思いっきり強いため息をついていた。
「本当に……とうとうここまできてしまったわね」
……それほど司と合流するのが嫌なんだろう。
気持ちはわかるが、いい加減覚悟を決めるしかないだろう。
人の好き嫌いよりもアンヒュルと戦うことが優先なんだから。
俺達は軽く周辺の飯屋や道具屋で聞きまわったところ、今現在泊まっているだろう宿屋のところまで辿り着いたというわけだ。
早速中に入ってみると、知らない女の声に紛れて聞き覚えのある声が聞こえてくる。
その声の方へと歩いていくとそこにいたのは――。
「久しぶりだな、司」
「あん……? お前ら……!」
食堂の方で女と楽しそうに食事をしている司の姿だった。
……こいつ、随分と楽しそうに飯食ってたけど、アンヒュルと戦ってた……んだよな?
司のメンバーは三人。
一人は前に俺達と一緒に旅をしていたミシェリさん。
シアンブルーのうなじが隠れる程度に短くまとめた髪と目が特徴的で、いかにもなローブを身にまとい、杖を持っている俺より年上そうな女。
それとちょっと明るい緑色の髪に、左右の髪をリボンで結わえた……まあ、同じく俺より上そうな人だ。
司も元々上だし、それを考えたらほぼ同年代かな?
「司様、どなたですか?」
「ああ、おれと同じ【英雄召喚】で喚び出された勇者のメンバーだ。
で、あそこの不機嫌そうなのが勇者のくずは」
「ちょっと! そんな雑な紹介しないでくれる!?」
あんまりにもやる気のない、適当紹介に思いっきり睨みつけてガーっと攻めるくずは。
……司の態度があんまりなのもわかるけどさ、出会った瞬間にいきなり喧嘩は勘弁して欲しい。
「くずは様、お久しぶりです」
「……ミシェリさん、久しぶり」
まあまあとなだめるようにこっち側に来たミシェリさんの言葉に多少冷静さを取り戻したのはいいんだが、くずははむくれるように顔をそっぽに向けてしまった。
他の取り巻きたちはエセルカの事をなぜかちらちらと警戒するかのように見ているようで、その事にエセルカも気づいて少し怖気づいているようだった。
相変わらず戦わない時の弱気な小動物様子には苦笑いも浮かんでくるけど、そういうのもあいつらしさなんだろう。
とか思っていると、爆弾を放り込んでくるのはこの目の前にいる司という男だった。
「なんだ、あいつがいなくなって落ち込んでるのかと思っていたけど、両手に花で中々上手くやってるじゃないか。
ま、俺には負けるだろうけどな」
「……次言ってみろ。いくら勇者でもたたじゃおかねぇぞ」
つい挑発に乗ってしまって殺気を出して睨む俺に対し、司側のメンバーの二人が一斉に戦闘態勢に取ろうとして、それをミシェリさんが慌てて止めてくれる。
「皆! やめなさい!」
大きな声で一喝するミシェリさんにビクッと肩をすくめ、すごすごと引き下がる司のお付きのような奴ら。
対して司自身は『仕方がないな』と言った様子で、全く悪びれることもこともないのがちょっとなぁ……。
「わかったわかった。短気なやつだなー。
……ところで、お前たちも王様に言われてきたのか?」
「……そうよ。あんたと合流するようにってね」
くずはが嫌そうにちらっと視線を向けているようだったが、そこでおつきのシアンブルーの女が声を上げてきた。
「だったらいらない。
司にはあたし達だけで十分」
「そうね。今更出てきて一緒に……ってのもね」
おお、司のお付きがくずはに反論してる。
そしてそれを見て心底嬉しそうにしている俺たちは、とても合流しに来たようには見えないんだろうな。
「まあまあ、いいじゃないか」
それをなだめるように司が手で制するのを、くずはは相当睨んでいる。
ふっ、と髪を弄りながら、相変わらず軽そうな笑顔を浮かべて……まあ、容姿的には絵になるのだろうが、どうにも格好つけてるようにしか見えない。
「わざわざおれの為に王様がよこしてくれたんだからな。
断るわけにもいかないだろう?」
「……わかった。司がそう言うなら、いい」
ぶすくれて引っ込んでしまったお付きの二人に、『もうちょっと頑張れよ!』みたいな視線を送っているくずは。
そしてそれを心配そうにそれを見つめるミシェリさん。
「ああ、そういえば……さっきの話を蒸し返すようだけどよ、あいつの姿、見たやつがいるってよ」
「……!」
俺は、合流を優先したのを少し後悔しそうになったが……司の意味深な笑みと共に告げられた言葉は、相当な衝撃を与えることになった。
――グレリアが、ここにいる?
ダティオはジパーニグの中でもそれなりに大きな町に該当するらしく、その象徴は堅牢な要塞の形をしていることにほかならない。
外壁で取り囲まれた遥か大きく円状の町は、三層の壁によって構築されている。
初めに作られた場所から一区、二区という順で区画分けされていき……現在は一区と三区が厳重に管理されていている
一区は上流区、二区は住民区。三区は農商区となっていて、食べ物が重要視されがちなここでは優先順位の結果、そうなっているらしい。
俺達は司を探して三区の中でも二区に近い、商業区にいた。
他の町で探していた結果、ようやくこのダティオの町にいることがわかって追いかけてきたというわけだ。
「随分遠くまできたな」
「そうだねー……いつの間にかこんなところだもんね」
俺とエセルカが少し遠い目をしていると、くずはの方は思いっきり強いため息をついていた。
「本当に……とうとうここまできてしまったわね」
……それほど司と合流するのが嫌なんだろう。
気持ちはわかるが、いい加減覚悟を決めるしかないだろう。
人の好き嫌いよりもアンヒュルと戦うことが優先なんだから。
俺達は軽く周辺の飯屋や道具屋で聞きまわったところ、今現在泊まっているだろう宿屋のところまで辿り着いたというわけだ。
早速中に入ってみると、知らない女の声に紛れて聞き覚えのある声が聞こえてくる。
その声の方へと歩いていくとそこにいたのは――。
「久しぶりだな、司」
「あん……? お前ら……!」
食堂の方で女と楽しそうに食事をしている司の姿だった。
……こいつ、随分と楽しそうに飯食ってたけど、アンヒュルと戦ってた……んだよな?
司のメンバーは三人。
一人は前に俺達と一緒に旅をしていたミシェリさん。
シアンブルーのうなじが隠れる程度に短くまとめた髪と目が特徴的で、いかにもなローブを身にまとい、杖を持っている俺より年上そうな女。
それとちょっと明るい緑色の髪に、左右の髪をリボンで結わえた……まあ、同じく俺より上そうな人だ。
司も元々上だし、それを考えたらほぼ同年代かな?
「司様、どなたですか?」
「ああ、おれと同じ【英雄召喚】で喚び出された勇者のメンバーだ。
で、あそこの不機嫌そうなのが勇者のくずは」
「ちょっと! そんな雑な紹介しないでくれる!?」
あんまりにもやる気のない、適当紹介に思いっきり睨みつけてガーっと攻めるくずは。
……司の態度があんまりなのもわかるけどさ、出会った瞬間にいきなり喧嘩は勘弁して欲しい。
「くずは様、お久しぶりです」
「……ミシェリさん、久しぶり」
まあまあとなだめるようにこっち側に来たミシェリさんの言葉に多少冷静さを取り戻したのはいいんだが、くずははむくれるように顔をそっぽに向けてしまった。
他の取り巻きたちはエセルカの事をなぜかちらちらと警戒するかのように見ているようで、その事にエセルカも気づいて少し怖気づいているようだった。
相変わらず戦わない時の弱気な小動物様子には苦笑いも浮かんでくるけど、そういうのもあいつらしさなんだろう。
とか思っていると、爆弾を放り込んでくるのはこの目の前にいる司という男だった。
「なんだ、あいつがいなくなって落ち込んでるのかと思っていたけど、両手に花で中々上手くやってるじゃないか。
ま、俺には負けるだろうけどな」
「……次言ってみろ。いくら勇者でもたたじゃおかねぇぞ」
つい挑発に乗ってしまって殺気を出して睨む俺に対し、司側のメンバーの二人が一斉に戦闘態勢に取ろうとして、それをミシェリさんが慌てて止めてくれる。
「皆! やめなさい!」
大きな声で一喝するミシェリさんにビクッと肩をすくめ、すごすごと引き下がる司のお付きのような奴ら。
対して司自身は『仕方がないな』と言った様子で、全く悪びれることもこともないのがちょっとなぁ……。
「わかったわかった。短気なやつだなー。
……ところで、お前たちも王様に言われてきたのか?」
「……そうよ。あんたと合流するようにってね」
くずはが嫌そうにちらっと視線を向けているようだったが、そこでおつきのシアンブルーの女が声を上げてきた。
「だったらいらない。
司にはあたし達だけで十分」
「そうね。今更出てきて一緒に……ってのもね」
おお、司のお付きがくずはに反論してる。
そしてそれを見て心底嬉しそうにしている俺たちは、とても合流しに来たようには見えないんだろうな。
「まあまあ、いいじゃないか」
それをなだめるように司が手で制するのを、くずはは相当睨んでいる。
ふっ、と髪を弄りながら、相変わらず軽そうな笑顔を浮かべて……まあ、容姿的には絵になるのだろうが、どうにも格好つけてるようにしか見えない。
「わざわざおれの為に王様がよこしてくれたんだからな。
断るわけにもいかないだろう?」
「……わかった。司がそう言うなら、いい」
ぶすくれて引っ込んでしまったお付きの二人に、『もうちょっと頑張れよ!』みたいな視線を送っているくずは。
そしてそれを心配そうにそれを見つめるミシェリさん。
「ああ、そういえば……さっきの話を蒸し返すようだけどよ、あいつの姿、見たやつがいるってよ」
「……!」
俺は、合流を優先したのを少し後悔しそうになったが……司の意味深な笑みと共に告げられた言葉は、相当な衝撃を与えることになった。
――グレリアが、ここにいる?
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