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第一節 アストリカ学園編

第24幕 再戦の日

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 エセルカはその小動物の容姿に目をつけられ、変態達に拉致監禁されてしまった……ということになっていた。
 貴族が関わった事実が公にされることはなかった。当然のように確実に圧力がかかったのだろう。

 子爵の連れ……恐らく男爵の息子達だろう。彼らも関わっているのだから揉み消しがあっても当然か。

 この調子だとまたなにか仕掛けてきそうだし、しばらくはエセルカと共に行動するほうがいいだろう。
 ……また妙な噂というか、冷やかされる口実を作ってしまうことになるだろう。
 が、二人で宿に泊まり、朝帰りしてしまった時点で興味の対象になってしまってるだろうからな。

 全く……13の子供が何を期待してるのやら。

 事情を知ってるはずのエウレやシュリカまでもニヤニヤ顔でこっちを見てくる始末。
 エセルカの方はマントにやってしまった件でも引きずっているのだろうか……目が合うと顔を真っ赤にして俯いてしまって、ほとんど会話にならなかった。
 それでも目を逸らしていれば話すことが出来るようだし、ま、まともに話せるようになるのも時間の問題だろう。

 それからの日々は特になんの問題もなく進んでいった。
 学園に通う者として文学に明け暮れ、徐々に訓練の方も戦闘に関連することに移っていく毎日。
 あまりにも平和すぎて逆に不気味な程だった。

 魔法に関してや、英雄たちの歴史は相変わらず疑問の多いものだったが、そこに関しては今更だろう。
 そういえばちょうど吉田英彩について触れていたな。

 なんでも200年前に現れた英雄らしく、魔法の発展に貢献し、和食と呼ばれる文化の一端である米をジパーニグに持ち込み、食文化の改善に尽くした事が評価された。
 更に魔王を名乗るアンヒュルを討伐したことにより、貴族の地位を頂いたのだとか。

 英雄召喚されたときに彼は特殊な能力を授かったらしく、なんでも『触れた相手の魔力を吸収する』だったらしい。
 魔王を名乗っていたアンヒュルは魔法を得意としていたそうで、相性の関係からかなり有利な戦いが出来ていたそうだ。

 他にも同時に召喚された二人と仲が良かったらしく……今まさにアルフォンス・吉田にくっついているおつきの連中のようだったのらしい。

 まあ、結構盛ってるような気がしたけどな。
 魔法の発展のところなんか具体的にどう貢献したか書いてないし、結構大雑把に書き足してる部分が多い。

 それでも見知らぬ世界で生きるのは辛かっただろう。
 そう考えると全て悪いとも……言えないんだよな。

「どうしてもあの吉田のお坊ちゃんを連想しちまうんだよなぁー。
 髪の色とか以外の容姿はほとんど同じらしいし、余計にな」

 というのはセイル談。
 とまあ、こんな感じで勉強の方もつつがなく進んでいき、全てが順調に思えた……そんな時だ。

「おい、止まれ!」

 全ての授業が終わり、後は寮に帰るか、図書館にでも行くか……そう思いながら校舎を出た時に声を掛けられる。
 その声の方を向くと……そこにいたのはアルフォンス・吉田だった。
 今回、エセルカはエウレとシュリカの二人と帰るそうで、俺一人だったのが良かった。
 この男とエセルカを引き合わせるのは色々と問題だからな。

「あんたは……吉田だったか」
「アルフォンス! アルフォンス・吉田だ! この無礼者め!」

 常識の欠如した男には言われたくない。
 ……が、急にどうしたのだろうか? こいつから話しかけてくるとは……。
 初めて会ったときはそれなりに礼を持って接したような気もするが、アレだけのことをしておいて今更そんなの、あったものじゃないだろう。

「で、そのアルフォンスがどうした?」
「くっ……この、どこまでも失礼な奴め……」
「人をさらっておいてよく吠えるな」
「はっ! そんな証拠、何処にあるというんだ? これだから下民は……」

 よくもまあぬけぬけとそう言えるものだ。
 そのにやけた面を再起不能になるほどぶちのめしてやりたくなってくる。
 一通り馬鹿にした笑みをこちらに向けてきた吉田は、ようやく本題を切り出してきた。

「ふん、まあいい。そのふざけた態度、後悔させてあげようじゃないか」
「さっさと用件を言えよ。お前の馬鹿に付き合ってる時間すら惜しい」
「……チッ。貴様に決闘を申し込む!」
「……決闘?」

 ビシッと俺に指を突きつけて自信満々に言ってくる吉田の頭は本当におかしくなったのだろうか?
 あれだけのことがあって決闘を挑むなんて、普通はありえないだろう。

「ああそうだ。まさか……逃げるとは言うまい? いくら下民とは言え、この高貴なる者の誘いを断ればどうなるか……知らないはずはないだろうからなぁ」
「……当たり前だ」
「ならば明日の放課後、訓練場で待っている。もし逃げれば……くっくっくっ」

 最後まで告げず、いやらしい笑みを浮かべながら吉田の馬鹿は去っていった。
 こういう奴は断れば何をしでかすかわかったものではない。
 なら、次はこんな決闘なんか起こす気にもならないほど徹底的に叩きのめすだけだ。

 ――そして、その次の日。吉田の言う通り、俺は決闘をするために訓練場へと向かった。
 そこには――A組・L組問わず大勢の生徒が見物に来ているようだった。

 中央のリングには吉田と……あれは誰だろう? 見知らぬ男が四人ほど、立っていた。
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