24 / 415
第一節 アストリカ学園編
第24幕 再戦の日
しおりを挟む
エセルカはその小動物の容姿に目をつけられ、変態達に拉致監禁されてしまった……ということになっていた。
貴族が関わった事実が公にされることはなかった。当然のように確実に圧力がかかったのだろう。
子爵の連れ……恐らく男爵の息子達だろう。彼らも関わっているのだから揉み消しがあっても当然か。
この調子だとまたなにか仕掛けてきそうだし、しばらくはエセルカと共に行動するほうがいいだろう。
……また妙な噂というか、冷やかされる口実を作ってしまうことになるだろう。
が、二人で宿に泊まり、朝帰りしてしまった時点で興味の対象になってしまってるだろうからな。
全く……13の子供が何を期待してるのやら。
事情を知ってるはずのエウレやシュリカまでもニヤニヤ顔でこっちを見てくる始末。
エセルカの方はマントにやってしまった件でも引きずっているのだろうか……目が合うと顔を真っ赤にして俯いてしまって、ほとんど会話にならなかった。
それでも目を逸らしていれば話すことが出来るようだし、ま、まともに話せるようになるのも時間の問題だろう。
それからの日々は特になんの問題もなく進んでいった。
学園に通う者として文学に明け暮れ、徐々に訓練の方も戦闘に関連することに移っていく毎日。
あまりにも平和すぎて逆に不気味な程だった。
魔法に関してや、英雄たちの歴史は相変わらず疑問の多いものだったが、そこに関しては今更だろう。
そういえばちょうど吉田英彩について触れていたな。
なんでも200年前に現れた英雄らしく、魔法の発展に貢献し、和食と呼ばれる文化の一端である米をジパーニグに持ち込み、食文化の改善に尽くした事が評価された。
更に魔王を名乗るアンヒュルを討伐したことにより、貴族の地位を頂いたのだとか。
英雄召喚されたときに彼は特殊な能力を授かったらしく、なんでも『触れた相手の魔力を吸収する』だったらしい。
魔王を名乗っていたアンヒュルは魔法を得意としていたそうで、相性の関係からかなり有利な戦いが出来ていたそうだ。
他にも同時に召喚された二人と仲が良かったらしく……今まさにアルフォンス・吉田にくっついているおつきの連中のようだったのらしい。
まあ、結構盛ってるような気がしたけどな。
魔法の発展のところなんか具体的にどう貢献したか書いてないし、結構大雑把に書き足してる部分が多い。
それでも見知らぬ世界で生きるのは辛かっただろう。
そう考えると全て悪いとも……言えないんだよな。
「どうしてもあの吉田のお坊ちゃんを連想しちまうんだよなぁー。
髪の色とか以外の容姿はほとんど同じらしいし、余計にな」
というのはセイル談。
とまあ、こんな感じで勉強の方もつつがなく進んでいき、全てが順調に思えた……そんな時だ。
「おい、止まれ!」
全ての授業が終わり、後は寮に帰るか、図書館にでも行くか……そう思いながら校舎を出た時に声を掛けられる。
その声の方を向くと……そこにいたのはアルフォンス・吉田だった。
今回、エセルカはエウレとシュリカの二人と帰るそうで、俺一人だったのが良かった。
この男とエセルカを引き合わせるのは色々と問題だからな。
「あんたは……吉田だったか」
「アルフォンス! アルフォンス・吉田だ! この無礼者め!」
常識の欠如した男には言われたくない。
……が、急にどうしたのだろうか? こいつから話しかけてくるとは……。
初めて会ったときはそれなりに礼を持って接したような気もするが、アレだけのことをしておいて今更そんなの、あったものじゃないだろう。
「で、そのアルフォンスがどうした?」
「くっ……この、どこまでも失礼な奴め……」
「人をさらっておいてよく吠えるな」
「はっ! そんな証拠、何処にあるというんだ? これだから下民は……」
よくもまあぬけぬけとそう言えるものだ。
そのにやけた面を再起不能になるほどぶちのめしてやりたくなってくる。
一通り馬鹿にした笑みをこちらに向けてきた吉田は、ようやく本題を切り出してきた。
「ふん、まあいい。そのふざけた態度、後悔させてあげようじゃないか」
「さっさと用件を言えよ。お前の馬鹿に付き合ってる時間すら惜しい」
「……チッ。貴様に決闘を申し込む!」
「……決闘?」
ビシッと俺に指を突きつけて自信満々に言ってくる吉田の頭は本当におかしくなったのだろうか?
あれだけのことがあって決闘を挑むなんて、普通はありえないだろう。
「ああそうだ。まさか……逃げるとは言うまい? いくら下民とは言え、この高貴なる者の誘いを断ればどうなるか……知らないはずはないだろうからなぁ」
「……当たり前だ」
「ならば明日の放課後、訓練場で待っている。もし逃げれば……くっくっくっ」
最後まで告げず、いやらしい笑みを浮かべながら吉田の馬鹿は去っていった。
こういう奴は断れば何をしでかすかわかったものではない。
なら、次はこんな決闘なんか起こす気にもならないほど徹底的に叩きのめすだけだ。
――そして、その次の日。吉田の言う通り、俺は決闘をするために訓練場へと向かった。
そこには――A組・L組問わず大勢の生徒が見物に来ているようだった。
中央のリングには吉田と……あれは誰だろう? 見知らぬ男が四人ほど、立っていた。
貴族が関わった事実が公にされることはなかった。当然のように確実に圧力がかかったのだろう。
子爵の連れ……恐らく男爵の息子達だろう。彼らも関わっているのだから揉み消しがあっても当然か。
この調子だとまたなにか仕掛けてきそうだし、しばらくはエセルカと共に行動するほうがいいだろう。
……また妙な噂というか、冷やかされる口実を作ってしまうことになるだろう。
が、二人で宿に泊まり、朝帰りしてしまった時点で興味の対象になってしまってるだろうからな。
全く……13の子供が何を期待してるのやら。
事情を知ってるはずのエウレやシュリカまでもニヤニヤ顔でこっちを見てくる始末。
エセルカの方はマントにやってしまった件でも引きずっているのだろうか……目が合うと顔を真っ赤にして俯いてしまって、ほとんど会話にならなかった。
それでも目を逸らしていれば話すことが出来るようだし、ま、まともに話せるようになるのも時間の問題だろう。
それからの日々は特になんの問題もなく進んでいった。
学園に通う者として文学に明け暮れ、徐々に訓練の方も戦闘に関連することに移っていく毎日。
あまりにも平和すぎて逆に不気味な程だった。
魔法に関してや、英雄たちの歴史は相変わらず疑問の多いものだったが、そこに関しては今更だろう。
そういえばちょうど吉田英彩について触れていたな。
なんでも200年前に現れた英雄らしく、魔法の発展に貢献し、和食と呼ばれる文化の一端である米をジパーニグに持ち込み、食文化の改善に尽くした事が評価された。
更に魔王を名乗るアンヒュルを討伐したことにより、貴族の地位を頂いたのだとか。
英雄召喚されたときに彼は特殊な能力を授かったらしく、なんでも『触れた相手の魔力を吸収する』だったらしい。
魔王を名乗っていたアンヒュルは魔法を得意としていたそうで、相性の関係からかなり有利な戦いが出来ていたそうだ。
他にも同時に召喚された二人と仲が良かったらしく……今まさにアルフォンス・吉田にくっついているおつきの連中のようだったのらしい。
まあ、結構盛ってるような気がしたけどな。
魔法の発展のところなんか具体的にどう貢献したか書いてないし、結構大雑把に書き足してる部分が多い。
それでも見知らぬ世界で生きるのは辛かっただろう。
そう考えると全て悪いとも……言えないんだよな。
「どうしてもあの吉田のお坊ちゃんを連想しちまうんだよなぁー。
髪の色とか以外の容姿はほとんど同じらしいし、余計にな」
というのはセイル談。
とまあ、こんな感じで勉強の方もつつがなく進んでいき、全てが順調に思えた……そんな時だ。
「おい、止まれ!」
全ての授業が終わり、後は寮に帰るか、図書館にでも行くか……そう思いながら校舎を出た時に声を掛けられる。
その声の方を向くと……そこにいたのはアルフォンス・吉田だった。
今回、エセルカはエウレとシュリカの二人と帰るそうで、俺一人だったのが良かった。
この男とエセルカを引き合わせるのは色々と問題だからな。
「あんたは……吉田だったか」
「アルフォンス! アルフォンス・吉田だ! この無礼者め!」
常識の欠如した男には言われたくない。
……が、急にどうしたのだろうか? こいつから話しかけてくるとは……。
初めて会ったときはそれなりに礼を持って接したような気もするが、アレだけのことをしておいて今更そんなの、あったものじゃないだろう。
「で、そのアルフォンスがどうした?」
「くっ……この、どこまでも失礼な奴め……」
「人をさらっておいてよく吠えるな」
「はっ! そんな証拠、何処にあるというんだ? これだから下民は……」
よくもまあぬけぬけとそう言えるものだ。
そのにやけた面を再起不能になるほどぶちのめしてやりたくなってくる。
一通り馬鹿にした笑みをこちらに向けてきた吉田は、ようやく本題を切り出してきた。
「ふん、まあいい。そのふざけた態度、後悔させてあげようじゃないか」
「さっさと用件を言えよ。お前の馬鹿に付き合ってる時間すら惜しい」
「……チッ。貴様に決闘を申し込む!」
「……決闘?」
ビシッと俺に指を突きつけて自信満々に言ってくる吉田の頭は本当におかしくなったのだろうか?
あれだけのことがあって決闘を挑むなんて、普通はありえないだろう。
「ああそうだ。まさか……逃げるとは言うまい? いくら下民とは言え、この高貴なる者の誘いを断ればどうなるか……知らないはずはないだろうからなぁ」
「……当たり前だ」
「ならば明日の放課後、訓練場で待っている。もし逃げれば……くっくっくっ」
最後まで告げず、いやらしい笑みを浮かべながら吉田の馬鹿は去っていった。
こういう奴は断れば何をしでかすかわかったものではない。
なら、次はこんな決闘なんか起こす気にもならないほど徹底的に叩きのめすだけだ。
――そして、その次の日。吉田の言う通り、俺は決闘をするために訓練場へと向かった。
そこには――A組・L組問わず大勢の生徒が見物に来ているようだった。
中央のリングには吉田と……あれは誰だろう? 見知らぬ男が四人ほど、立っていた。
1
お気に入りに追加
212
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる