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第二章 リータ魔王国復興編

第31話 「食材の理由(ワケ)」

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 ドミエルと共に、私は野菜の貯蔵ちょぞう場所へ足を運ぶ。野菜と果物が並んでいるが、肉や魚が置かれていたのに比べ、明らかに量が少ない。

「ドミエル料理長、野菜の量が少なくないですか?」

 野菜をながめながら、ドミエルは私に答える。

「ああ、いい所に気づいたな。野菜や果物を食べるのは、おもに魔王様だけなのだ。魔物や家畜が食べる事もあるが、魔族は基本的にしょくさない。なまものだし、大量に確保してもくさらせるだけなのだよ」

「なるほど。 確かに草食動物以外は食べそうにないか……」

 魔界の生き物だ。やはり肉を好むのかもしれないな。

「野菜や果物がくさる前に、我々や使用人で食べておるよ。それでも余ったものは、家畜のえさにしている」

 なるほど。うまく消費しているんだな。この城のシステムはなかなか考えられているようだ。

 野菜はキャベツ、レタス、アスパラガス、ニンジン、かぼちゃ、玉ねぎ、にんにく、ほうれん草、豆類もある。パッと見て無いとわかったのは、トウモロコシ、じゃがいも、トマトだ。

「なるほど。結構そろってるな」

 独り言をつぶやきながら、次は果物を見て回る。

「おお!! バナナとレモンがある!!」

 リンゴ、ブドウ、レモン、イチゴ、バナナ、洋ナシ、プラム、メロンなどが並ぶ。知らない果物もいくつか存在する。レモンがあるのはよかった。

「バナナ? そんなものはありゃせんぞ」

「ほら、この長いやつです」

 私はバナナを指さしたが、それを見てドミエルが教えてくれる。

「それはイチジクと言われておる」

「そうなんですか。昔いたところでは‘バナナ‘と呼ばれてました。イチジクは多分、この丸っこいやつでした」

 私はいくつかある赤い実の一つを指さして伝える。

「そうなのか。どちらも変わった味がする果物だな」

 味見したことがあるのか、ドミエルが答える。ともかく、バナナがあるのは大きい。

「この果物はどこかで生産しているのですか?」

「いや、人間から仕入れている果物だ」

 商品として輸入ゆにゅうしているという事か。大量に仕入れできるか聞いてみた。

「高いものではないが、大量に仕入れできる保証はないな。そもそも、仕入れる必要が無かったしな」

 ドミエルは返答すると、さらに貴重な話を聞かせてくれる。

「そもそも、野菜と果物は、今のレイア様が仕入れるよう指示があったものなのだ。父上である先代魔王様は、人間や魔獣などの肉が大好きで、野菜などしょくさないおかただったわい」

 ドミエルの話を聞きながら、その方が魔族らしいと思っていた。

「レイア様は特に人間の肉がお嫌いで、全く食べようとしなかったのだ。最初食べた時にあまりの不味まずさにいたそうだ」

 私は当然人肉など食べた事はないが、すごくわかる気がする。ドミエルは続ける。

「どこで知ったのかわからぬが、魔王の地位を引き継ぐと、レイア様は真っ先に人肉を禁じ、野菜と果物を仕入れるよう俺達に指示されたのだよ」

 私は初めて事情を知ったが、いかにもレイアらしいと思った。

「レイアは野菜や果物をどのくらい食べていますか?」

「毎日食べていらっしゃるよ。肉も魚も同じくらいしょくしておるがな」

 私はレイアの美しさの秘密が少しわかった気がした。さすがレイアだ。

「そうか。貴重な話をありがとうございます。ここはもう大丈夫です。次の場所を案内願います」

「おお。そうじゃったな。わかった。では、となり穀物庫こくもつこを案内しよう」

 ドミエルはすっかり話に夢中で忘れていたようだ。気を取り直して、私達は穀物庫こくもつこへと向かう。

 穀物庫こくもつこにも見慣れた食材が並んでいる。小麦、大麦、卵、チーズ、バター。パスタもある。その中でも私の目を引いたのは、知っているものと大きさが違うものだった。

「これはまさか、お米!!!」

 私は興奮してドミエルの顔を見る。

「どうしたんじゃ? そんなに気に入ったのか?」

「触ってもいいかな?」

「ああ、構わんよ」

 ドミエルに許可をもらった私は、少し大きい粒を両手にすくってみる。適度に精米された粒達は、艶々つやつやかがやいている。

「形は思っているのと違うが、間違いない! ドミエル料理長、昼はこの米料理を出してもらっていいかな?」

 私の喜びように当惑とうわくしつつ、ドミエルが答える。

「お、おう。かまわんが。魔王様にもお出ししていいのか?」

 私は二つ返事で答える。

「もちろんです! お願いします!」

 まさかこんな早くにこの世界でお目にかかれるとは思ってもみなかった。楽しみ過ぎる。レイアと一緒に食べたい。

「味付けはどうするよ?」

「必要ないです。いたものを出してもらえれば」

「わかった。用意しよう」

 ドミエルは笑顔で答えると、任せろと言わんばかりにこぶしを前に少し上げる。卵料理やチーズも食べられると確認できたし、なかなかの収穫しゅうかくだ。

 この後、私はドミエルに調味料について見せてもらう事になる。

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ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回もまた、よろしくお願いいたします。
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