32 / 74
第二章 リータ魔王国復興編
第31話 「食材の理由(ワケ)」
しおりを挟む
ドミエルと共に、私は野菜の貯蔵場所へ足を運ぶ。野菜と果物が並んでいるが、肉や魚が置かれていたのに比べ、明らかに量が少ない。
「ドミエル料理長、野菜の量が少なくないですか?」
野菜を眺めながら、ドミエルは私に答える。
「ああ、いい所に気づいたな。野菜や果物を食べるのは、主に魔王様だけなのだ。魔物や家畜が食べる事もあるが、魔族は基本的に食さない。生ものだし、大量に確保しても腐らせるだけなのだよ」
「なるほど。 確かに草食動物以外は食べそうにないか……」
魔界の生き物だ。やはり肉を好むのかもしれないな。
「野菜や果物が腐る前に、我々や使用人で食べておるよ。それでも余ったものは、家畜の餌にしている」
なるほど。うまく消費しているんだな。この城のシステムはなかなか考えられているようだ。
野菜はキャベツ、レタス、アスパラガス、ニンジン、かぼちゃ、玉ねぎ、にんにく、ほうれん草、豆類もある。パッと見て無いとわかったのは、トウモロコシ、じゃがいも、トマトだ。
「なるほど。結構揃ってるな」
独り言をつぶやきながら、次は果物を見て回る。
「おお!! バナナとレモンがある!!」
リンゴ、ブドウ、レモン、イチゴ、バナナ、洋ナシ、プラム、メロンなどが並ぶ。知らない果物もいくつか存在する。レモンがあるのはよかった。
「バナナ? そんなものはありゃせんぞ」
「ほら、この長いやつです」
私はバナナを指さしたが、それを見てドミエルが教えてくれる。
「それはイチジクと言われておる」
「そうなんですか。昔いたところでは‘バナナ‘と呼ばれてました。イチジクは多分、この丸っこいやつでした」
私はいくつかある赤い実の一つを指さして伝える。
「そうなのか。どちらも変わった味がする果物だな」
味見したことがあるのか、ドミエルが答える。ともかく、バナナがあるのは大きい。
「この果物はどこかで生産しているのですか?」
「いや、人間から仕入れている果物だ」
商品として輸入しているという事か。大量に仕入れできるか聞いてみた。
「高いものではないが、大量に仕入れできる保証はないな。そもそも、仕入れる必要が無かったしな」
ドミエルは返答すると、さらに貴重な話を聞かせてくれる。
「そもそも、野菜と果物は、今のレイア様が仕入れるよう指示があったものなのだ。父上である先代魔王様は、人間や魔獣などの肉が大好きで、野菜など食さないお方だったわい」
ドミエルの話を聞きながら、その方が魔族らしいと思っていた。
「レイア様は特に人間の肉がお嫌いで、全く食べようとしなかったのだ。最初食べた時にあまりの不味さに吐いたそうだ」
私は当然人肉など食べた事はないが、すごくわかる気がする。ドミエルは続ける。
「どこで知ったのかわからぬが、魔王の地位を引き継ぐと、レイア様は真っ先に人肉を禁じ、野菜と果物を仕入れるよう俺達に指示されたのだよ」
私は初めて事情を知ったが、いかにもレイアらしいと思った。
「レイアは野菜や果物をどのくらい食べていますか?」
「毎日食べていらっしゃるよ。肉も魚も同じくらい食しておるがな」
私はレイアの美しさの秘密が少しわかった気がした。さすがレイアだ。
「そうか。貴重な話をありがとうございます。ここはもう大丈夫です。次の場所を案内願います」
「おお。そうじゃったな。わかった。では、隣の穀物庫を案内しよう」
ドミエルはすっかり話に夢中で忘れていたようだ。気を取り直して、私達は穀物庫へと向かう。
穀物庫にも見慣れた食材が並んでいる。小麦、大麦、卵、チーズ、バター。パスタもある。その中でも私の目を引いたのは、知っているものと大きさが違うものだった。
「これはまさか、お米!!!」
私は興奮してドミエルの顔を見る。
「どうしたんじゃ? そんなに気に入ったのか?」
「触ってもいいかな?」
「ああ、構わんよ」
ドミエルに許可をもらった私は、少し大きい粒を両手にすくってみる。適度に精米された粒達は、艶々で輝いている。
「形は思っているのと違うが、間違いない! ドミエル料理長、昼はこの米料理を出してもらっていいかな?」
私の喜びように当惑しつつ、ドミエルが答える。
「お、おう。構わんが。魔王様にもお出ししていいのか?」
私は二つ返事で答える。
「もちろんです! お願いします!」
まさかこんな早くにこの世界でお目にかかれるとは思ってもみなかった。楽しみ過ぎる。レイアと一緒に食べたい。
「味付けはどうするよ?」
「必要ないです。炊いたものを出してもらえれば」
「わかった。用意しよう」
ドミエルは笑顔で答えると、任せろと言わんばかりに拳を前に少し上げる。卵料理やチーズも食べられると確認できたし、なかなかの収穫だ。
この後、私はドミエルに調味料について見せてもらう事になる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回もまた、よろしくお願いいたします。
「ドミエル料理長、野菜の量が少なくないですか?」
野菜を眺めながら、ドミエルは私に答える。
「ああ、いい所に気づいたな。野菜や果物を食べるのは、主に魔王様だけなのだ。魔物や家畜が食べる事もあるが、魔族は基本的に食さない。生ものだし、大量に確保しても腐らせるだけなのだよ」
「なるほど。 確かに草食動物以外は食べそうにないか……」
魔界の生き物だ。やはり肉を好むのかもしれないな。
「野菜や果物が腐る前に、我々や使用人で食べておるよ。それでも余ったものは、家畜の餌にしている」
なるほど。うまく消費しているんだな。この城のシステムはなかなか考えられているようだ。
野菜はキャベツ、レタス、アスパラガス、ニンジン、かぼちゃ、玉ねぎ、にんにく、ほうれん草、豆類もある。パッと見て無いとわかったのは、トウモロコシ、じゃがいも、トマトだ。
「なるほど。結構揃ってるな」
独り言をつぶやきながら、次は果物を見て回る。
「おお!! バナナとレモンがある!!」
リンゴ、ブドウ、レモン、イチゴ、バナナ、洋ナシ、プラム、メロンなどが並ぶ。知らない果物もいくつか存在する。レモンがあるのはよかった。
「バナナ? そんなものはありゃせんぞ」
「ほら、この長いやつです」
私はバナナを指さしたが、それを見てドミエルが教えてくれる。
「それはイチジクと言われておる」
「そうなんですか。昔いたところでは‘バナナ‘と呼ばれてました。イチジクは多分、この丸っこいやつでした」
私はいくつかある赤い実の一つを指さして伝える。
「そうなのか。どちらも変わった味がする果物だな」
味見したことがあるのか、ドミエルが答える。ともかく、バナナがあるのは大きい。
「この果物はどこかで生産しているのですか?」
「いや、人間から仕入れている果物だ」
商品として輸入しているという事か。大量に仕入れできるか聞いてみた。
「高いものではないが、大量に仕入れできる保証はないな。そもそも、仕入れる必要が無かったしな」
ドミエルは返答すると、さらに貴重な話を聞かせてくれる。
「そもそも、野菜と果物は、今のレイア様が仕入れるよう指示があったものなのだ。父上である先代魔王様は、人間や魔獣などの肉が大好きで、野菜など食さないお方だったわい」
ドミエルの話を聞きながら、その方が魔族らしいと思っていた。
「レイア様は特に人間の肉がお嫌いで、全く食べようとしなかったのだ。最初食べた時にあまりの不味さに吐いたそうだ」
私は当然人肉など食べた事はないが、すごくわかる気がする。ドミエルは続ける。
「どこで知ったのかわからぬが、魔王の地位を引き継ぐと、レイア様は真っ先に人肉を禁じ、野菜と果物を仕入れるよう俺達に指示されたのだよ」
私は初めて事情を知ったが、いかにもレイアらしいと思った。
「レイアは野菜や果物をどのくらい食べていますか?」
「毎日食べていらっしゃるよ。肉も魚も同じくらい食しておるがな」
私はレイアの美しさの秘密が少しわかった気がした。さすがレイアだ。
「そうか。貴重な話をありがとうございます。ここはもう大丈夫です。次の場所を案内願います」
「おお。そうじゃったな。わかった。では、隣の穀物庫を案内しよう」
ドミエルはすっかり話に夢中で忘れていたようだ。気を取り直して、私達は穀物庫へと向かう。
穀物庫にも見慣れた食材が並んでいる。小麦、大麦、卵、チーズ、バター。パスタもある。その中でも私の目を引いたのは、知っているものと大きさが違うものだった。
「これはまさか、お米!!!」
私は興奮してドミエルの顔を見る。
「どうしたんじゃ? そんなに気に入ったのか?」
「触ってもいいかな?」
「ああ、構わんよ」
ドミエルに許可をもらった私は、少し大きい粒を両手にすくってみる。適度に精米された粒達は、艶々で輝いている。
「形は思っているのと違うが、間違いない! ドミエル料理長、昼はこの米料理を出してもらっていいかな?」
私の喜びように当惑しつつ、ドミエルが答える。
「お、おう。構わんが。魔王様にもお出ししていいのか?」
私は二つ返事で答える。
「もちろんです! お願いします!」
まさかこんな早くにこの世界でお目にかかれるとは思ってもみなかった。楽しみ過ぎる。レイアと一緒に食べたい。
「味付けはどうするよ?」
「必要ないです。炊いたものを出してもらえれば」
「わかった。用意しよう」
ドミエルは笑顔で答えると、任せろと言わんばかりに拳を前に少し上げる。卵料理やチーズも食べられると確認できたし、なかなかの収穫だ。
この後、私はドミエルに調味料について見せてもらう事になる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回もまた、よろしくお願いいたします。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる