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第二章 リータ魔王国復興編

第30話 「魔族の食卓」

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 私はテレポートで調理場の扉の前へ移動する。

 レイアが休んでいる間、私は魔界と魔族の料理と食糧しょくりょう事情を調べる事にする。もちろん、調達手段や輸送ゆそう・流通について知る必要はあるが、それはレイアが元気になってからでいいだろう。

 調理場の扉をノックして誰かが出てくるのを待つ。少しして、扉が開き、170センチほどの銀色の髪のエルフに似た若い男が出てくる。

「何かご用でしょうか?」

「魔王の夫のタクトです。実は、食料について聞きたくて来ました。料理長にお話しできますか?」

「魔王様の! そうですか、少しお待ちください」

 エルフの男は中に戻っていき、料理長にかけ合ってくれるようだ。

 しばらくして、扉が開くと、中からコック帽をかぶった小ぶとりなオークが現れる。

「お前さんか、魔王様の旦那だんなというのは」

「はい。タクトと申します」

「料理長のドミエルだ。こんなところで何だから、入りな」

「ありがとうございます」

 私は中に通してもらう。調理場はとても広く、約三十名ほどのスタッフが働いている。

 エルフ族、ドワーフ、ノーム、ホブゴブリン、サキュバス、オーク、オーガと、ざっと見渡しただけでも多種存在しているようだ。

 テーブルには様々な食材、調理器具が並び、火や水は魔法で供給きょうきゅうしている。従業員は白衣ではなく、シンプルな民族衣装のような統一とういつした衣服をまとっている。

「ようこそ我らが調理場へ。で、タクト様は何がお望みで?」

 ドミエルが笑顔を見せながらたずねる。

「リオリス国との戦争に向けて、魔族の食料について学びたいんです。食材、調味料、料理、どういうものが好まれるか、戦争時に兵士が何を食べているのかなど、色々教えてほしい」

 私は頭に思いえがいていることを率直そっちょくに話す。すると、ドミエルはひたいに手を当てて答える。

「なるほどねぇ。いい心がけじゃないか。一つ言っておくと、魔族には人間の肉を好む奴もおるぞよ」

 いきなり衝撃的な事を言われ、私はギョッと反応してしまう。まあ魔族だしあり得る話だ。

「おお、すまんすまん。うちでは使ってないから安心してくれ。魔王様が嫌いな食材なんでな。筋張すじばってて食えたもんじゃねえし。ガハハハハッ」

 ドミエルが下品な笑いをしたので、少し拍子抜ひょうしぬけしてしまう。

「で、何から教えればいい?」

「そうだなあ、やはり食材からかな。見せてもらっていいですか?」

「いいだろう。付いてきな」

 ドミエルは私を食糧貯蔵庫しょくりょうちょぞうこへ案内してくれる。野菜、肉、魚がそれぞれ仕切られた部屋に並んでいる。どれも前の世界であったものが多い。

「自由に見てもらってもいいぞ」

「ありがとう」

 私は肉を見る事にする。牛や豚らしい肉はすぐにわかった。ただ、わからないものも結構ある。

「この辺りの肉は何のものですか?」

 私の問いにドミエルは目をかがやかせて答える。

「人間にはなじみのない肉かのう。ベア大蛇ビッグスネークウルフ、オオガエル、タイガーボアおもな肉だ。魔獣の肉もあるぞ」

 人間に比べて、魔族は色々な種類の肉を食べているという事か。レイアが最初に振舞ふるまってくれた肉も、この中のものか。魔獣の肉だったのかもしれないな。

 しかし、並んでいる肉の中にはくさりかけているものもある。レイアの肉がおいしかったのは、熟成じゅくせいされていたのかもしれない。ただ、おなか壊しそうだ。

「肉は塩漬けしたり燻製くんせいにしたりしないんですか? あと、冷凍もしてないみたいですが」

 私の問いにドミエルは少し驚いた表情をした後、答えてくれる。

「しねえなあ。魔王様にはできるだけ新鮮な肉をお出ししているし、ほかの魔族や魔物達はくさってても気にせんからなあ」

 なるほど。これはレイアに相談して保存方法を提案ていあんしてみよう。

 私はそれから魚の方も見せてもらう。大小色々な魚がいるが、私は魚の事をあまり知らないので、適当に見て回る。こちらは肉とは違い、冷凍保存されている。

「魚は冷凍されてますね」

「ああ。こっちに来るまで時間がかかるんでな。魚はくさるとえたもんじゃねえからな」

 他にはエビ、カニ、イカ、タコ、貝類、海藻かいそうなどもある。これだけあれば、前の世界の料理も食べられるかもしれない。

 ここまで見て、魔族は人間以上にバランス良く栄養えいようとエネルギーを摂取せっしゅできる可能性を感じた。現状はおそらくそういう食生活にはなっていないのだろうが。

 あとは野菜の場所で、ドミエルが案内してくれるようだ。次にどんなものが出てくるのだろうと想像そうぞうするだけでワクワクしてくる。
 
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ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回もまた、よろしくお願いいたします。
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